肥前文俊先生の『創ったものに対して自信がないという罪』を読んで
常日頃、「弱音は吐いてもいいけど、読者さまに顔向けできないような言葉だけは吐くな!」と己を戒めてはいるのですが、こちらの記事を読んで、「作家が自作に自信がないと言ってしまうことの罪深さ」を改めて感じましたので、自戒のために記事にしておこうと思いました。
わたしの場合、自作に対しての自信は、「売れた」か「良いレビューが多くついた」場合には昂るし、「売れない」か「あんまり反応がもらえなかった」場合には萎える、という塩梅になっております。
うん、よくない。よくないね。病むしね。下手すると書けなくなるし。
自作に全力で向き合ったか、自作が面白いと思っているか、自作愛があるか、という問いかけになら、「搾りカスみたくなるまで死力を尽くしたよ!」「面白いよ!」「愛してる!」と即答できますが、自信って……なに? と考え始めると袋小路に入るんですよね。
「確かに脱稿後の自分は一滴も出ませんってぐらい搾りカスだったけど、搾りようによってはもう一息二息頑張れたかも?」
「自分はこのネタを面白いと思って書いたけど、評価されなかった=面白くなかったってことなんじゃない?」
「自分の作品だから全部可愛いのは当たり前。でも、それぞれ異なる経緯で生み出されて、その中ですべての作品に同じだけの手をかけてあげられたか、悔いを残さぬ仕事ができたかって詰められたら、自信をもって『はい!』とは言えないかも…」
って考え出すときりがなくなってしまう。
プロである以上、どんなコンディションの時であっても、読んでいただいた方に一定以上満足いただける水準は必ず越さなきゃいけない。
商品として作品を書く以上、それは当然のことなんだと思う。
ただ、元々ネガティブ傾向の人がこれを近視眼的にゴリゴリ突き詰めていくと、誰にもそんなことは言われていないのに「傑作じゃなきゃ書いちゃ駄目!」みたいな呪いを勝手に自分にかけてしまって筆が止まる、ということもあり得る(あ、わたしのことです)。
作品は一人で作っているわけじゃないのだから、刊行していいレベルに達しているかのジャッジメントは担当編集者さんがしてくれるので、そこはあまり考えこまなくていいところなんですけどね。
肥前先生の記事では、自信を持つためにどうしたらいいか、どうしても自信が持てないときにはどうしたらいいか、という問いに対し、次のように答えてくださっています。
年に複数冊出している作家の方は、アイディアをストックしておくことはみなさんなさってると思うし、そうじゃないとあの頻度で本を出せないと思う。
そして経験上、何年か寝かせた熟成ネタの方が、当然ながら密度や完成度が上がる。
わたしの場合、充分に熟成したし書き頃だな! と思っていた企画が通らないこともあったりするので(涙)、バタバタとネタ帳をひっくり返し、まだアイディアレベルのものを急いでプロット化したものが企画として通ってしまって、いざ書こうとするとスカスカ…なんてことが起こったりする(滝汗)。
ネタの段階だと、ただの骨組みみたいなもので、キャラも棒人間同然です。それをプールしておくうちに、経験や見聞きしたものが吸着して、それによって惹起された思考によって物語やキャラが肉付けされて、厚みとか旨味とかが育っていく。
熟成大事。そしてアイディア(そこそこ熟成が進んでいて、大きくは外さなそうなの)を複数ストックしておくの、めちゃめちゃ大事。
精いっぱいで書いているのだけは毎度自信を持って言えるし、人の評価を自分でどうこうできない以上、最終的には持てる全てを使って書くしか方法はないんですよね。
そこに自分なりに一言加えるとすれば、その作品のために払ったコスト(資料を当たる、舞台になる場所に行ってみる、モチーフにしたものに実際に触れてみる、など)の下支えがあれば、少しは安心していられるし、いざ初稿に向かった時にも書きあぐねることが少なくなるのかなと感じます。
肥前先生も、
と書かれています。
試験勉強と同じだ! 準備が充分にできていないと不安で焦ってしまって手につかなくなったりするし、穴だらけの答案を前にして自己嫌悪で落ち込んでしまうけど、自分なりにベストを尽くしたという自負があれば落ち着いて臨むことができるし、これだけやったんだからいい結果じゃなくても悔いはないな、と思うことができる。
結果を聞くのはどんな時でも怖いし、頑張ったのに思う結果を出せないとがっかりはするんですけど。
今回取り上げさせていただいた記事を読んで、プロットを詰めておくことの重要性が一層身に沁みました。
プロットの段階でどうにもなってないものを、初稿の段階でどうにかすることなんかできないんだからね、わたし! わかったらちゃんとしといてね! と未来の自分から発破をかけられたので、今書いてる最中のプロット頑張ろう…と思いました。
※こちらの記事は「my favorite」マガジンに入っています。お気に入りの記事や本を収容するマガジンです。少しずつ記事を増やしていきたいなと思っています。
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