見出し画像

本当に伝えたいことは、大学だけでは伝えきれない!?大学×著名人という、芝浦工大のナイスなアプローチ。

大学に関わらずですが、ブランディング活動の究極の目的は、自組織に興味を持ってもらい、好きになってもらうこと、と言ってしまっても、あながち間違いではないように思います。今回見つけた芝浦工業大学の取り組みは、この目的をちゃんと考えたうえでの活動で、今後はこういったスタンスでの情報発信は増えていくのではないか。そう思わせてくれる、上手さと説得力がありました。

取り上げた、プレスリリースは「SIT DIALOGUE Vol.5:ひろゆき氏×芝浦工大生」の動画公開を伝えるもの。SIT DIALOGUEは、芝浦工大の山田学長と各界の専門家や著名人が、その時折のテーマについて語る企画です。今回のものは第5回目に当たるようで、特別イベントとなりひろゆき氏と学生たちによる質疑応答(?)でした。ちなみにこれまでの登壇者は下記になり、第3回目で、すでにひろゆき氏は学長先生と対談しているようでした。

【Vol.1:原田曜平】
 デジタルネイティブなZ世代がつくる新しい理工系の世界観
【Vol.2:スプツニ子!】
 女性がつくる、未来とテクノロジー
【Vol.3:ひろゆき】
 理系学生が持つべき、グローバル視点とデジタルスキル
【Vol.4:吉藤オリィ】
 起業家マインドに必要な技術よりも大切なモノとは

この取り組み自体、広義のブランディングに属するものだと思うのですが、すごくよくできています。というのも、単純にブランディング目的のコンテンツをウェブサイトにぶら下げていても、なかなか見てもらえないんです。わざわざ検索してウェブサイトにやってくる人は、すでに何がしかの目的があってやってきます。なかには、その目的がブランディング関連のコンテンツを見ること、という人もいるかもしれませんが、おそろしく少数でしょう。ブランディング関連のコンテンツは、意地悪くいうと大学が自分をよく見せようとするためのもので、ユーザーのためというよりは、大学のためのもの。多くの人は直接的に自分と関わる情報(入試日程であったり、教学内容だったり)を求めてやってくるのだと考えられます。

また、ブランディング目的のコンテンツに誘導するバナーを、サイトトップに大々的に設置している大学のウェブサイトをよく見ます。学内の心情としては、目立つところにあれば、みんな見てくれるだろうと思ってしまうのでしょう。さらにこの延長線上で、ウェブ広告を打つこともあります。でも、コンテンツの露出レベルと、ユーザーの興味の有り無しって基本関係がありません。頑張ってコンテンツを目立たせたとしても、そこに興味がわかなければ能動的に見ようとする人は増えないのです。

大事なのは、“ブランディング目的のコンテンツを見ることを第一目的にして、大学のウェブサイトにやってくるユーザーはほぼいない、その前提に立ったうえで、それでもユーザーが見たくなるコンテンツをつくること”です。これを大学の手持ちのリソースだけでクリアしようと思うと、もうめちゃくちゃ難しいんですよ。この難しさには二重の意味があって、一つはそもそもそんなことができるタレントやコンテンツが学内になかなかないという意味。もう一つは、たとえあったとしても、そのタレントやコンテンツが、必ずしも伝えたいこととマッチするとは限らないという意味です。

今回の芝浦工大の取り組みの面白いのは、このミッションをクリアするために学外を頼ったことです。伝えたいテーマを効果的に伝え、なおかつ多くの人が興味を持ってもらうというのは、ハードルは高くありますが、学内のリソースに限定しないのであれば、まだやりようがあります。さらにいうと、伝えたいテーマを際立たせるために、学外を使うのは非常に意味があります。というのも、教員、在学生、卒業生といった大学関係者を使うと、その人を伝えたいがために、このコンテンツをつくったのでは?と思われがちです。でも、学外の人を起用する場合、なぜこの人を使ったのか?という問いが自然とユーザーの頭に浮かびます。そして考えるなかで、(企画が的を射ていたら)このテーマを伝えたいからか!と答えが浮かびあがってくるわけです。

また、学外のリソースを使うと、それなりにコストも発生します。芝浦工大のひろゆき氏の企画は、これをイベントとしてやり、さらに動画コンテンツ(前後編の2動画!)として活用しています。ある種、使い回すことで費用対効果を上げており、ここらへんも抜け目がないなあと思いました。

ブランディングというとクオリティの高い動画やビジュアルをつくって、いろんな広告媒体にじゃんじゃん流すようなイメージが一部ではあるように思います。もちろん知ってもらうためには、そういうことも大事でしょう。ですが、理解してもらう⇒好きになってもらうためには、中身を伝えることが必須です。芝浦工業大の取り組みは、理解をうながすうえで、とても上手いように思いました。さらにいうと、広告と違ってコンテンツは資産になるうえ、面白いものができれば自然と拡散していく可能性もあります。著名人の起用は、こういった視点から見ても非常に有用です。まだ多くの大学が手を付けていないアプローチなので、今のうちにリスト化してコンタクトをはじめておいてもいいのではないでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!