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「佐藤可士和展」に行ったらお風呂に入るのが楽しみになった話

先日、国立新美術館でやっている「佐藤可士和展」に行ってきました。

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もともとそこまで佐藤氏について詳しいわけじゃないけれど、なんとなく大手ブランドのロゴデザインやブランディングをやっていることは知っていたので興味本位で覗いてきました。

今回の展示はこれまでの佐藤氏の代表的な仕事を辿りつつ、その中でどんな考えに至り、そしてどこを目指しているのかというのを伝える「かなり凝った自己紹介」のようなコンセプトだったように思います。

もはやポップアートの世界に突入しているような洒落た展示会をくぐり抜けて外へ出たとき、私は一刻も早く「お風呂に入りたい」と足早になっていました。

ド肝を抜かれるSMAPの宣伝

最初の方のブースでは、これまでブランディングを手掛けてきたアーティストや商品に関する展示がたくさん並べられていました。壁いっぱいに作品が広がっていて圧倒されます。

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その中でもとりわけ面白かったのがSMAPの広告。アイドルの広告は基本的に顔や全身が写っていることが前提となりますが、佐藤氏はあえてSMAPのメンバーを一切登場させませんでした。

その代わり、赤・緑・青で構成されたシンプルかつインパクトの大きいデザインで道行く人々の注意を惹く戦略を用いました。

当時はスマホもSNSもなく、メディアといえばTVが主流でしたが、この頃から佐藤氏は「メディアはTVだけじゃない」と考え、渋谷の街全体を宣伝の媒体として活用しました。

ポスターやモニターだけでなく、車や自動販売機、ゴミ箱さえも媒体としたそうです。

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※↑こちらの写真は展示会にはありません。

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※↑こちらの写真は展示会にはありません。

今であればSNSでかなりバズりそうな手法ですが、実際当時も相当話題になったそうです。佐藤氏はこの頃から時代の先を読み、広告の本質を見つめ続けてきたことが分かります。

その取り組みは、パフォーマンスアートなどを彷彿とさせ、もはや芸術家の域にまで達しているかもしれません。

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あの国民的アイドルの広告を任されて、他の誰がこんなデザインを思いつくでしょうか?

視覚的な情報を極端に少なくしたことで、むしろ絶対忘れられないような印象深さを生んでいます。

ブランディングは、丸ごと伝えずポイントで刺す

続いて展示されていたのは、これまで佐藤氏が手掛けてきた企業のロゴデザイン。

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驚くのは、どのロゴもシンプルでありながら強烈に記憶にインプットされることです。

一見、誰でも作れそうな単純なデザインでも相当緻密に計算されていることが分かります。

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なぜこんなデザインを描くことが可能なのだろうか?

佐藤氏による展示の解説にそのヒントが隠されていました。

ブランディングにおいてメッセージ開発していく上で、最も陥りがちな悪手は「全情報を網羅的に伝える」ことだ。それはブランドに何ら新しいイメージを付加しない。新しい動きを生み出さない。
広告は「説明」ではない。明確な意図を持ったメッセージでブランドに明確なイメージを築き上げていくものだ。そのためには、網羅発想ではなく、特定のポイントに焦点を絞ったメッセージ設計が必要となる。

つまり、受け手に強烈なインパクトを残すためには、やみくもにすべての情報を与えるのではなく、明確にインプットしたいポイントをもって刺すということなのです。

これは広告だけでなく、小説や絵画などの芸術、ひいては私たちが普段行っている他者へのセルフブランディングにも通じるところがありますね。

たしかに自己紹介の場面でも、これまでの経歴を長々と話すより、インパクトのあるエピソードを一つ語ったほうが断然記憶に残りやすい気がします。

この考え方は、今回の展示会で得られた一番の収穫でした。

ちなみに、この展示会が開催されている国立新美術館のロゴも佐藤氏がデザインしています。

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今治タオルは、なぜ外国製の安いタオルに負けないのか

そんなこんなで企業ロゴのエリアを歩いていると、見慣れたあのロゴのポスターが目に入りました。

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おなじみ、愛媛県の今治市で作られている「今治タオル」です。このロゴも一度見たら絶対に忘れない素晴らしいデザインですね。

そしてこのポスター、近づいてよく見てみると....

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なんとタオル生地で出来ていました。これには驚きました。というかこんなにでかいタオルを初めて見ました(笑)。

今治タオルといえば、その品質の高さから世界中で名を知られているブランドですが、そのブランディングを担ったのも佐藤氏でした。

佐藤氏が初めて今治タオルのブランディングを任されたとき、今治タオルは外国製の安いタオルが大量に流通したことから窮地に立たされていたといいます。

今治市のタオル製造会社は数え切れないほど倒産していたそうです。

そんな中、仕事を受けた佐藤氏が今治タオルをはじめて使ってみたとき、衝撃を受けたそうです。手触りや吸水性が他のタオルと格段に違っていたからです。

今治タオルの品質の高さを知った佐藤氏は、タオルのロゴだけでなく、品質管理の基準も提案したといいます。

今治タオルは、独自の品質基準を設けています。たとえば「5秒ルール」。タオル片を水に浮かべたとき5秒以内に沈む、メーカーが加盟する組合が独自に設けた品質基準のひとつです。

そして佐藤氏のブランディングの手助けもあり、今治タオルというブランドは無事躍進を遂げることができたのです。

私はこのエピソードにとても感動しました。日本の職人が作った最高のタオルが、外国製の安いタオルに負けることなく打ち勝った。今治タオルの復活劇は、これからの日本にとって大切なことを教えてくれている気がしました。

展示を見終わったとき、私は今治タオルを使ってみたくて仕方ありませんでした。お恥ずかしながら、実はこれまで一度も使ったことがなかったのです。

帰ったら通販かどこかのお店で買おうかなーと思っていたら、やはり広告の天才。出口にこれまでタイアップしてきた企業とのコラボ商品が山のように売られていました。

ユニクロのTシャツやオリジナルデザインのGショック、そして今回の展示会のために作られた今治タオル。

今治タオルあるじゃん!

私は興奮して速攻でレジに持っていきました。タオルはいくつかのサイズがありましたが、私はバスタオルを買いました。5500円でした。こんなに高いバスタオルを買うのは初めてでした。

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そして美術館を出る頃には早くお風呂に入って、今治タオルで身体を拭いてみたい!とワクワクしていました。

寄り道せずにまっすぐに家に帰り、速攻でお風呂に入りました。

普通なら新品のバスタオルは一度洗濯してから使いますが、この日は我慢できませんでした。

お風呂上がりにさっそく今治タオルで身体を拭きました。

なにこれめっちゃ肌触りいいじゃん。しかもめっちゃ水吸うじゃん。

私は予想を裏切らない高品質さに、ただただ感動しました。これまで使ってきたタオルはなんだったのか、そう思わせるほどでした。

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というわけで、私は「佐藤可士和展」に行ったらお風呂に入ることが楽しみになりました。

全く想定していないことでしたが、良い経験になりました。

ちなみに佐藤可士和展では、私が撮影したものの他にもたくさんの作品があります。

こんなご時世ではありますが、興味のある方は一度足を運んでみてはいかがでしょうか。


大事なお金は自分のために使ってあげてください。私はいりません。