【2023年1月】今月の面白かったジャンプ+読み切り
はじめに
蛍火くじらです。
今年から毎月末にその月の面白かったジャンプ+の読み切りをまとめていきたいと思います。理由は昨年末に行った「ジャンプ+2022年ベスト読み切り選考会」で1年分まとめてチェックするの普通にゲボきつかったからです。あと上記の選考会のまとめnoteはもうそろそろ出します。がんばるます。
では、早速ですが以下に1月の良かった読み切りをまとめていきます。個人の感想なので参考程度に読んで頂ければと思います。また、これが各作品を読むきっかけになれば幸いです。
1.初恋:西尾拓也先生
昨年のベスト読み切り選考会でも「赤と白」でノミネートした西尾拓也先生の新作読み切り。ケンカに明け暮れる男子中学生が音楽教師に初恋をする……というめちゃくちゃ「どこかで読んだことがあるような……でもよく考えたらそんな作品ベタ過ぎて読んだことないな……」なラブストーリーになっている。
西尾先生の特徴は「線が少ない」ということ。キャラクターを含む漫画に登場するあらゆるものを最低限の情報量で描き、書き込みが評価されやすい現在では非常に稀有な表現力を持っている。また以前の読み切りよりも表情の繊細さに磨きがかかった印象を受け、特に物語の最後に1コマだけ顔が出る女生徒は、その1コマの表情だけでキャラクターの内面が見えてくる。これからの活躍に期待大だ。
2.LIVE LIKE DEAD:藤崎立花先生
Twitterで9万いいねを獲得した「新宿LIAR♡GIRLS」の藤崎立花先生の新作読み切り。「新宿」では女性2人組の主人公を描いたが、今回はブラック企業勤めの社員(男)が動物園から脱走したブチハイエナの飼育を通して再生される物語を描いた。
藤崎先生の絵はとにかく「可愛い」が前面に押し出されているのだが、その可愛さが画面全体からいい意味で緊張感を取ってくれているのが強みだと感じる。主人公が自殺志願者であるにもかかわらず、物語が暗くなりすぎず、どこか安心して読むことができるのは藤崎先生の絵の魅力が持つ特長といえるだろう。
3.ギャルとキューブ:時田時雨先生
「赤面しないで関目さん」を連載していた時田時雨先生の読み切り。とにかくこの先生はキャラクターの好感度を上げるのが上手い。第一印象が悪くても大体読み終わるころにはキャラクターのことを好きになっているのがすごいところ。「赤面しないで~」でもなんとなく読み続けてたらいつの間にか毎週の楽しみな作品の一つになっていた。本作でもルービックキューブを通した主人公の成長(書いてて不思議なワードだけど事実だからしょうがない)が実に巧みに描かれている。さすが連載経験作家は違うなと思わせる構成だった。画力も連載中から着実に成長し続けているので、次作ではどんなキャラクターが描かれるのか非常に楽しみである。
4.さいごの宇宙船:田中空先生
This is SF。導入からとにかく読ませる力がすごい。「宇宙の果てはどうなっているのか?」「宇宙はどうできているのか?」というテーマは割とSFの中ではスタンダードだが、そのスタンダードを見事な筆致で描き切っている。というか「タテの国」といい「ドラゴンの子」といいもっと有名になっていいと思うんだよな田中先生……。SF未経験の漫画読みにはかなり衝撃を与えるのではないだろうか。なんとなくSF作品に触れていない、という方にぜひ勧めたい作品である。
5.文を綴る:海野久遠先生
「アフタースクールメイト」というジェンダーに切り込んだ作品をジャンプ+で連載していた海野先生の新作。ヒロイン・大塚が抱える秘密もまた強いテーマ性があるものの、作中に登場するあらゆる「テキスト」が非常に効果的に用いられている点がより強く印象に残る。書き文字、フキダシのテキスト、作中のキャラクターが書く文字……様々な文字が絵と張り合うほどの存在感を発揮しており、表現の幅がより広がったことが感じられた。
6.永遠のあるところで:苔庭けんと先生
今月の読み切りの中でも一際存在感を放っていた作品。前作は「苔の庭」という名義で「遠星」という作品を発表していた。
以前この作品を読んだ時もセリフのテンポなどから独特の空気が漂っていると感じたが、今作ではよりシナリオの厚みが増している印象を受けた。今作では「描いた人間を実体化できる」能力を持つ男と少女との生活を描いたのだが、最後までその大きな設定を生かし切った構成を感じさせる。2作品を見比べても絵はまだ模索の中だと思われるが、今後も短いスパンで多くの作品が掲載されることを期待したい。
おわりに
1月の個人的な注目作品は以上になります。来月以降もなるべく月末~月初に投稿できるよう努めるので、また読みに来てくれれば幸いです。
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