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【チェス】王道の古典定跡を識る-5-
こんばんは。B.です。
チェスと将棋とアニメとゲーム。そんな趣味で自由気ままに生きてます。Xはこちら。フォローしてくれると喜びます。最近はもっぱらリバース:1999というゲームにハマっています。ツラい仕事ともに生きてます。
・・・と。柄にもなく自己紹介チックなことを書きたくなりました。本題はここから。今日は王道の古典定跡シリーズです。前回までの4回分の記事で「イタリアン・ゲーム」の定跡についてみてきました。今回からしばらくはこちらも王道中の王道、チェスを指す人で知らない人はいないだろうという定跡。「シシリアン・ディフェンス」についてみてみます。
「シシリアン・ディフェンス」、特にオープンシシリアンと呼ばれる進行の定跡は、一般的な例として、以下の手順で進みます。
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1.e4 c5 2. Nf3 d6 3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6 5. Nc3
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不利とされている黒番の勝率が高く、比較的指される頻度も高い定跡のため、勉強しておかねば、と奮い立った次第です。
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いきなり1手目から黒がe5と指す狙いはなんなのでしょうか。これは、次の白d4の手を牽制し、中央のポーン支配の圧力を緩和するとともに、白がキングサイドから攻めてくるなら、反対に黒はクイーンサイドから攻めればいいじゃない、という至極明快な理屈から成り立っています。ジオッコピアノに代表されるように、e4-e5進行は対称形になりやすいので、敢えてそれを崩すといった狙いも含まれているようです。
クイーンの道が開くのも魅力的です。互いに攻め合う攻撃的な変化になりやすいのが特徴で、ピースの利きを生かした戦略がとりやすい盤面となります。
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3手目でポーンブレイクが発生するため、白のdファイル、黒のeファイルがセミオープンになるので、このような進行をオープンシシリアンと呼んでいます。「シシリアン・ディフェンス」はそのほとんどが<第2図>のようなオープンシシリアンの形で進行していくとされています。
オープンシシリアンのポーン構造の特徴として、黒はd6のポーン、白はe2のポーンが弱点となりやすく、互いに急所のポーンを狙うような手を指し、ピースを展開していきます。
実は、2手目白がNf3と指した<第3図>の盤面では、黒にはさまざまな応手が考えられますが、手順前後で同じ局面にトランスポーズすることが多く、「シシリアン・ディフェンス」は、定跡の暗記ではなく、意図や特徴に着目して考えるほうがよいです。
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その中でもd6は統計的に最も多く指されており、e5のマスを牽制することで、白がポーンを突いたり、ナイトを展開したりすることを抑えています。
4手目黒Nf6とした場面で、仮に白がf3と指してポーンでe4のポーンをサポートしようとすると、黒はそれをとがめていくことができます。黒e5、白Nb3、黒d5と続き、黒のポーンが中央を支配できるのです。
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というわけで、白は5手目、Nc3としてナイトでe4のポーンをサポートする手を選びます。これで、冒頭に手順で紹介したような盤面となり、オープンシシリアンで最も指されている変化となります。
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ここから、5手目の黒の応手は大きく分けて4パターンあり、どれも有力な手筋です。それぞれに定跡名がついており、次回以降の記事では、4回に分けてひとつひとつの応手を取り上げてみたいと思います。
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「シシリアン・ディフェンス」は、黒番をもったときにでも十分に勝ちを狙いに行ける攻撃性が魅力であり、初手白がe4と指してきた場合に、こちらがc5と返すだけで、オープンシシリアンの変化に誘導できる点がほかの定跡と比べてもこの変化の発生率を上げています。
次回は、5手目黒g6と指す、一番ポピュラーな応手のドラゴンバリエーションについてみてみましょう。
―B.―