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紺碧の海に囲まれた小島の温泉宿/碧き島の宿 熊野別邸 中の島

紀伊半島南部に位置し、177という和歌山県内で最多の源泉を持つ南紀勝浦温泉。「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」は、勝浦湾に浮かぶ「紀の松島」の一つ、中ノ島にある一軒宿で、島全体がホテルの敷地という全国的にもめずらしい立地で営業を行なっている。ホテルの入口は勝浦港より専用の送迎船に乗り、海を渡った先にある。

130余りの島々からなる「紀の松島」に浮かぶ宿。勝浦港から専用の送迎船で約5分。

開業の時期は明らかではないが、明治の末頃まで帆船を相手に紀の松島の入り江付近で船宿を営んでいたという。1935年頃に、島の所有者が十数室の木造2階建ての旅館を建て、同時にボーリングを行ない温泉の湧出に成功し、温泉旅館としてのスタートを切った。

当時は温泉を湧出させたものの真水が出なかったため、必要な水は勝浦町から船で運んで営業を行なったという逸話が残っている。58年に南海電鉄グループが当時の島の所有者から買い受けて旅館の営業を継承し、現在に至る。

施設の大規模転換を実施

「59年の紀勢本線の全線開通や69年の国道42号線の拡幅・舗装完成などの効果によって、南紀勝浦温泉へのお客さまは増加しました。そういったニーズに合わせて建物の規模を拡大し、『ホテル中の島』として営業してきました」

こう話すのは㈱中の島 取締役兼営業統括の長谷川文平氏。

㈱中の島 取締役兼営業統括の長谷川文平氏。

ホテル中の島は団体客を中心に営業を行なってきたが、旅行形態が団体から個人にシフトし、高級志向が高まっていることと、開業から年数が経ったことによる施設の老朽化に伴い、2019年4月に大規模リニューアルを実施。これまで4棟あった宿泊棟のうち、地上6階建てで鉄筋コンクリート造の高級志向の潮聞亭(ちょうもんてい)を除く3棟を解体し、新たな宿泊棟「凪の抄」をオープンした。凪の抄は鉄骨3階建てで、全10室の客室にはバルコニーと露天風呂を完備。内装は「山の熊野」「海の熊野」をテーマにデザインし、和モダンに仕上げた。

既存の潮聞亭や温泉施設も一部リニューアルを行ない、客室数は潮聞亭の34室と合わせて44室、収容人数は196名規模の施設となった。また、屋号も現在の碧き島の宿 熊野別邸 中の島に改め、これまで以上に豊富な温泉の魅力をアピールしている。

2019年にオープンした新館「凪の抄」の「ラグジュアリーデラックス」(75㎡)。

「大浴場では一日700tのお湯が湧き出る天然温泉100%の源泉にお浸かりいただけます。温泉は硫黄成分が含まれる弱アルカリ性ですので美肌効果が高く、保湿性があります。血行促進の維持と肌の乾燥を防ぎますので、女性のお客さまには喜ばれています」

と、泉質に関しては絶大なる自信を見せる。

ちなみに同施設は島内に6本の源泉を持ち、毎分486ℓの湧出量を誇る。眼前に海が広がる露天風呂は「紀州潮聞之湯」と名付けられ、その名の通り、打ち寄せる波の音を聞きながら解放感あふれる温泉を楽しむことができる。あまりにも開放されすぎているため、インナーウェアブランドの「ワコール」とタイアップし、オリジナルの湯浴み着を製作。女性が安心して温泉に浸れるようにしている。

島の敷地面積は約6万8000㎡。リニューアル後は「高付加価値をめざした事業展開で高単価になり、客層も高付加価値を求めて来られるお客さまに移り変わりました」(長谷川氏)という。

目の前に波が押し寄せる開放的な露天風呂「紀州潮聞之湯」。入浴時は湯浴み着を着用する。

1泊2食付きの宿泊料金は平日2万8000円~、休前日は3万1000円~(いずれもサ込み税別、入湯税別)。平均宿泊単価は3万9000円、年商は5億7000万円。日帰り客は受けず、宿泊客のみの対応となる。集客はOTAが50%、直客が30%、リアルの旅行会社が20%。OTAの内訳は一休.comが18%、楽天トラベルとじゃらんnetがそれぞれ14%、この他るるぶトラベルやBooking.com、Expediaなど海外OTAも活用している。

発地別では関西からが38%、次いで海外からが22%を占めている。あとは首都圏が18%、東海地方が10%、残りがその他の地域となっている。オンシーズンは7月中旬と8月中旬、10月、11月末、3月下旬~4月上旬。オフシーズンは5月のゴールデンウィーク明けと7月上旬、2月。オフ期の対策としては「募集ツアーを実施している他、宿泊時期や予約のタイミングによって料金を調整するレベニューマネジメントを導入し、集客に努めています」(長谷川氏)と話す。

料理に関しては「聖地熊野」をコンセプトとし、地の食材を中心に厳選した食材を使って、ストーリー性のある料理を提供している。春のメニューでは紀州マグロや熊野牛、伊賀牛、松阪牛に加え、近畿大学の養殖技術で生まれたブリの旨味とヒラマサの歯ごたえを兼ね備えたブリヒラの他、メカジキや龍神椎茸、奉納米として献上されたイザナミ米などを取り入れた会席料理「熊野絢爛割烹 白龍」を用意。さらに白龍をさらにアップグレードした「白龍 極」では伊勢エビの姿造り、アセロラマダイ、ブリヒラのしゃぶしゃぶ、熊野牛の野田焼きなどが味わえる。

「熊野絢爛割烹 白龍 極」のメニュー例。“聖地熊野”をテーマに、厳選した地の食材をふんだんに使用した会席料理を提供する。

従業員は契約社員、アルバイトを含めて、約50名。それぞれが聖地熊野といったコンセプトに沿った商品開発ともてなしに注力しているという。

「南紀勝浦温泉は熊野の聖地の麓に位置していますので、古くから伝わる熊野信仰に沿った伝統芸能や那智大社、青岸渡寺などに関わる文化的背景を感じていただける商品開発をしたいと思っています。本物であり、世界でここにしかないストーリーを打ち出し、宿泊されるお客さまへ感動体験をお届けしたい」

と話す長谷川氏。聖地・熊野にこだわった宿づくりを進めていく考えだ。

碧き島の宿 熊野別邸 中の島
住所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町勝1179-9
電話:0735-52-1111
HP:https://kb-nakanoshima.jp/

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