ワルモノは誰か|明治維新から見える日本人の心の動き
真菰(まこも)茶を戴きました。真菰とは、縄文時代から日本に伝わる植物です。2.5mと人の背丈よりも高く、出雲大社の大きなしめ縄にも使われています。
真菰のことを調べていたら、スピリチュアル界隈におけるひとつの視点に気づきました。見えない世界、不思議な世界を探究していると、埋もれてしまった日本古来の叡智と出会うことは多いです。真菰(まこも)もそのひとつ。明治維新をきっかけに、日本古来の叡智がすり替えられたり、失われたりしたとか。
明治維新をきっかけに、日本古来の叡智がすり替えられたり、失われたりした。このように聞くと、明治維新がワルモノのように見えてきます。黒船でやって来たペリーが「国を開きなさい」と圧力をかけた。それにより日本は、仕方なく無理やりに開国させられたと。
弱者と強者というコントラストが印象的な視点です。このようなコントラストは映画やアニメの題材にもなりやすく、実際に明治維新をテーマにした作品も数多く発表されています。
では実際に明治維新はワルモノだったか?真菰(まこも)をはじめ、日本古来の叡智が埋もれていくきっかけを作ったと、ワルモノ扱いされてしまう明治維新とは一体何なのか?
この問いを探るために2つのマガジンをご紹介します。僭越ながら親noteで公開している作品でございますことをご了承ください。小難しい史料やロジックの圧で伝えるより、楽しみながら面白く理解できると思い選びました。
史実を研究しながら、良いものを還元できるようにとかなりしっかり書いていますので、十分ご参考になるかと思います。
① 時代が大きく変わるとき『明治維新から見える日本人の心の動き』
② 幕末時代物語『天翔る少年』妖怪猫又に導かれゆく
ずいぶん細かく調べていると思われたかもしれません。私は大学時代、歴史学のなかでも日本思想史という変わった分野を研究していました。高校生の頃、福岡大学名誉教授の大嶋仁さんの著書『こころの変遷 日本思想をたどる』(増進会出版社 1997年)を読んで、その面白さに惹き込まれてしまったのです。
変わり者の私は卒論に向けて「明治初期社会における民衆の意識」というテーマで研究を始めました。その研究をnote版としてリメイクしたのが先程の「 時代が大きく変わるとき『明治維新から見える日本人の心の動き』」と「幕末時代物語『天翔る少年』妖怪猫又に導かれゆく」です。
幕末から明治初期にかけて、あれほどの変革を起こしたモノは一体何だったのか?日本人はどのように変化していったのか?
結論から言うと、明治維新というひとつの変革は、外側の力によって何かを変えられたばかりでなく、内側からの変わろうとする力も大きかったと考えるのが自然のようです。内側とは民衆の意識です。
江戸時代は、日本史の流れにおいても精神レベルが高い時代のように感じます。にも関わらず、変わらなければいけないことも多かったようです。
今では考えられませんが死体が平気で川を流れていたり、汚職が目立ったり、そして武士は、武士ではなく武家に近い存在でした。馬にすらまともに乗れない人もいました。
明治維新において注目して欲しい日本人の心の動きは以下の2点です。
旧幕府に対して涙して同情する一方で、変わるべきだと嫌悪する。また新政府に対しては、期待する一方で失望もする。日本人は、異なる2つの感情を共存させることがな得意です。明治維新においても、映画や小説のように、どっちが敵でどっちが味方とハッキリ分かれていない民衆の意識が垣間見えます。大注目していただきたい点はまさにここなんです。
どっちなんだい!とツッコミたくなるような心の動きがあちらこちらで見られます。こちらは古い体制に嫌悪しているにも関わらず、徳川慶喜には同情する民衆の様子です。
明治維新がワルモノに見えてしまうのは、どうしても期待していたはずの新政府に対する失望が、今も強く私たちの心に残ってしまっているからなんですよね。
この上野での内戦で、官軍は敗者には墓も建てなかったそうです。それは、江戸の市民たちに対してとても不快な思いをさせました。ただ、官軍の死体についても誰も片づけなかったとか。一概に官軍だけが非情な行動をとっていたわけでもなさそうです。
さて、明治維新は実は外からの圧力ばかりでなく、内から湧き起こる力も大きかった。ワチャワチャしながら、みんなで底力のようなものでひっくり返したのがあの時代です。開国させられたシナリオばかり目立ちますが、やはり鎖国は限界だったし、開国を自分たちの意思で受け入れているのは見逃せません。
その受け入れ方はユニークです。なにせ『旧幕府に対する「同情」と「嫌悪」/新政府に対する「期待」と「失望」』という二刀流ですから!
日本人とはオモシロイ民族で、昔から二刀流を好むのです。先ほどご紹介した大嶋仁さんはこの特徴を「交互に使い分ける二刀流」だと上手く表現されています。
二刀流でなんとかバランスを保ったというのに、真菰(まこも)をはじめ古代の叡智が消えていってしまったために、ワルモノに見られてしまう明治維新とは、実に複雑な立場でございましょう。
私は、大事なのは精神性や意識の高さだと思っています。変化と共に押し流されてしまいそうな大切なものを、いえこれは大切なものなんですよと、分別できる理性と知性。誰が悪い、誰は良いという二極化した次元を超えて、精神性や意識を高め、理性や知性を育てていくことに目を向けて、突き進んだ先に統合がある。
明治維新という変革期をみなさんはどのように見ますか?ワルモノは誰かと探すだけでなく、その奥でひっそり佇んでいる日本人の心の動きが見えてきたら、私の研究も報われます。
(おしまい)
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