見出し画像

Episode 392 「チン」を抱えて生きるのです。

私の実父は昭和13年(1938年)生まれの81歳、今年82歳になります。
小学校ではなく国民学校に入学した最後の学年、戦時教育を実地で経験した最後の学年です。
親父はその辺りの話をむかし話で詳しく語ることは…ありません。
そんな親父がむかし話で語ることと言えば、野球の話。

親父が野球をやっていたワケではありません。
ただ時代背景として、盛り上がるスポーツの種類が限られていたいた時代の話です。
今でこそラグビーで "ONE TEAM" が話題になり、サッカーがW杯に6大会連続してワールドワイドで活躍する選手が続出、スキージャンプで高梨沙羅選手や小林陵侑選手が大活躍して…とまぁ、野球以外で盛り上がること数多いワケですが、その時代はそうではなかったのです。
親父が青春時代を過ごした1960年代を揶揄する言葉に「巨人・大鵬・卵焼き」なんてのがありまして、メジャーなものの代名詞に野球と相撲が入ってくるワケですよ。
そのくらい、世界が狭かった時代だということだろうと私は解釈しています。
だからと言って、それが面白くなかったのかと言えばまた違う話。
親父は数少ない娯楽の中でプロ野球に面白さを見いだしていたのだろうと思います。

私が今住んでいる日本海側の政令指定都市(当時は合併前の町だったのですが…)出身の親父、球団を持たない地方都市では、人気があるものを好きになる主流組と、判官贔屓のアンチ組ができるのはよくある話でして、典型的なアンチ組だった親父はタイガース贔屓。
そんな親父がね、今でも言うんですよ…吉田義男選手の話。

阪神タイガースの永久欠番「23」。
今牛若丸と言われ「捕るが早いか投げるが早いか」と称賛された、歴史に残る遊撃手。
時代背景的にこの表現はかなり古い…けどねぇ、すごく見えるんですよ…軽やかな身のこなしが。
五条大橋の弁慶とのやり取りで「ひらり」と欄干に身をかわしたとされる牛若丸、そんな遊撃手がボールを捌く様…瞬きする間に一塁に送球される華麗な守備ってとこでしょうねぇ。

2019年のM-1王者はミルクボーイ、面白かったですねぇ…あの「コーンフレーク」のネタ。
間髪入れないあのスピード感あふれるしゃべくり漫才。

どちらにしても名人芸の類とは、会話や動作にムダがなくて滑らか…それを人は「板に付く」というのでしょう。

その一方で、「トンチンカン」と言う表現がありまして…鍛冶屋の正しいリズムが「トンテンカン」なのに対して調子外れな様子を現すのです。

人間は日々の営みの中で「トンチンカン」を「トンテンカン」に変える努力をするのだと思います。
私はその営みの中で、どうしてもできない「チン」を抱えてしまった…。
それが、見る聞くの精度の低さという「性質」です。

ボールは良く見えているのに、イメージばかりが優先して取る前に一塁送球の動作に入ってしまう…なら、それは傍目には「エラー」ですよね。
「それはコーンフレークやがな!」って、コーフレークじゃないボケで突っ込んでしまう…。
確実に答えを返そうと思えば、一塁への送球でもたついてアウトに出来ないか、漫才のネタにならないほどの間が出来る。
そういうことが無くならないということです。

ポイントはね、その「チン」を自分自身で把握して認めるということなのです。
残念ながら、私はどんなに努力してもM-1の王者にも吉田義男氏のような遊撃手にもなれません。

比喩する表現を変えて、何度も言いますよ。
in ではなくて、on
定型者の社会(≒世の中)といかに接続するか、という大命題をみんなそれぞれ抱えているんだと思います。
私は、無理矢理 in してストレスを抱えるより、違う部分があることを認めて、必要なところが必要な時に on できればいいのではないかと、感じるのです。

その為には、まず自分自身が発達障害をもっている…と、劣等感なく自覚することが重要だと思うのです。

あけましておめでとうございます。
今年が皆さんにとって、最高の一年でありますように。

旧ブログ アーカイブ 2020/1/3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?