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吉田靖直『持ってこなかった男』について

 吉田靖直さんについて知ったきっかけは、好きでみていたYouTubeチャンネルのゲストとして出ていたことがきっかけだったと思う。調べてみるとトリプルファイヤーというバンドをやっていたり、自分と同い年でしかも同じ香川県出身だったりということで、急激に興味が湧いた。そのYouTubeチャンネルで、本を出しているということを知り、早速本書を読んだのがもう2年くらい前だろうか。

 この度、トリプルファイヤーが新作を出したということで、改めて本書を読み返してみた。やっぱりすごく面白かった。

 とにかく共感できることが多いのだ。香川県の片田舎(吉田さんは三豊市、自分は東かがわ市)の鬱屈とした感じ、大学の軽音サークルのノリ、「なんか分かるぞ」というところが結構ある。

 細かく挙げると、例えば吉田さんが初めて行ったロックバンドのライブがハイロウズで、偶然だが自分はクロマニヨンズだった。そこで、自分も吉田さんと同じく、周りの客と同じように盛り上がることに何かしらの違和感を持った。そのときの俺は無理して前の方に行って無理して盛り上がろうと思ったのだが、今なら後ろの方で自分のペースで楽しむだろう。

 他にも、高校の文化祭にバンドで出演することに執念を燃やすところにも共感できた。高校でバンドをやっている生徒からすると、ここで存在感を示せることが今後の高校生活を左右するのだ。自分は吉田さんと違って2,3年生のときに出演し、それなりに学校内で認知してもらえた。しかし、残念ながら彼女はできなかった。

 大学の軽音サークルのライブでも、「自分以外の人間が作った曲を演奏して、それを批評し合うことにどれだけ意味があるのか」ということは心のどこかで思っていた。俺も、自分で作った曲を演奏したくて、本書にもあるようにいわゆる「外バン」を始めた。ちなみに、外バンをやっているというのが軽音サークル内でのある種のステータスになるというのも、うちの大学でも一緒だった。しかし、俺にはその道で何者かになることは難しいだろうなということが薄々分かり始めて切なかった。

 また、大垣さん、山本さん、最後に鳥居さんと、徐々にトリプルファイヤーの役者が揃っていくのにはテンションが上がった。なんか運命的なものを感じた。俺は人生をやり直したいとかあまり思わないんだけど、高校時代に戻ってめちゃ勉強して早稲田大学に入って、吉田さんたちがいた軽音サークルに入って出会っていたら友達になれたかなとか、そんなことをちょっと考えたりもした。

 とまあ、自分は勝手に吉田さんとトリプルファイヤーを応援している。新作もすごくよくて繰り返し聴いてる。良かったら香川にもライブに来てほしい。

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