あやとり家族35〜好きな男子はみんな双子の姉が好き〜
大事な友達が自殺した。やっぱり主役はすずちゃん。
女友達との交流は難しかったとはいえ、興味のある友達との交流は上手にできていた中高時代。
おしゃれしたりに興味持って、みんなとは違うちょっと大人びた雑誌を買っていた。
洋服のセンスも同年代とはちょっと違っていて。でもそんな自分が好きだった。
だけどそれも長く続けることは難しかった。
中学生の時、お兄ちゃんの友達が「お前の妹双子なんだろ」って物珍しそうによく見に来た。
色白だったすずちゃんは「白」、別に色黒でもないのに私は「黒」と呼ばれた。
容姿からもお嬢様気質のすずちゃんは”女”
私は”男っぽい”
と勝手にイメージされてしまった。
私は他の子と同じように、多感な時期をせめて女性らしくことが急に恥ずかしくなってしまった。
それからは、男らしく。正確に言うと女らしくするのをやめた。
長い髪をショートカットにして、スカートに憧れながらパンツスタイルに変えた。
それでも好きな男の子はできるわけで、告白すると「すずちゃんが好きで」と逆告白されてしまう。
すずちゃんが悪いわけではないけれど、
私からなんでも奪ってしまうすずちゃんが本当に嫌だった。
だって、自分のものは自分のもの。”ももちゃんのものも自分のもの”が当たり前のの中で育ってしまった性格だから。
高校に入って仲の良い男友達ができて親友になった。
すずちゃんを紹介したら、すずちゃんの方が気に入ってしまって毎日のように電話している。
彼は私と同じクラスだった。
すずちゃんとの仲が良くなっていくほど、彼は私に対する扱いが雑になっていく。
「すずちゃんって可愛いよね、ももとは違うよね」とか。
でも授業中のノートをとっておいて、とかそういう都合良いことだけは頼んでくる。
それでも自分が頼られているということが嬉しくて、一生懸命やったよ。
それで喜んでもらえるなら良いやって。
恋愛感情なんてなくて、1番話しやすい友達をとられた感じだった。
また我慢だ。家に電話かかってきても「お前じゃないよ、すずちゃんは?」って。
当時は携帯もないから、家電が当たり前だったから。
そんな風にあしらわれてもすずちゃんに代わってあげてさ。
でも、学校では同じクラスだから何かあると私のところに来て「就職活動しようぜ」って一緒に進路相談室に行ったりもした。
そんなこんなで結局お互いに友達として楽だったこともあって、卒業した後も連絡を取り合っていた。すずちゃんとは卒業後は連絡を取り合っていなかった。
就職して夜勤がある仕事に就いた。彼からの私に着信があったのは夜勤の日だった。気づいたのは翌朝。
折り返したが電話に出ない。
次の日、彼から電話があった。「横田の母です」と彼の母からの電話。
「リュウジが亡くなって」
自殺だった。
私以外にも色々な友達に電話をかけていたことが後からわかった。
私もその中の1人、たまたま夜勤で出られなかった。
リュウジのお通夜の時、すずちゃんは泣きじゃくって私が解放する。
泣きたいのは私だけど、また我慢する。
みんなすずちゃんの泣く姿を見て、動揺する姿を見て優しく接する。
羨ましかった。私も自分を表現したい。
だけどやり方が分からない。
一回も泣かなかった。
泣けなかった、みんなの前では。
帰ってから大泣きした。後悔もした、電話に出られなかったことに。