裏磐梯と水芭蕉と祖母
旅行を計画したのは、2023年の夏。
Youtuberのこつぶちゃんがブログで取り上げていた磐梯吾妻スカイラインのツーリング旅行を2年前にみていた。
その写真が圧巻だった。
全然、しらなかった磐梯吾妻スカイライン。
磐梯、会津、福島、それぞれ知ってる。
けれど、そこにこんな絶景があるなんて。
もう行くっきゃないでしょうと見た瞬間思った。
走ってみたいと。
車と違ってバイクには覆いがない。
その状況でみる景色は開放感が抜群で、空気の冷たさ、匂い、それも全部ダイレクトで感じられるので感動が倍の倍なのだ。
東京からだと高速使えば4時間ちょっと。
けど、私のバイクはクロスカブ。下道しか走れない。
そうすると8時間。ほぼ1日かかる。
2日かけて福島まで行く方が無難だ。
250ccのレブルを借りようか・・・しかし、慣れないバイクで遠出はしたくない。
2023年の8月はとんでもない暑さ続きだった。
昼間走るのは自殺行為に等しい。
実は、2023年の6月末にキャンプツーリングに行った時、軽く熱中症になりかけた。というかなっていたんだと思う。
人の体はタンパク質でできていて、熱中症というのはゆで卵的なものらしい。
なので、一度、熱中症になると生卵にはもどれない(なんのこっちゃ)。
その経験から、昼間のアスファルトを走るのは多分、1時間が限度と想定した。
夜、移動して、昼間は快活クラブにこもって仮眠をとる作戦も考えた。
がスカイラインを走るのは昼間だし、行こうと思った日は雨がふったり、夜でも30度を下回らない気温に怖気付いて、秋を待った。
秋が来た。
しかし、それは秋とはいえない気温の日々がやってきただけだった。
暑い。無理。死んじゃう。
そして、磐梯吾妻スカイラインは冬季閉鎖に入ってしまった。
来年以降で行けたらいいなー。
なんて思って、ほぼ、忘れて毎日を過ごしてた。
Xを眺めていたら、磐梯吾妻スカイライン2024年4月23日に冬季閉鎖を終え、開通という投稿が流れてきた。
お、開通したのか
そのうち行こうかなと思った。
いつ行くの?
私の中の林先生が言った。
いつってそりゃ、気候が良い時でしょうよ。
私の中の大泉洋が答える。
気候が良い時っていつ?
林が食い下がる。
そりゃ、春か秋でしょ
洋がぼやく。
じゃ、今でしょ!
林が言った。
あれ。もしかして今、チャンス?
そう思ってカレンダーを見た。
明日の天気は良好。
次週は雨。
まじか。
それが4月26日(木)19時。
バイクのオイル交換に行って帰ってきて、部屋でダラダラしている時だった。
久々に乗ったバイクは割と感触よかった、というのも後押しになった。
え、、、じゃ、これから出ちゃう系?
いやいやいやいや、無理でしょう、ちょっと寝てからでいいんじゃないの?
と思いながら、ルートを検索し保存していく。
このルートがよさげじゃない?
と大体きめて、翌朝4時半に出発することにした。
借りているバイク駐車場には街灯がないため暗いので、深夜、そこに行きたくないのだ(借り直したい不便・・・)。
そんなこんなで裏磐梯のGoogleMapを見ていたら、宿泊施設が多いことに気づく。
え、こんなところに泊まれちゃうわけ?
ふむふむ。
あ、ここ良さげ。キャンプもいいけど、疲れてるだろうから、宿泊施設に泊まった方がいいよね。
そうホームページが素晴らしすぎた。とてもいいホームページなので見てください。コンセプトがしっかりしてる。コンテンツもいい。
明日、空いてる?空いてるじゃん。予約するしかないっしょ。
ポチっとな。
はい、できたー。
磐梯吾妻スカイラインみて、レークラインから裏磐梯にぬけて、ここに泊まれば万事OKじゃん。
なんて、軽いノリで決めてしまった。
でもこんな感じだったのだ。
今まで悩んでいたのが嘘みたいに、ポチってしまったのだった。
さーてと、モンベルのバックパックに荷物をつめよっと。
バイクのシートバッグも使えば十分。
明日の朝3時に起きるぞ。
アラームをセットして眠る寸前に、天国にいるはずの父、祖父、祖母に
(明日、起こしてくださいね、一緒に裏磐梯行ってみたいでしょ?絶対楽しいよ。だから、道中、お守りください)
とお願いして目をつぶった。
うとうとしながら、眠りにつき、気づくとアレクサの声が聞こえてきた。
「おはようございます。4月25日木曜日、午前5時50分です」
は!!!!え!!!!!5時50分って何時?
そう、なぜか私は5時50分にアラームをセットしていたのだ。
終わった。。。
4時半にでれば、東京と埼玉の渋滞にはまらない計画で行けたのに。。。
8時間かかっても、スカイラインには余裕でつくから、ホテルのチェックイン15時までのんびりみられるはずだった・・・
が、、時すでにお寿司。
6時ですよ。そこから8足してごらんよ。
14です。
14時ですよ。
しかもこれは、順調な場合・・・・
磐梯吾妻スカイラインは17時から翌朝8時まで封鎖されてしまう。。。
終わった。。。(2回目)起床から3分。
がしかし、ホテルは予約している・・・
なんとしてでも裏磐梯に行かねばならぬ。
気持ちを切り替えて着替えた。
スカイラインは次の日でもいいから、とにかく、福島まで行こう。
10分で準備し6時には家をでた。
やはり、寝る前に準備しておいてよかった・・・
6時10分。バイクに乗った。信じられない速さ。
いざ、出発。。。
おばあちゃん、なんで起こしてくれへんかったの?(なぜか関西弁)
福島までの爆速長いツーリングが始まった。
環七を東へ走り、ナビに言われるがまま色々通って、国道4号へ。
あれ、割と道空いてるんじゃね?環七も空いてたし。
これ、もしかしたら行けんじゃね?この時間がベストだから、寝坊させてくれたんじゃね?
と思うほどにポジティブに気持ちをきりかえたが、何度見ても、ナビが示すホテルへの到着時間は16時5分予定。
しかもこれは、休憩時間も散策時間も含まれていない。
これはやばいね。
が、とにかく走るしかないね(とにかくやるしかね)
ひたすらバイクに無茶をさせつつ走った。
4号は初めてだったのだけど、環七以上高速未満のスピード感で車がながれていた。
ねぇ、法定速度って知ってる?
ってくらい、みんな時速80キロ以上で走ってる。
なので、それについていった(前の車があのスピードなら自分はつかまらないはず)
オービスの手前でみんな綺麗に時速60キロで走り出すのはお決まり。
これは、もしや、、、、朝早すぎてたら、ペースメーカーがいなくて
逆に走りづらかったかも。。。
やはり、天国の3人は私のために寝坊させてくれたのだ
と都合よく考えてはじめていた。いける。ついてる(憑いてる)。
途中、道の駅の駐車場1回、コンビニ1回、ガソリンスタンド3回。
休憩?はそれくらいにして、ひたすら走り続けた。
アクセルを回し、フロントブレーキを握る右腕はスロットルアシストのおかげでかろうじて死なずに済み、なんと体の調子はいつもより良さげ。アドレナリンのおかげで麻痺している。
途中のコンビニでチョコパンをかじり、行動食の飴をなめ、スポーツドリンクを飲み、ようやく猪苗代湖に着いたのは、14時ごろ。めちゃめちゃいい天気。暑すぎず寒すぎず。
そこからのルート取りがよくなかった。
福島側から通り抜けるといい
というネット上のつぶやきをみてしまったために、福島側から入ることにこだわったのがよくなかった。
猪苗代湖から入ることもできて、そこから入って折り返せば、時間に余裕はあったのだ。ここはこの旅での反省点。
予定を変更せずに福島側にまわったため、峠越えし、気温1度のトンネルに震え、走り屋の車に道を譲り、スカイラインの入り口に着いたのは、15時半すぎていた。。。
ゲートの入り口で警備員に言われる。
「これから行くと戻ってくる時にはゲート閉まってると思うんですけど、抜けられます?」
「抜けて、裏磐梯の宿泊施設に泊まる予定です」
と言ったら、それならと通してくれた。
日は、もう、、傾き始めている(涙)
登る車両は私だけ。
と思ったら途中途中でのんびり写真をとる、数台の自家用車はいた。それらの車にも後ろから抜かれ、やはり、その日最後に登ったのは私だった。。。
しかも、カーブがきついし登りもきつい。。。
こ、これは、三峰(秩父)を思い出すやつじゃん。。
そう、三峰神社、2022年12月。私はあの時も無謀に早朝の三峯神社に文字通りガクブルしながら、バイクで向かったのだ。。。あの時は本当に寒くて。朝の7時に所沢あたりから秩父にむけてバイクに乗るものではないという教訓を得た。
しかも、ヘアピンカーブの連続。私の110CCのバイクは2速で時速20キロ前後で必死に唸り声をあげながら坂道を登っていた。。。
後ろに下がらないかしら・・・という恐怖を感じつつ、三峯神社までたどり着いた時は
(なんで、こんなことしているんだろう)と我に返った。
せっかくきたから、ご祈祷してもらおうと待合室の石油ストーブであたたまり、あまり深く考えないことにしたのを覚えてる。
私はまた同じようなことをやっている。
が、しかし、あの時と違うのは、気温がそこまで低くないこと。
(それはあんまり重要ではないような)
大丈夫、今回も2速でしか上がっていかないけど、確実に運転は3cmくらいは上手くなっている。。
だから、お願い、対向車来ないで。
なんで、こんなに高いの?
怖すぎる。早く浄土平に着いてと心の中で泣いていた。
登っても登っても全然上につかない。
降りてくる車とバイクばっかり。
しかも、軽自動車が飛び出してくる。
ねぇ、そのスピード自殺行為だよ。ほんと。。。
どんどん高くなる標高。
遠くに福島市の街並みが見える。。。
時間がないのはわかってたけど、広くなってる路肩にバイクを停め1枚。
なんかいつもとってる山の写真と変わらない気もするが気にしない。
泣きそうになりながらもバイクで坂道をひたすら登り続けると樹林帯が消えた。
あ、、、そろそろきたかも。
あ、、、、ここ!!写真でみたところ!!
火山ガスの標識きたーーーーー!!!
そう、有毒ガスがそこかしらで沸いてるらしく、車の方は窓をしめてくださいって書かれているのだ。
え、バイクは?と思う。
長く滞在しなければ、多少?吸っても?死なないらしい。多分。
この辺りは、浄土平のビジターセンター以外は駐停車しないように看板が立っている。
この時点で15時50分すぎ。
頂上にはほぼ、人はいない。そうもう帰る時間なのだ。
つまりほぼ貸切状態だった。
停まれないけど(涙)
天気も2024年の開通後、初めての晴れ。午前中は濃霧だったらしい。
これは、やっぱ、ベストな時間に連れてきてくれたんじゃん、あのお三方。
ずっと来たかった場所に滞在時間5分程度(涙)
が、ここを走れたことが自分にとっては大きな経験。収穫。
また登る?って聞かれてももう無理って答えると思う。
この時間だからこそ、車もバイクも少なく、あのヘアピンの上り道を登れたんだと思う・・・私の運転技術だと。
なので、あの寝坊は必然だったのだと。
どう考えても5時50分にセットしたのはおかしいもの。
いつも5時にアラームがなって、ラジオがかかるのだけど、なぜ5時50分?
そして10分で家を出られたことも謎なのだ・・・
どうしても、、、写真を撮りたくて、浄土平のビジターセンターから少しはずれたところにバイクをとめ、急いで写真を撮った。。。
ね、他の車もバイクも人もいないでしょ。
そして天気は抜群によい。風もそこまで吹いてない(たまに強風でバイクに乗ってられないくらいの時もあるらしい)。
お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、あざます!!!
もうさ、ほんとは3人とも、来てみたかったんでしょ。で、ベストコンディションでみたかったんだよね。ということにしておく。
じゃ、ゲート閉まる前に急いでおりようか・・・(現実にもどる)
磐梯レークラインはあきらめようね(白目)
激下りが始まりました・・・
こっちもヘアピン。
けど、下りだからね。。。膨らまないようにすればいいだけだから楽。
アクセル全開にしなくても自然とおりてくから。。
しかも、対向車は絶対にもうこないしね(ゲート閉まるから)。
道の両脇に雪は残ってました。
スカイラインを無事におり(白目)、レークラインを通らずに裏磐梯方面へ。
これがね、東北の春って感じで(ようやくきた春って感じ)とんでもなくよかったのですよ。山の形や道の脇の家の雰囲気。
田舎って豊かだなっていつも思う。
桜に桃に鶯に。場所によっては藤も咲いていて。芽吹き始めた緑が目に優しく。
そうして、17時過ぎ。ようやくお宿につきました。。。
いやぁ・・・着いたころには、腕も足も背中もガッチガチで。。。
夕食が18時半以降だったので、先に温泉に浸かりました。
やはり、疲れをとるには温泉ですね。。。
この温泉と寝心地のいいマットレスのおかげで、翌日に疲れは持ち越してなかったんですよね。湯と寝床は大事。
そして、この宿の前には散策路があって。
着いた日はもう夕方だったので、翌日の朝、少し散策しました。
一周25分くらいのコースをまわってみたのですが、水芭蕉があちこちに咲いていました。
それをみた時に、祖母が「ばあちゃん、水芭蕉、好きじゃない」
って言っていたのを思い出したんです。
水芭蕉は蛇の枕といわれていて、水芭蕉の近くには蛇がいることが多いからだそうで。
祖母はそう言われて育ち、水芭蕉の側にはいかないようにしていたそうです。あんなに綺麗な花なのに(ちなみに祖母は巳年でした)。
昨年の12月に祖母が他界。病気がわかってから1年ちょっと。あっという間でした。亡くなる2ヶ月前まで、痛みをこらえつつ、自宅で過ごし、いよいよ入院となって、母から病気を告知しました。
とても可愛がってもらった祖母なのですが、私は死について実はあまり悲しくなくて。。。祖母は告知後、死をとても恐れていたと思います。
けど、その2ヶ月の間に自分の体の急激な悪化を実感しつつ、死に向き合っていたようです・・・
亡くなる数日前に母に
「あんまりいい母親じゃなかったね、ごめんね。お前がいてくれて本当にたすかったよ」と言っていたそうです。
そして、たまたま母が面会日に祖母に会いに行った時、目の前で息を引き取ったのです。
眠っているように目をとじた状態で、口元が少し動いたので、多分、ありがとうとつぶやいたのではないかと母は言っていました。
昨年11月に弾丸で帰省した時にあったのが最後でした。それもPCモニターごしで。
祖母とは楽しい思い出ばかりでした。気が合って毎週泊まりにいくくらいに。
なので、今回の弾丸福島旅行も絶対、楽しみながらついてきてくれると思っていて。
一人旅でも寂しさも不安もなかったです。
なんだろう、一人旅をよくするのですが、いつも後ろが賑やかな気がします。
不安なのはバイクの運転くらい・・・交通事故怖いですよね。。。
しかしながら、今回、怖いこともほぼなかったので、バイク旅も楽しんでくれてたんだと思います。
父、祖父、祖母が生前できなかった楽しみを私がその分、楽しんでる感覚をもって最近はいろいろ、体験してます。
きっと、喜んでくれているにちがいない。と思う。
帰りは来た道を戻る感じで帰ってきました。8時半にでて家についたのは17時。
途中、道の駅1回、ガスト1回(30分くらい)。ガソスタ2回。
やっぱり遠いですね。下道だと8時間かかる。。
猪苗代湖の近くのガソリンスタンドで給油後にとった写真。
磐梯山、存在感はんぱない。登りごたえありそう。
そういえば、宿にバス停があって。
え?東京からバスでてたの?
と思ったのですが、今は運休中みたいです。
スカイラインの動画はインスタにあげています。
どんな感じの道だったのかより知りたい方はそちらも。