献身からの卒業
久しぶり
ご無沙汰ね
こうしてお話するのは何年振りかしら?12年ぶり?そんなに経つのね・・・相変わらず若々しいわね。あなたもですって?あら、ありがとう。嬉しいわ。
紅茶でもいれるわね。
彼女は相変わらずだ。12年ぶりだというのに何にも変わらない。いや、常に変化し続けているのか・・・僕らの仲間内では変わり者だと言われることも多いが彼女のことを好きなものばかりだ。もちろん僕もそのひとり。
彼女は自由を愛する人だ、たぶん。多分というのは本人に確認したことがないから。
ねえ?あなたもそう思うでしょ??
そうだね。君の言うとおりだよ。ぜひともやってみてはどうだい?僕も手伝うし・・・
それは嬉しいわ!あなたはいつでも私に賛成してくれる。とても心強いわ。
12年前もそうだったわね。たしかあの時は・・・
そうだ。12年前も・・・あの時は寝る間も惜しんで彼女のアイデアの手伝いをしたっけ。
彼女の作品が完成する頃には身も心もぼろぼろで。それでもその笑顔があるだけで僕の中ですべてが肯定されしまった。
その後しばらく家を出ることも仲間に会うことすら苦痛になってしまったのだが。なのに僕はそれすら肯定し喜びにしてしまった。
まあ、いい。
いつも貴方は私がイメージしたものを表現してくれるの。前回の絵画も素晴らしかったわ。そうそう昔作ってくれた曲もあったわね。せっかくだから聞きましょうよ。
彼女の作品なんだが形にするのはいつでも僕だ。別に嫌なわけではない。
嫌なわけではないんだ。
ねぇ?
彼女の頭の中を形にして色をつけて音にして香り付けすることに何とも言えない高揚感、そして出来上がったときの満足感。
さらにその後の抜け殻感・・・
・・・ねぇ?
僕はそれを考え想像しただけで嫌気がさす。
それでもあの自暴自棄な自分になりたいのだ。
あの快感を味わいたいのだ。
紅茶冷めますわよ?
!!
ああ、ごめん。
あいかわらずね、本当に・・ふふ
彼女の笑顔にはやっぱり弱い。
ふとあいつのことが頭をよぎった。
お前さんは彼女が好きなんだろ?愛だな、愛だな。
やかましい・・・
そうだ、もうすぐお前にもあえるんだな。