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Episode 807 現場のヒントが満載です。
最近はスマホによるネット検索の最上位に、生成AIによる回答が載ることが多くなりました。
「事件は会議室」と入力して検索すると、生成AIは以下のような回答を即座に出してくれました。
「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」は、映画「踊る大捜査線 THE MOVIE」の名セリフです。
このセリフは、織田裕二演じる青島俊作が警察官僚に怒りをぶちまけた際に叫んだものです。
このセリフは、会議室から口先だけの指示を送られても、現場には現場の判断があり、現場を知ることこそ事件解決の本筋であることを物語っています。
はい、絵に描いたような模範回答です。
正にそのようなことを言いたくて、「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」というセリフを、私は引っ張り出したのですよ。
別の表現では「現場百遍」…でしょうかね。
事の本質を理解するためには、書物や理論だけではなく、実際の現場を何度も何度も訪れるべきだ…という過去の教訓もあるのですよね。
ではここで、実際のところ「現場」に入って「事の本質」を見極めることは、どのくらい可能なのか…という質問をしたら、どうでしょう。
何に注目したら良いのかわからない状態で現場に入ってみたところで、何も理解できないのだと思うのですよ。
必要なのは、現場で何を見るべきなのかわかっている「知識と技術」なのです。
刑事さんの言うところの「現場百遍」は、刑事としての知識と経験があってこそのハナシなのですよね。
当然、それは刑事事件の現場だけに言えることではなく、その他の領域においても同じことが言えるのだと、私は思います。
例えば、それこそ私のような Autistic(自閉の民) について、Autism(自閉性) についての知識がないあなたが私を観察して、何かの違和感を感じつつも、何が原因でどのような事象となって言動に違和感が表れるのか、具体的に説明できるか…と言ったら、先ず不可能でしょう。
「現場百遍」を言葉通りに実現しようと思うのなら、現場で観察する上でチェックしなければならないポイント、その視点を作り出す知識と技術が必要だと言うことです。
さて…。
私のような「(Autisticを含む) 発達障害者」は、医師によって診断されるワケです。
そして公認心理師/臨床心理士の方々からカウンセリングを受けたり、学校の教師や生徒たち、職場の上司に部下に同僚との社会性を伴った協働活動があったり、家に帰っても家族とのコミュニケーションがあったりするワケです。
そうやって多くの人々と共に社会生活を送る中で、私と関係するどれだけの方が発達障害に関しての専門的な知識を持ち合わせているのか…です。
刑事さんの現場百遍は、刑事さんの捜査活動に於いて完結するハナシです。
では、私のような Autistic については、どうなんでしょうかねぇ…。
私と関係することによる Autism 由来の行き違いやトラブルの全てを、医師や心理士(師) などの皆さんの専門性を駆使して現場百遍を実践…できるとは思えないのですよ。
そうすると、専門性が薄くても何とか解決策を見つけなければならない状況が、必要に迫られて発生することになるワケです。
前回の記事で私は、自助会という集会に参加する効果について、私の思うところを書きました。
自助会は「困りごとや悩み」を持ち寄り、自己理解と解決をヒントを掴む場所…と言うのが私の認識です。
その「困りごとや悩み」を持ち寄り語るために必要なのが言語化能力で、自助会で聞き、そして話していると、自然と考えが整理されてレベルアップしていくものなのだと思います。
そうやって言語化された困りごとを聞き、言語化して悩みを話す内に、自己理解が深まる…が自助会の効果のひとつなのですが、別の視点から言うと、自助会は現場の困りごとや悩みが、現場の当事者によって言語化されて集積される場所なのですよね。
ところで、現場百遍には知識も技術も届かない、それでも問題に直面するあなたは、その解決のために何をしますか?
これを「誘導尋問」と見るのなら、自助会の効果を甘くみているように感じます。
見方によって「自助会」は、当事者が日時を決めて集まり、わざわざ現場の出来事を咀嚼して言葉にして表現してくれる場所…とも言えるワケです。
私のような Autistic と遭遇して、その違和感から上手く対応できなくて困っている Allistic(非自閉の民) の皆さんがいることは重々承知です。
だから、上手く行く方法を Allistic のあなたも探って欲しいと思います。
自分ひとりでは見出さなかった「現場で活かせるヒント」が、自助会にはゴロゴロ転がっているのだと思います。
今回は見つからなくても、次回の話題では見つかるかもしれない。
自助会に継続参加する効果とは、きっとこういうことなのだと、私は思うのです。