【コラム】これからの時代の産後ケア
この度、HOTEL CAFUNEは11月21日のご宿泊分をもって川崎拠点をクローズする運びとなりました。これまで応援してくださった皆様には、心より感謝を申し上げます。
今年5月には開業2周年を迎え、本日までたくさんのゲストの方にご宿泊いただきました。私たちの産後ケアに対する想いはこれまでと変わらず、むしろこの2年半でのゲストの方々との出会いを通して、これまで以上に産後ケアの大切さを認識しております。
こちらのnoteもたくさんの記事を配信してきましたが、この機に私たちの産後ケアに対する想いについて綴らせていただきます。
日本の産後ケアについて
日本でも産後ケアについて知っている方は、ここ数年でとても増えてきています。SNSの影響もあり、現役の子育て世代からその親世代まで、幅広い世代の方が産後ケアについて知る機会も多くなりました。産後ケアの助成を積極的に行う自治体も増えています。(※1)
自治体の取り組みが増えてきている一方で、自治体の産後ケア事業を利用したことのある方は、実際には3割程度しかいないと言われています。(※2)
産後ケア事業を利用しなかった方は全体の6割いる一方、「産後ケア事業を利用しようと思わない」と回答している方はたった1割しかいません。(※2)つまり、産後ケア事業を「利用したくてもできなかった・しなかった」方がいると考えられます。
もちろん、産後ケア事業を利用しなくても、夫婦や家族でやりくりして順調に育児をしていける方もいるでしょう。一方で、核家族化が進み共働き家庭が多い現代で、産後に心身共に疲れを感じたり、悩みやトラブルを抱えている方がいることも想像に難くありません。
実際、9割以上の方が「産後の悩みやトラブルがあった」と回答しています。(※3)睡眠不足や体のトラブルに悩みを抱える方が多い一方で、育児の不安や精神的なトラブルで悩んでいる方も半数近くいるのです。女性は妊娠出産を通した体へのダメージやホルモンバランスの変化があるため産後に様々なトラブルが起きやすいのはもちろん、最近では「男性の産後うつ」も増えてきています。
夫婦どちらもが抱えうる、産後の悩みやトラブルを解決する1つの選択肢として、産後ケア事業はとても大事な役割を担っています。現在の産後ケアは主に、出張型、日帰り型、宿泊型の3タイプがあります。産後ケアを受けたい方が、ご自身のライフスタイルに合ったタイプの産後ケアを選択できることは大前提大切ですが、私たちは特に宿泊型の産後ケアに大きな意義を感じています。
産後ケアの役割
ここでこれまでHOTEL CAFUNEにご宿泊いただいた方の体験談を振り返りながら、産後ケアが担うべき役割について考えてみたいと思います。
①体の休養に対するケア
私たちは産後ケアの役割の一つに、「体の休養」がとれることがあると考えています。
ワンオペで育児をされていた方や、里帰りをしない方、周りに育児のサポートを頼める方が中々いないという方は、「一番に体を休めたい」と思われることでしょう。実際にご宿泊された方にも「ゆっくり寝て疲れを癒したい」「赤ちゃんを預かってもらいたい」というご希望がある方もたくさんいらっしゃいました。とにかく睡眠をとって、休んで、栄養のあるお食事をとることは、何よりも体の基礎を作る大切なケアです。
そして産後に休養するためには、時には赤ちゃんのお世話をお休みすることも必要です。生まれたばかりの赤ちゃんのお世話は24時間体制で続き、ゆっくりお風呂に入ったり、携帯を見たり、自分のタイミングで生活することもままならないときがあります。そういう時は、赤ちゃんのお世話を周りにお願いして、しっかりお休みすることも大切ですが、「赤ちゃんを預けることに罪悪感がある」と語っている方がたくさんいました。
そんな罪悪感を感じることなく、何の気兼ねもなく安心して赤ちゃんを預けられるのは産後ケアの役割の一つといえるでしょう。更には、長期間を通してそれを実現できるのは、専門家がいる宿泊型の産後ケア施設ならではかもしれません。
②育児の不安や疑問に対するケア
次に、育児の不安やちょっとした疑問を専門家に相談できることも、産後ケアの大切な役割の一つです。産院での入院期間はあっという間に過ぎてしまいますし、ゆっくり専門家に相談できる時間を作るのは簡単ではありません。育児が始まって「これどうなんだっけ?」と疑問に感じたり、不安に感じることについて「相談するほどでもないのかな…」と思ってしまう方もたくさんいます。そういった小さなモヤモヤを溜めずに、整理していく時間は、心の健康にとってとても大切です。
③自分の時間を過ごしてもらうためのケア
また、多くの体験談を発信している中でとても印象的だったのは、「ママとして以外の自分の時間を過ごせたのが良かった」と語っている方が多かったことです。
「今日からあなたは母親だから/父親だから」というレッテルの中で自身のアイデンティティを失う代償として親になるのではなく、親となった人が、自分のスタイルを大切にしながら親になれる、そんな社会をHOTEL CAFUNEは目指してきました。
自分だけの時間を思いきり過ごして、自分が満たされた状態で育児をすることで、子どもに笑顔で向き合えるサイクルができていくのではないでしょうか。産後ケア事業の中でも、宿泊型の産後ケア施設は提供できるサービスの幅が広く、「自分の時間を過ごしてもらうためのケア」が充実しやすいのが特徴です。
未来に向けての願い
これほどまでに大切な役割を担っている産後ケア事業に対して、こども家庭庁から「産後ケア事業、自治体への補助上限を撤廃する」と発表されています。しかし、まだまだ産後ケア事業を利用するにあたっての費用面のハードルは高いのが現状です。これまでHOTEL CAFUNEにご宿泊いただいた方の体験談でも、費用面についてのご意見がたくさんありました。特に、「費用面を補助金などで解決出来たら」というご意見が多かったように思います。
また、産後ケア事業に限らず出産から産後ケアまでオールインクルーシブのサービスになったら嬉しいというお声もありました。
私たちも産後ケア事業を提供するものとして、これから先もより多くの皆様が利用しやすい産後ケア事業づくりに向けて、努力を続けていかなければいけないと考えています。
高級品だった携帯電話を今はほとんどの人が所持しているように、結婚式や披露宴をすることがメジャーになってきたように。産後ケアが贅沢品ではなく当たり前になる未来を作っていきたいと思います。
すべてのご家族が笑顔で過ごせる未来と、HOTEL CAFUNEを卒業した赤ちゃんの健やかな成長を願っております。