スパイスカレーの飽くなき探究 #ニューウェ〜ブ京都案内
ニューウェ〜ブ京都案内 Vol.3
8月より不定期にて連載を始めた「ニューウェ〜ブ京都案内」。観光雑誌に載っているような王道の京都観光も良いけれど、HOTEL SHE, KYOTOにご宿泊いただく皆様には、せっかくなら従来の伝統的な京都観光からちょっと外れた場所で、ポジティブな予定不調和に出会う旅をご提案したい。そんな我々ホテルスタッフの想いからお届けする連載です。
第三回となる本日は、スパイスカレーのお店「SPICE CHAMBER(スパイスチャンバー)」さんをご紹介します。
場所
京都市営地下鉄烏丸線・四条駅から徒歩2分。4番出口から綾小路通を進むと、スパイシーな香りに誘われるでしょう。迫力のある"カレー"と書かれた看板と観葉植物が出迎えてくれます。今回ご紹介する「SPICE CHAMBER(スパイスチャンバー」さんです。
入り口からはカウンター席のみが見て取れますが、奥にはテーブル席もございます。今回はカウンター出入り口側に着席。(この席はオーナーさんが調理されている気配を感じながら食べるのができるのでライブ感も味わえます)
カウンターではクラウザーさんやデヴィット・ボウイさんが出迎えてくれます。厨房スペースにはスパイス、と同じぐらいの量のCDが並んでおり、オーナーの音楽愛が伝わってきます。
オーナー、館内紹介
そんなお店でカレーに魂を注ぐオーナーは阿蘓慎太郎(あそ しんたろう)さん。山形県生まれ、関西でレコード会社に勤務する中、カレーが好きで、どこか自由なカレー屋さんに魅了され、好きな音楽をかけながらカレー作りに邁進されています。カレーはもちろんですが、オーナーの逞しくも優しいオーラと、どのお客様にも絶妙に気を配られる様子はホテルコンシェルジュのお手本にすらなるのではと思います。
カレーについて
カレーは「キーマカレー(辛)」1種類のみの提供と漢気を感じます。
サイズは大・中・小で選べるほか、オプションにはチーズトッピングやヨーグルトがあります。(私は決まって中サイズとハートランドで昇天します。)
辛みが苦手な方はチーズやヨーグルト、コーヒー牛乳などお好みで注文されるとGOODです。ヨーグルトはキュウリ、トマトなどフレッシュな野菜が入ったクミン香るヨーグルト。そのままでも、カレーにかけても楽しめます。
こちらが私を含め人々を虜にして止まないキーマカレー。美しい。美しいを超えて神々しい。
カリカリ梅と色鮮やかなピーマン、ほくほくのじゃがいもが特徴的です。
カリカリ梅は幕内弁当から着想を得たとのこと。のせてみたら相性が良く、ビジュアルからも日本のカレーであることが伝わるので気に入ったそうです。食感と酸味がアクセントになり食欲を掻き立てます。
いわゆる"辛いカレー"ではないこの逸品。野菜の甘味が辛さを包み込んでいて舌がピリつきません。夢中になって食べ進めているといつの間にか汗が滴る不思議な感覚。やみつき注意です。この文章を書きながら既に唾液が。。
オーナーインタビュー
魅惑のカレーを作り続けるオーナー阿蘓さん。スパイスカレーへの想いや京都での遊び方など、興味のまま迫りました。
━━阿蘓さんが京都でお店を始められたきっかけは何ですか?
阿蘓さん(以下、阿蘓):お店を始める前は大阪で働いていたんですが、京都に住んでて。奥さんが京都住みたいと言ったのが大きいですね。ただ、
住んでみて思ったのは、自転車があればどこでも回ることができるし、
個人店で面白いお店が多くあるんです。それまでは観光地的に河原町とか木屋町で飲んだことしかなかったけど、文化的な側面でも面白い街だなーと感じてます。
━━京都の文化にはどのような場面で触れていますか?
阿蘓:元々レコード会社に勤めていたこともあり音楽が好きで、業界の知り合いも多くいるのでよくライブに足を運びます。知り合いのアーティストがレコーディングのお終わりに食べにきてくれたり、音楽イベントのケータリングもさせてもらうことが増えました。カレー屋さんを始めるとき、音楽とは縁遠くなるかなーと思っていたけど、むしろ近くなった部分はあって。嬉しいし面白いなーと思っています。
━━店内からも音楽愛が滲み出ています。具体的におすすめスポットなどあれば教えてください。
阿蘓:ライブハウス磔磔 や京都メトロにはよく足を運びますね。磔磔はバンドマンの聖地だったりもします。他にもネガポジだったり、ソクラテス スタジオスなどなど京都の音楽シーンは面白い場所が多くあります。ライブハウスではないけどPop Pizzaなんてピザ屋さんだけどライブイベントもやっていたりする。ぜひ行ってみてください。
━━どこも楽しそうです。。HOTEL SHE, KYOTOも全客室にレコードプレーヤーを設置していて。客室にもレコードを置いていますがラウンジでオールジャンルから気になるレコードを手に取ってもらっています。3ヶ月に1度レコード屋(ここ入れてください〜)と選んで入れ替えています。
阿蘓:ホテルでレコード聞けるのは面白いですね。オールジャンルならレコードを触ったことがなくてもとっつき易いし、プロのレコード屋さんと選んでるなら間違いないよね。アイスクリームも近いうちに食べに行きます。
━━ぜひお待ちしてます!カレーのお話も聞きたいのですが、カレーの研究は日頃どのようにされていますか?
阿蘓:新しいタイプのカレーを1から試作したりは最近していないけど、休みに他のカレー屋さんに行って、食材や盛り付けで刺激を受けることはあって、考えたりアイデアを試したりしています。
キーマカレー1本でやっていても、日々作ってる中で気づくことが多いなと感じています。同じ作業をずっと毎日する。10回、100回やっている中で、同じことやってるんだけど、1000回目で気づくことがあったりします。例えば、いつもとやり方が少し違って失敗したことがきっかけになったりする。そんな些細なことから学んでいて、大きな味の違いはないかもしれないけど、日々作ってきたカレーの中で今日のが一番美味しくなってるんじゃないかなーと思っています。
━━続けることで研ぎ澄まされていくものがあるんですね。
阿蘓:玉ねぎの切り方や炒め具合も、以前は闇雲に大体こんなもんだろと思ってやっていた部分もありました。今はよりクリアに目指すところが1つ1つ見えてきている。これだけ続けてようやくぼんやりしていたものがクリアになってきた、なってくるもんだなぁと思っています。
━━飽くなき探求なのですね。かっこいい。最後にカレー作りで特にこだわっていることがあれば教えてください。
阿蘓:んー、。「"ちゃん"とやる」ってことですかね。
━━「"ちゃん"とやる」ですか。
阿蘓:1つ1つの作業工程に気を遣っている、という感じです。カレーっていくつか工程があるけど、その1つ1つを"ちゃん"と重ねた上じゃないと美味しくならないんです。掛け算じゃないけど、他は良くても1つが50点とかだとクオリティがグッと下がりますよね、そんな感じ。
僕らにとってみれば1日多くのお客さんに提供するけど、お客さんからしたら1回の大切な食事なので。本当に気が抜けない。僕がお客さんとして他のお店に行く時も、そう言う気持ちでやっているお店とそうじゃないお店はやっぱり違うと思うんです。
せっかく来てくれたので、常にベストを尽くしたカレーを出したいと思っています。やってて後から後悔するの嫌なので。最初からバシッとやる。
なんて言ってますが、全然まだまだ道の途中なので、どんどん良くしていきたいです。
最後に
終始語り口調は優しく穏やかだったのですが、静かに熱いカレー道を語っていただきました。そんなカレーと音楽を愛する阿蘓さんが、音楽にハマるきっかけとなったのは忌野清志郎+坂本龍一「い・け・な・いルージュマジック」だそう。
当時ビジュアルやニューウェイヴロックなメロディに衝撃を受けて、お小遣いを握りしめレコード屋に走ったとのこと。この曲にはこんなフレーズがあります。
"他人の目を気にして生きるなんて くだらない事さ"
温かくもロックなお店「SPICE CHAMBER(スパイスチャンバー」さんにぜひ足を運んでみてください。
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