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Episode 806 「自助の効果」を知るのです。

私が Autistic(自閉の民) だと診断されたのは、私が44歳の時でした。

1970年生まれの私…。
時代背景もあったのでしょうが、私が「発達障害」という概念と出会ったのは Autistic の診断を受ける直前のことでして、「AS"D" (または発達障害) かもしれない」と思い始めるまでは、私は私自身を「ふつうの人」と思っていたのですよね。

ところで、発達障害者が「自分は発達障害者である」と自覚するのは、とても難しいことなのだ…と、私は思っています。
何故ならば、発達障害は先天的なものであるから…後天的に「なってしまった」ものではないからです。
自分自身の中には、事前と事後みたいな比較の対象がないのですよ。
私にとっての「ふつう」は、他所から見て「魔訶不思議」であっても、私の「魔訶不思議」にはならないのです。

それは数年前に、私が書いた「発達障害者の自覚の難しさ」についての記事で記した通りなのです。

自覚した大概の人は、漸くたどり着いたひとつ目のポイントである「発達障害の自覚」の後に立ちはだかる、「では、どうしよう…」という壁にぶち当たるワケです。

そこに登場するのが「自助会」なんですよね。
困りごとや悩みごとを話して聞いて…を繰り返す内に、自己理解が深まり、新たな気付きやキッカケを得て、生活や精神状態が改善したりする効果が期待されるワケです。
もちろん、この効果は個人の資質や生活環境の影響から、皆に一律に享受されるものではないのですが、このような効果があると信じて、自助会は運営されるワケですよ。
少なくとも、私はそう思っています。

前回・前々回の記事で私は、行政は新規/新興の産業や事業の支援が苦手なのだ…と指摘しました。

行政の「苦手」を指摘して批判しても、解決にはつながらないのだと思います。
それならどうするか…。
行政が意見を聴きにくる状況を作るのが手っ取り早いだろう…と、私は思います。

note記事「私が先に動くのです。」より

この記事に書いた内容は、私の体験として身に覚えのあるコトなのですよね。
何と言いましょうか、私が Autistic の診断を受けて自覚して、「さてどうしよう…」と、思った姿と行政の姿がダブって見えるのですよ。

私はよく自助会で、「私の得意 (できること) と苦手 (できないこと、またはできるけど疲れること) をできるだけ多く書き出してみよう」というハナシをします。
実はこのハナシは自助会の大先輩である「さかいハッタツ友の会」の石橋尋志(@ihi1484) さんの言葉の受け売りなのですけどね、自己理解を進める上で、「自身の得意と苦手の把握はとても大切な事」だと理解する、簡単で分かりやすい方法のひとつとして、このお話しさせていただく事が多いのですよ。

自分自身の得意なことと苦手なことを棚卸しして、できることはやれば良いし、できないことや苦手なことは、「苦手/できない」を抱えて、さてどうしようか…を考えるワケです。

できないから…
できるよう練習するのもひとつの手。
他の方法を探すのもひとつの手。
できる人に支援を求めるのもひとつの手。

それぞれの個人にはそれぞれの能力があって、あの人ができるから私もできるとは限らないのですよね。
その自分に出来そうか…の判断もまた、大切だったりします。

そんな中に、上手くいく方法を上手な人に尋ねるとか、上手くできる人と合流して一緒にやるとか、上手くできる人に投資して支援してもらうとか…のように、他者との協働でコトを乗り切るという方法があるのですよ。

改めてもう一度。
日本の行政は、新規/新興の事業の投資や支援が苦手な場合が多いのです。
その理由は指摘した通りです。
ところで、行政は自分たちの「苦手」を明確に自覚しているのでしょうかね…。

行政が、自らの苦手分野の棚卸しをして、苦手を認めたならどうなるでしょう。
恐らく、自助会で私が経験したことと同じように、できる人にやり方を聞き、相談し、できないことは出来る人に支援を求めることを考えるのではないか…と。

国や地方の公務に就かれている方々は、日々の業務を誠実にこなされているのだと思います。
ただ、組織としての苦手があるゆえに、施策が的外れになっているケースも…恐らくあるのだと私は思っています。

ならば、何が必要か…です。
苦手を把握して、組織の中だけで考えずに、現地の先駆者に意見を求めること…現場の声に耳を傾けることが必要なのではないか…と。

「私たちのことを私たち抜きで決めないで」
(Nothing About us without us)

「障害者の権利に関する条約」より

これは2006 年に国連で採択され、2014年に日本も批准した国際連合の人権条約、「障害者の権利に関する条約」のスローガンです。

自らを見つめ、自己理解を深める自助会の活動スタイルは、実は「個人の自助」だけでなく、「組織の活性化」や「適切な施策の実現」に大いに役立つように思うのです。

自助会に参加することで得るものは、自助会が対象としている事象だけではなく、自助会という集いが持つ機能そのものに気が付くことでもあるのかもしれません。

レイさん(@wagonthe3rd) のこのポストの通り、当事者が能動的に集まる場所に赴くことが、当事者であろうとなかろうと、とても大切なのだと思うのです。

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