【小説】メメント モリ 第7話 隠れ家
∴ 前の話
∴ 第1話を読む
東京駅から中央線に乗り込むと飯田橋駅で下車し、神楽坂へと向かった。平日も夜中の十一時を過ぎていれば、すでに閉店している場所も多い。直人は緊張気味に人通りの少ない細い道を通り抜けながら〝指定場所〟へと歩いた。
低い建物が並ぶ通りの角に、その〝指定場所〟はある。通りに面したアンティーク調の重い扉を躊躇なく開くと、そこは窓のない隠れ家のようなバーであった。
「いらっしゃい」
女の切れ長の眼がカウンター越しに直人の姿を捉えた。直人は店内に眼を配っ