【読書ノート】戦争による精神障害
『日本帝国陸軍と精神障害兵士』
清水 寛
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【国府台陸軍病院】
昭和13年(1938年)1月、
戦時精神神経疾患問題に対応する病院として位置づけられた、
特殊な専門病院。
【戦争神経症】War noirosis , battle fatigue
戦時に軍隊内に発生した神経症の総称。
兵士に生じる心理的問題は、軍隊生活や戦闘状況へのストレス反応、捕虜体験、強制収容所体験に基づくもの、あるいは、帰国後の社会への適応状況に関連して起こるものなど。
<急性戦闘反応>
周囲から戦闘員として期待されている兵士が戦闘に直面した時、戦闘員としての機能をやめてしまったシグナルと誰もが認めるような兵士の行動。
戦争神経症の本態が、一般の神経症と同じ心因性の疾患である事は、第一次世界大戦後に確立されたもの。
戦争神経症になる人格傾向は、通常の神経症の素因となる神経症的人格とは、必ずしも一致しない。
欧米の調査では、
精神的に破綻して後送された兵士のうち、病前に神経症的要素を示してはいなかった者が40%、あるいは50~60%という報告がある。
逆に、戦前に神経症的性格を持った者が、軍隊生活で戦闘に耐え、治ってしまった事例も少なくない。一般に神経症を発症しやすい者は、ストレスに対する耐性が弱いと考えられているが、戦争神経症はそうではない。
メニンガーは、戦争神経症では、誰が破綻するかというよりも、
いつ破綻するかを問題にして、「破綻点(breaking point)」という概念を提起している。(meninger 1948)
破綻点とは、兵士が戦時の特殊な環境のもとで精神的にも肉体的にも耐えうる限界のことであり、これを超えると発病する。
戦争神経症素因のある兵士は、その耐性が低いということになる。
つまり、この破綻点にいつ到達するかは、環境と素因との関係で決まることになる。
懐郷病から起こったこと(懐郷病は「精神病」には分類されない。)
故郷から送られてくる手紙を楽しみに日々従事しており、
うつ状態にある者も、手紙が届くことで回復することがある。
郵送物が内地から届けられた際、自分宛の手紙がなかったら、
同僚に「隠しただろ!」と疑いをかけ、暴行をする。
たまたま起こるものでなく、何件も起こる。
<感想>
戦争におけるPTSDについて興味があり、本を探した。
アメリカ兵士のPTSDの話は聞いたことがあるが、
日本の公共的な支援体制はあるのだろうか。と思った。
日中戦争で神経症状と見られる兵士が多く見受けられ、
今後の大きな大戦に控え、「国府台陸軍病院」を設置した。
通常の神経症と戦争神経症は持っている素因が違う。 通常の神経症的な性格を持っていない人が 戦争神経症になった割合が40〜60%という報告がある。 「破綻点」を超えると、戦争神経症を発病する。(メニンガーが提唱する概念) 異質な非現実な状況で精神に何も影響を与えないはずがない。 破綻点という概念が納得できる。
懐郷病。これは「精神病」には分類されないが、
同僚が隠したと疑わない、暴力に繋がるまでに感情が抑えられていない。
兵士にとって、内地からの手紙がどれほどの救いだったのかを知った。