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学校給食の無償化はなぜ進まないのか

来年度の財政の基本方針を決める「骨太の方針」が閣議決定されました。ここに至るまでに、自民党内ではそれぞれの議員が取り組む項目を入れ込むべく激しい議論を繰り広げます。子どもの教育格差に取り組んでいる私としては、体験格差の問題などと並行して、学校給食の無償化をさらに進めたいと思い事前に文部科学省に打診したのですが、実態調査が出たばかりなので、今回の骨太の方針では「今後具体的な方法を考える」という表現にとどめさせて欲しいと言われ、引き下がりました。

自治体によって差がある学校給食の現状

皆さんもご承知の通り、学校給食は全国のほとんどの学校で提供されています。小学校では98.8%、中学校では89.8%で完全給食[1]が実施されています(公立学校に限定すると小学校99.5%、中学校97.1%)。

都道府県間の公立学校を比較すると、小学校の給食費は月額平均3,933円から5,314円、中学校では4,493円から6,282円とかなりの金額の幅があります。食材の質や地産地消にこだわっている自治体があるためだと思われます。仮に、全公立学校に完全給食を導入して全てを公費で負担した場合の合計額は4,832億円になります。

行政の公平性という難題

教育扶助の一環として文房具や体操着などへの支援はすでに行われています。ほとんどすべての学校で給食は提供されているわけですから、全額公費負担とすることで子どもたちに公平に栄養のある食事を提供できる効果は非常に大きいにもかかわらず、実現してこなかったのには理由があります。

自治体独自の取り組みで無償化がかなり進んでいることが背景にあります。実態調査によると、1,794市町村のうち775の自治体で何らかの形で給食の無償化が行われています。547自治体では全小中学生を対象に無償化が実現され、145の自治体では多子世帯などで無償化が実現しています。財源は自己財源や地方創生臨時交付金などで措置されています。

完全無償化の前に立ちはだかるのは行政の公平性の問題です。仮に学校給食をすべて無償化して5,000億円近い予算を投入した場合、すでに無償化を実施している自治体とそうでない自治体との間の負担をどう考えるかという問題が生じます。また、地産地消などで他の自治体と比較して質の高い(値段も高い)給食を実現している自治体と、安価な給食を提供している自治体との違いをどのように考えるかという問題もあります。全国で無償化が実現した結果、給食の質が下がったということになると、納得しない保護者も出てくるでしょう。少数ではありますが、アレルギーなどで学校給食を食べられず、自分で弁当を持参している子どもの負担をどうするかという問題もあります。

まずは一歩を踏み出す決断を

実態調査の結果が発表されたのは6月12日です。さっそく文科省の担当者にいつまでに結論を出すのか確認したところ未定とのことでした。行政の公平性を慎重に考えるなら相当の時間がかかることが考えられます。

私はまずは政治的に無償化を決断(できれば実現も)し、制度設計は後から考えるアプローチで良いと思います。すでに無償化を実現している自治体については、国の交付金などで埋め合わせることができます。給食の無償化を決めるのは文科省ですが、地方自治体への交付金は総務省が担当しています。行政の縦割りの問題は子どもたちには関係ありませんので、何とか給食の無償化を早期に実現したいと考えています。



[1] 主食・牛乳・おかずがすべて揃った給食のこと。

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