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いち当事者が TRP2024 のテーマについて感じたこと

この季節になると、X のタイムラインや広告で東京レインボープライド (TRP) について目にするようになります。

知らない方向けにざっくり説明すると、LGBTQ+ の当事者と支援者が開催する、啓蒙活動を兼ねたイベントです。他の国にも同様なイベントはあり、イベントの中でパレードを行うことが多いです。

TRP のウェブサイトを見ては、もう一年経ったのか、早いなぁと感じます。

私は LGBTQ+ に該当する当事者ですが、TRP には参加したことがありません。当事者だということを隠してるわけでも、遠くに住んでいる訳でもないのですが、恐らく行っても心から楽しめないのだろうなとブレーキを踏んでしまうのです。

ブレーキを踏む違和感の正体

毎年 TRP のウェブサイトを一通り見てはいるのですが、今年のウェブサイトを見て、その違和感について少しは言語化できそうだと思い、この記事を書き始めました。

共感できないテーマ

ウェブサイトより
スポンサー向け資料

今年の TRP のテーマは「変わるまで、あきらめない。」です。何かの革命かな?と思うような今年のテーマ。

私は高校生の時に性的マイノリティだと自認し、それから約 20 年、パートナーと一緒に暮らして 10 年以上の当事者です。自治体のパートナーシップ証明書も発行しています。

パートナーとは同じ家に暮らし、クレジットカードは家族カードを発行でき、保険の受取人にパートナーを指定でき、住宅ローンはペアローンを組め、会社では親族事由の休暇も取ることができ、パートナーに不測の事態が起きても、病院には親族として入ることができます。ふたりで生きていくには、制限はあるにせよ不自由はしていません。

TRP はよく政治家のアピールに使われることがありますが、仮に今回のテーマの「変わるまで」の対象を「同性婚制度の制定」だとしたら、理由はここで述べませんが、私は反対の意見を持っています。

大切なことはお互いの価値観を尊重すること(インクルージョン)で、反対意見を含めた様々な考えがあっての多様性(ダイバーシティ)だと思うのです。

我々には選択の自由がある

私が当事者だと自認した頃、確かにさまざまな障壁がありました。テレビでは「おかま」だと揶揄され、当たり前のように笑いのネタにもされました。それが故、自分の本当の気持ちを押し殺すこともたくさんありました。

TRP の資料にも記載されているとおり沢山の方々の活動の支えもあり、今はその障壁がほとんど無くなりました。ただ、最終的に自分らしく生きることに必要なことは、自分自身の選択だと思います。

安定や安心を求めるなら、パートナーを家族として認めてくれる会社に就職することを選ぶことができます。特典の恩恵を受けるために、同性パートナーに家族カードを発行できる会社を選ぶこともできます。そして万が一のために、保険金の受取人をパートナーに指定ができる保険会社を選ぶこともできます。

選べるということは、選ばないということもできるのです。

実際私は、同性パートナーに家族カードを発行できない某プラチナカードを解約しました。パートナーに家族カードを発行できないことで、プラチナカードに求める価値を感じることができなかったからです。
また、住宅ローンの契約でも、同性でペアローンを組むという選択も取れましたが、2人で考えた結果ペアローンにしないことにしました。

こういう選択が取れるのは、企業がそこに価値を見出してサービスを計画・提供した、あるいは何かしらの理由でサービスを見送ったからであり、その多様さを広げるためにインクルージョンは必要だと思います。

インクルージョンが浸透し、ダイバーシティが生まれ、その結果で法制度の新改がされると整理すると、「変わるまで、あきらめない」という、変わることが前提(でそれが正しい)とするこのテーマに共感ができないのです。

他の国と比べることがいいことなのか

それと同時に、資料にも記載されている「世界から遅れをとっている」ことを意識することにも違和感があります。国の地的特性や文化、信仰などから、その国の色が生まれます。これは単純比較できるものではないと思うのです。

勿論、今の日本がベストかというと、そうは思いません。だからこそ改善すべきことは沢山あると思いますが、それは他の国と比較して行われるべきことではないと思います。

日本に合った方法を皆で模索することで、「日本らしさ」のある多彩な色が生まれ、それこそがダイバーシティなのではないでしょうか。

最後に

思い立ってこの記事を書き始めましたが、これは私の一意見にすぎず、また、TRP の活動自体を否定するものではありません。

ただ、いつかこのイベントが、大義名分を掲げることなく、当たり前になったインクルージョンやダイバーシティを祝う日になったらいいなと願っています。

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