笑いあり涙ありの妖怪コメディ!「ブッキラによろしく!」
今回は、手塚治虫の隠れた名作「ブッキラによろろしく!」を紹介します。今作は1985年に「週刊少年チャンピオン」に連載された作品で、個人的には「ブラック・ジャック」や「三つ目がとおる」と同じくらい面白いと思うのですが、どうも取り上げられる機会が少なく、ファンとしては残念に思っています。なので、この記事で重いっきり布教します!
では、あらすじから追っていきましょう。
「東西テレビ」というテレビ局に、寝沖トロ子というタレントがいました。トロ子は、タレントとしての仕事もロクに出来なくて、セリフは噛むわ生放送中にカップラーメンを喰うわのえらい騒ぎです。こんなタレント、普通だったらクビになるのに、東西テレビはトロ子を使い続けます。
それには何か訳があるに違いないと思った三流ルポライターの間久部緑郎=通称ロックはトロ子の秘密を探るべく東西テレビのスタジオに乗り込みます。ですが、そこで小鬼のような妖怪に襲われてしまいます。
この妖怪こそが、テレビ局に取りつく妖怪、ブッキラだったのです。
ロックは捜査を続けるうちにトロ子と親しくなります。そして、ついにブッキラやトロ子の謎も明らかになります。ブッキラは元々東西テレビに取りついていて、様々な怪奇現象を起こしていたのですが、トロ子に出会い、トロ子と恋人関係になったことで、トロ子がいる時だけは怪奇現象を起こさなくなったのです。怪奇現象を防ぎたいばっかりに、東西テレビはトロ子を番組に出演させていたのです………
この作品の最大の魅力は、メインキャラ三名の個性の強さでしょう。
一応主人公のトロ子は、体は大人なのに心は幼少期から全く成長していないという魅力的なキャラクターです。
タイトルのブッキラも、愛想をつねに振りまいているグッドなキャラクター。フルチンにネクタイというどこかがきデカっぽい服装にルーズソックスという身なりも超絶印象的。トロ子とブッキラは愛し合っているという設定も手塚ならでは。「人間と人外の者の恋」って手塚が大好きなテーマの一つだと思います。
おなじみのロックも、「バンパイヤ」や「ブルンガ1世」などで好演した悪役ではなく、へっぽこ三流ルポライターという配役に惹かれます。そしてこの作品でのロック、超はまり役なんですよ。二枚目気取りが上手くいかないところとか、悪徳ルポライターのようで実は情に厚い所とかが上手く表現できてます。実はロックもトロ子のことが好きなのでは?と思わせられるシーンもあるのが気になるところ。今までの黒いレンズのサングラスではなく、レンズが半透明なサングラスを使用したことで、表情が見えやすくなっているのもいい感じです。
この三人が織りなすドタバタ劇は読む者に時に笑いを与え、時に感動を与えます。それに惹かれて読者はどんどんページをめくっていくのです。軽いタッチながらも、ちょっと泣けてくる要素も入れてくるのが手塚らしいところ。
ですが、この作品、未完に終わっています。この作品と同時期に制作されていたアニメ『悪魔島のプリンス 三つ目がとおる』の制作で手塚治虫が多忙となってしまい、途中で打ち切られてしまったのです。本作には伏線らしいところも何か所か見られるので、連載が続いていればいい最終回となっていただろうと考えると、少し残念です。
ということで、今回は「ブッキラによろしく!」を紹介しました。手塚のギャグ好きな一面も伝わってくる作風で、結構誰でも楽しめる作品だと思います。ぜひ読んでみてください。
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