Episode 443 網に掛かってもがくのです。
私は趣味で自転車に乗るのですが、スポーツバイクのトレーニングで「サイクルトレーナー」なんてものがあるんですよね…所謂「ローラー台」と呼ばれるものです。
スポーツジムなどにあるベルトの上を走るランニングマシーンの自転車版と思っていただいたら一番わかりやすいでしょうかね。
走って前に進む代わりに地面が動く、同じように漕いで前に進む代わりにローラーが回るワケですよ。
その中でも「3本ローラー」と呼ばれるタイプは、実際に外で走るバイクをローラー台に固定せずにそのまま走ることが出来るもので、室内で実走する感覚が味わえる優れものなのです。
乗っている本人は必死で漕いでいるワケで、それ自体がトレーニングなので良いのですが…これね、傍から見ているとものすごく「滑稽」だったりするんですよね。
ダラダラと汗を流して必死でバイクを漕いでいるのに、前後の車輪はガンガン回っているのに、風景が 1mm も動かないワケです。
当然の話なんですけど、ものすごい違和感…誰が名付けたのか、その界隈でその姿を「もがく」と表現するんですよね。
イメージとしては、頭部のツノをつまみあげられてバタバタと足を動かすカブトムシの図。
さてさて、オトギバナシのつづきをしましょうか…。
網に掛からなかった白鳥は、スズメと仲良くなって結婚…なんてことが世の中には普通にあるのです。
そこに至るまでの経緯についてはそれぞれでしょうし、私の場合は…まぁ、過去記事を読み返せば「ゴッソリ」出てくるハズなので、ここでは割愛しますが、白鳥とスズメの共同生活は「なかなかの難問」を抱えていることが多いように私は思います。
その最初に立ちはだかる「網に掛かる」ということが「最大の問題」なのだと私は思うのです。
白鳥と共に生活することを決めたスズメは、一緒に暮らして初めて白鳥の「内モード」を目の当たりにします。
そして「おや?」と思うことになる…。
ただ、白鳥側からすれば、それが「内モード」と言う自覚はありません。
それは前回に指摘した通り、スズメが内モードと言っても、白鳥からすればそれが「本性」であって、スズメが「普通」だと思っていた外モードがマジックだからです。
今まで「ブラックボックス」とみなし出来るの効果である「スルー」で網に掛からず逃げまくり、外モードというマジックを使って経済力をメインにした社会的な地位を掴んできた白鳥ですが、マジックの効果は恒久的ではないのです。
対外的にマジックを使うためにはインターバルの時間が確実に必要で、スズメと出会うまでは「独りの時間」で充電できたワケです。
「生活を共にする」とは、マジックを使えない時間帯も隣にスズメがいる…ということです。
パートナーとなった白鳥の「家での姿」を訝しがるスズメは、結果的に白鳥の私をスズメの網に掛けることになるワケです。
網に掛かった白鳥は、無暗にあれこれ試そうともがくのです。
外モードを家に持ち込もうとしてみたり、開き直ってみたり…。
網に掛かれば驚いて暴れる…それは多分、どんな生き物でも一緒。
魚であっても獣であっても。
例えばクモの巣に引っ掛かれば「!!!」って思うでしょ、誰だって。
必死にクモの糸を振り払おうとする…まぁ、糸ぐらいなら振り払えるでしょうが、網に掛かったらどうでしょうかね。
残念なことに、驚いてもがくほどに網は体に食い込むのです。
ローラー台の上で大汗かいて、1mm も進まない…そんな滑稽な感じ。
絡まった網を解くには、力業では歯が立たない。
網に掛かった白鳥が生き抜くには、そこに気が付くのかどうかなのだと思います。
いつ、どんなタイミングで気が付くのか、なのだと私は思うのです。