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Episode 774 本心を言うのが苦手です。

「メディアミックス」とは異種の媒体を複数用いて作品を広告する手法でして、漫画やゲームのアニメ化やアニメの漫画・ゲーム化等がこれにあたる…なんて、最近は常識なのですよね。
話題のマンガ作品がアニメ化され、マンガの読者以外にもファン層を広げていく…というのは、今や「普通」のことなったワケです。

こうして月に一度 Autistic(自閉の民) 的な「フリーレン」深掘りを展開している私が、「葬送のフリーレン」という作品に触れたキッカケも、実は原作ではなくアニメの方だったワケで、メディアをクロスオーバーすることの凄さを、改めて感じているのです。

さて…その「フリーレン考察」、今回はその7回目、テキストは原作マンガ単行本の第7巻です。

例によって第7巻の内容をザックリと…。
北側諸国の魔法都市オイサーストで行われた「一級魔法使い選抜試験」の第三次試験で、受験者それぞれの一級魔法使いの合否が最終的に決まります。
そして、フリーレン一行は再び魔王城のある大陸北部のエンデを目指して旅立ち、その途中で北側諸国の城塞都市ハイスに立ち寄るところまでが描かれます。

因みに、TVアニメ版のフリーレン (第1期) は、この第7巻の途中まで…オイサーストを後にするところまでが描かれていると、補足しておきます。

前回までの「フリーレン考察」は、主に主人公であるフリーレンに見る Autism(自閉) 資質についての考察で、魔族に対する Autism(自閉) 資質の否定を一部含んでいました。

詳しくは、私の「フリーレン考察」をまとめたマガジンの方を見ていただくとしてですね、私はエルフという長寿な種族が持つ特異性が、Autism(自閉) 資質に大きく関わっている…と思っているのです。
それ故に、既に物語に登場している3人のエルフ…フリーレンのほかに、モンクのクラフト、大陸魔法協会創始者の大魔法使いゼーリエにも、多かれ少なかれ Autism(自閉) 資質があるだろうと、私は思っているのですよ。
そこで今回は、大魔法使いゼーリエに焦点を当てて見よう…と。

ゼーリエはちゃんと覚えている。
自分の弟子にすら素直に気持ちを伝えられないんだ。
本当に子どもみたいな人だよ。

魔法都市オイサーストにて、フリーレンの言葉

一級魔法使いに与えられる特権の授与会場で、フリーレンはゼーリエの弟子である老齢の一級魔法使い、レルネンと出会います。
レルネンの思いは、「エルフという長寿の種族であるゼーリエの育てた弟子である私が、歴史に名を刻むことなくこの世を去れば、ゼーリエは何をしたのか説明できる証拠がなくなる」と言うことでした。
だから、「魔王を討った伝説の『勇者パーティー』の魔法使いであるフリーレンを屈服させた」という爪痕が欲しかった…と。

でも、フリーレンは「それはゼーリエの本心ではない」…と、取り合わないのです。

一部の Autistic(自閉の民) は現実社会において、ギフテッド(2e)と呼ばれる特定の分野に高い能力を有する一群がいて、能力が高い一方で「他者視点の欠如」という自閉の本質も持ち合わせる故に、twice exceptional (二重に特別=2e) とされるワケです。

私達はそれを百年後にやっても二百年後にやってもいい。
千年ほったらかしにしたところでなんの支障もない。

フリーレンの回想より、ゼーリエの言葉

先に書いた通り、フリーレンやゼーリエはエルフであり、純粋な意味で Autistic ではないのですが、そのエルフ独特の時間感覚が人間とは違う思考をもたらすことになったワケです。

フリーレンの時間感覚は人間のそれとは全く違うもの…という点がフリーレンの性格を作る大きな要素になっているのだと思います。
人間とは時間感覚が違うが故に、「知る」と言うことに対しての優先度が自己優先的になりがち…何しろ時間は無限にあるものですから、「何が優先か」もまた人間とは異なるのでしょう。

note記事「親近感を感じます。」より

その長い期間の修練により、ゼーリエもフリーレンも絶大な魔力を持つ大魔法使いとして成長したワケですが、それと人間とは違う時間感覚ゆえの 「見掛けAutistic」、さらに「見掛けギフテッド(2e)」を有することは、魔法使いとしての成長自体と無関係なワケです。

ヒンメルの死というキッカケを得たフリーレンは、人間の気持ちを理解する旅に出る…が、この物語の主題です。
一方のゼーリエは、どうでしょう。

ごく一部の Autistic は、そのコミュニケーションに難があっても、特定の分野に突出した能力があるが故に、社会的成功を収める人がいるようです。
そうですね、イーロン・マスク氏みたいな人…とでも言いましょうか。
そのスタンス、そのスタイルでやって来たからこその成功であれば、そのスタンスやスタイルは変えにくいし変える必要もない。

つまり、大陸魔法協会の創始者であり、全ての魔法使いの頂点立つ絶対的な権力を握る「生ける魔導書」であるゼーリエは、フリーレンが得たキッカケを、未だに掴めていない…と。

そう考えると、ゼーリエの弟子に対してさえおぼつかないコミュニケーションと、本心のギャップが見えてくる…でしょう?
つまり、フリーレンを「自覚した2eギフテッドタイプの Autistic」と仮定すると、ゼーリエは「未自覚な2eギフテッドタイプの Autistic」と見て取れるワケ。

ゼーリエの、弟子にすら表現できないその寂しさは、弟子を取ったことを後悔したことがない…というフリーレンに対しての告白に表現されるのでしょう。

フリーレンは大陸魔法協会を「出禁」にされるのですが、それもゼーリエの本心か?
レルネンが刃をフリーレンに向けたことは、ゼーリエの本心か?
そのコミュニケーションの未熟さに、自閉味を感じてしまうのは、私だけではないと思うのです。

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