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【チェス】王道の古典定跡を識る-9-
さて、―この前置きも常套句になってきたが―「シシリアン・ディフェンス」の変化について4パターンに大別してみてきた。今回は、オープンシシリアンのなかでも最も指されやすく、人気の高い変化として有名な5手目黒a6と指すナイドルフバリエーションについてみていく。
・・・とはいったものの、ナイドルフバリエーションはさらに大きく6パターンに分岐し、複雑な変化になりやすいことが特徴である。今回の記事では、ナイドルフバリエーションの分岐のなかでも最も指されている変化について取り上げる。
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黒a6と指す狙いとしては、白のBb5+やNb5を牽制することにある。また、「シシリアン・ディフェンス」の基本理念である、クイーンサイドからポーンストームを仕掛けるという点も、次にb5とポーンを突くことによって、同時に狙っている。また、b5のポーンをプッシュすることで、ビショップをフィアンケットする形にもなっている。
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このように、ナイドルフバリエーションはさまざまな狙いが込められた実に合理的な一手で、黒の攻撃の手筋の一部でもあることから、この応手が選択されることが多い。
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黒の根本的な目的は、e5のポーンをプッシュして中央支配を取り戻そうとすることにある。しかし、a6を挟まずに、いきなりe5とポーンを突いてしまうと、黒はポーン構造が乱れ、ホールを白に狙われて不利な盤面になる。白マスからのビショップチェックが厳しい一手となるのである。それゆえに、先にBb5+を牽制しておくというのがナイドルフバリエーションの基本的な発想である。
また、黒a6は攻撃的といよりは、若干受動的な応手であるが、そのため、白の6手目の手に柔軟に対応しやすいということがメリットとして挙げられる。<第2図>のように、黒にはまださまざまな応手の可能性が残されており、白の出方をうかがってから最適な応手を選ぶことが可能となっている。
では、具体的に白が6手目どう指してくるかを考えてみたい。ここでは、冒頭でも述べた通り、大きく分けて6パターンの指し回しが考えられる。
〇イングリッシュアタック
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6手目に白Be3と指すイングリッシュアタックは、近年研究が進められており、最も人気のある応手である。白はクイーンサイドキャスリングをしてから、キングサイドにポーンストームを仕掛ける狙いを持っている。
それに対抗して、黒は白がクイーンサイドキャスリングをしてくることを見越して反対にクイーンサイドからポーンストームを仕掛けることを目指す。
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黒は6手目、中央の白の圧力を緩和するために、もとより狙っていた手でもある、e5とポーンをプッシュする手を選択する。白のナイトが攻撃されているため、ナイトを逃がす必要があるが、f5のマスに逃がす手では、黒Bxf5、白exf5と続き、ダブルポーンができてしまうため、黒が中央を制圧しやすくなる。
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そのため、ナイトの逃げ先として、白はb3のマスを選択する。黒は弱点となっている、d5のマスをサポートするために、Be6と指すが、それに対して、白はf3とポーンを突いて次のg4の手を準備する。
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続いて、互いに白はクイーンサイド、黒はキングサイドにキャスリングをして、<第6図>の盤面となる。
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この後の手順は一例として、以下の通りに続くこととなり、互いにポーンで直接相手のピースを狙うという激しい展開になる。互いに攻撃的なポーンストームを仕掛けることが特徴である。
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10. … Nbd7 11. g4 b5 12. g5 b4
13. Ne2 Ne8 14. f4 a5 15. f5 a4
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今回はナイドルフバリエーションの1変化であるイングリッシュアタックについてみてみた。次回以降の記事では、引き続きナイドルフバリエーションの変化について取り上げ、残りの5パターンについて考えていきたい。
「シシリアン・ディフェンス」→オープンシシリアン→ナイドルフバリエーション→イングリッシュアタックという定跡はまさに王道のものであり、一度研究しておく価値は必ずある変化である。
―B.―