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【チェス】王道の古典定跡を識る-6-
さて、前回の続きから。前回の記事はこちらからどうぞ。
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「シシリアン・ディフェンス」の最も一般的なオープンシシリアンの変化についてでした。オープンシシリアンとなった上記の盤面において、5手目の黒の応手としてはおおよそ4パターンあり、今回の記事では、その1つであるドラゴンバリエーションについてみていきます。
ドラゴンバリエーションは5手目黒g6と指す応手です。
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この手の狙いとしては、f8のビショップの展開先が2つのポーンによって阻まれているため、フィアンケットして活用するという点にあります。
しかし、ポーンの構造に着目すると、相手がつけいる隙を作ってしまっている、いわゆるホールがあり、白は次の手でこのポーンの構造をとがめてきます。
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多くの場合、白はこのホールを狙うユーゴスラブアタックを仕掛けてきます。ユーゴスラブアタックは、白Be3とビショップを展開し、h6のホールを狙う応手です。白は次にクイーンを重ねることもできます。
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黒は予定通りに黒Bg7とフィアンケットをしますが、この手に対して白はf3と指し、e4のポーンをサポートする。典型的な進行としては、黒がキングサイドキャスリングをする手にたいして、白は狙い通りQd7とクイーンを重ねて、キングサイドからポーンストームを仕掛けることで黒のキングを追い詰めていくことを目指します。
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対して、黒もフィアンケットしたビショップを活用してピースを展開していき、中央支配からのカウンターを狙います。
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互いに激しい攻め合いとなる攻撃的な盤面になりやすいのがドラゴンバリエーションの特徴です。
この後の手順としては、一例として以下のように続きます。
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8. …Nc6 9. O-O-O d5 10. exd5 Nxd5
11. Nxc6 bxc6 12. Bd4 e5
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黒はビショップの強力な斜線を維持しつつ、中央を支配しながらカウンターを狙います。評価値はやや白優勢ですが、黒もまだまだ戦える盤面です。
さて、次回は2つ目のパターンであるクラシカルバリエーションをみていきます。こちらは近年あまり指される傾向にはない応手ですが、研究しておく価値はきっとあるはずです。
―B.―