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憎悪を正義で塗り固め

 雨で頭が痛い。こんな不快な気持ちな時は不快な話をしよう。そんなに広い世界の話じゃない、角が立つと嫌なので細かいところはぼかして書こう。

 世の中にはどうしても許せねえものというのがあると思う。口を閉じずに飯を食うやつ、弱者を踏みつけるもの、祖阿、ピザの上のパイナップル、なんかそういうの。俺の場合はある作家の作る小説がどうしても許せないんだ。それなりに界隈では評価を得ている、らしい。
 腹立たしいことになかなかイカしたタイトルをつけるので、本屋の棚に並んでいるとつい手に取ってしまう。そのたびにその名を見て舌打ちをして本棚に戻す。
 初めて読んだときもタイトルに引かれたのだった。パンケーキに関する小説だったのを覚えている。読んでいる間に耐えがたい不快感に襲われていた。それでも一度買ってしまった本を読み終わらずにおいておくのは悔しくて(学生だった当時の僕にとって一冊の本というのはそれなりに重たいものであったのだ)不快な気持ちになりながら一冊を読み通したのだ。
 今ならあるいはその不快感を分析することができるのかもしれない。そしてそれを生かすこともできたのかもしれないが、思い返すことさえ不快で分析は行えなかった。行えないでいる。
 その作者がその界隈では重鎮であることを知ったのはずいぶん経ってからのことだった。
 さて、その時ふと思ったんだ。こんなにクソみたいな、読む者に不快感を覚えさせる作品を世にのさばらせていてよいのだろうか。放っておいても悪はくたばるだろう。そうは思う。同時に今のところそれなりに評価を得ていることを考えるとそこまで期待できないようにも思える。
 ならばどうすればいいのか? 悪い貨幣は駆逐せねばならない。どうやって? 良貨を作るしかない。
 果たしてあのクソのような小説で立場を築いているヤツに一矢報いることができるだろうか? 望みは薄いかもしれない。けれども、射らぬ矢が的に当たることはない。
 だから、俺は恨みをこめて、一人でも光の道に戻そうと作戦を練る。強度を持った小説を書いて、いつかあいつを殴り倒すために

 これが俺が小説を書く理由だ。本当かって? 本当だよ。ジョーカーが間男に口を裂かれた妻を慰めるために自分の口を裂いたってのと同じくらいには本当だ。そうじゃなきゃ、わざわざこんなフェイクを入れるわけがないだろう? 

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