見出し画像

あやとり家族⑩

おねしょはいけないこと?


病名にすると夜尿症。ももちゃんは物心ついた時から毎朝おねしょで起きていた。
お尻が冷たい、お布団が濡れている。
自分でも不思議だった。
毎晩、歯を磨いてトイレに行ってから寝るのに朝になるとお布団がびしゃびしゃ。
おしい日も何度もあった。それは、おしっこをしている最中に起きること。
あと少しだったのに、って思っても止めることがどうしてもできない。
そんなことを繰り返す毎日。お母さんの様子が日に日に変わる。

最初のうちは、子どもだから仕方ないと思っていたのか「あら、おねしょしちゃったのね」なんて言ってパンツを取り替えてくれたり着替えを手伝ってくれていた。
だけど、それがどんどん変わっていく。思い出すと今でも怖い。

その一つは雨の降っている日だ。
「またおねしょして!毎日毎日どうするのよ!雨降ってるいるしお布団干せないじゃないの!あー、やだ。おしっこ臭くなっちゃう」
と言いながら室内におねしょのお布団を干し始める。私の着替えは後回し。
自分でタンスを開けてパンツや洋服を探す。
私が選んだ洋服がよそ行きだったのか、それも気に食わない。
「それじゃない、こっち!」
ってそれも怒られる。
「ごめんなさい」って言うんだけれど返事があったかすら覚えていない。

あとはお父さんがいない日だ。
お父さんは仕事で毎日いないと思っていたけど、どうやらももちゃんたちが寝たあと夜遅く帰ってきていたようだった。朝も早く出かけることが多くてそれであまり会えなかったみたいだ。
お父さんがいると、あまり怒られないで済む。
「お父さんはすぐそうやって子どもたち甘やかして、いいわよね。子どもたちに好かれてずるいわよ」って言っているのも聞いた。
お父さんは「子どもなんだからしょうがないじゃないか」
で事を済ましていたが、実際におねしょ処理担当はお母さん。だからお父さんのこと”ずるい”って言ったんだと思う。

確かに父は育児はお母さんに任せていた。そういう鬱憤もあったのだろう。
朝起きた時雨が降っている音が聞こえると、お布団から出るのをやめるようになった。
わかっていた、どっちみち怒られることは。だけど「またやっちゃった」って自分から言う勇気はなかった。起きるのが遅ければお母さんがももちゃんを起こしにくる。子どもだったけどお母さんの心境は手に取るようにわかっていた。
私が起きてこない日は、ハンターのように一気に近づいてお布団を捲り上げる。そして一言「またおねしょして!」だ。

おねしょしたかったわけじゃない。
お母さんがいるときにトイレに行ったり、寝る前はお水飲まないようにして「お母さん、ももちゃんもうお水飲んでいないよ」ってアピール全開。
それでもおねしょは毎日続いた。そして何度も怒られた。
機嫌の悪い時は脱がせっぱなしで着替えさせてくれなかったし、謝っても許してもらえなかった。そんなに怒るなら、おむつでもつけてくれればよかったのに。

そんなおねしょは中3で、やっと卒業できた。

いいなと思ったら応援しよう!