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教壇に立ち続ける 112 歌詞分析を突き詰めてやりたい【note限定記事】

それもこれもミュージックステーションが悪い。どうも星野です。連続投稿第2弾、テーマは詩歌の授業で歌詞分析をする話の発展版、「センシティブな内容の歌詞分析について」です。今日放送されたYOASOBIの「夜に駆ける」を聞いて構想した授業の案です。資料は後日有料マガジンに掲載します。いつかやってみたい実践です。この記事を読んで、参考になったなーとか、いいなと思って頂けたらサポートをお願いします。minneとFantiaはこちら。ちょっと今はバタバタしているので全然更新できていないです、すみません。時間は作れるので頑張って作って書きます。お待ちください。というか既存の作品をじゃんじゃん買ってください、真面目に家計が火の車なんです。

概要

2020年の後半に、流星のごとく現れた「YOASOBI」。ボーカルikuraさんの透明感ある歌声もさることながら、印象的な早口の歌詞やメロディーライン、独特の世界観が若者の心をつかんで離さない名曲です。紅白歌合戦にも出場されましたね。広くこの「夜に駆ける」という楽曲が高校生の間で話題になっている間に、どうしてもやっておきたい実践があるのです。今日思いついたのですが。
それは、原作小説と歌詞を両方読んで分析する、という、いわば「詩歌と小説を合体させた授業」です。これは個人的にも新しい試みなので、うまくいくかはわかりませんが、やってみたいと天啓のようにひらめいてから、素案をパソコンに入力するまでそんなにかからなかったので、やりたい方はご自由にどうぞ。ただ、この原作小説はセンシティブなので、取り扱いには注意してください。

注意事項

YOASOBIの「夜に駆ける」の原作小説は、ネットの投稿サイトで読めます。「タナトスの誘惑」というタイトルです。ひとことでいうと自殺の話。なおかつ、自殺を肯定する話。だからセンシティブだと申し上げたのです。自殺の教唆になりかねないので、先輩に相談したら「お偉いさんに話は通した方がいいと思う」というアドバイスを頂戴しました。この原作小説は短くて、文体もそこまで難解ではなく、むしろネット小説によくある歯切れ良いテンポで進む読み切り作品なので、導入にはもってこいの教材だと思いました。内容がヘビーであることを除けば。
この授業を実践する際に注意してほしいのが、内容の取扱(自殺を肯定するような結論にもっていかせない)、著作権の取り扱い(ネットの文章なので掲載者にひとこと断りを入れておくこと)、上司への報告、そして「道徳教育との差別化」です。
導入で使う、ということなので、高校1年生の4月段階でも実践できるとは思うのですが、「自殺はダメ」というメッセージは発したとしても「人生を大事に」とか「両親からもらった命」とか、そういう道徳的な内容に寄らず、言葉使いや原作と楽曲の表現の差異などに注目させていくことがポイントになると思います。もちろん国語の内容が道徳的にならないはずがないですし、道徳は全教科で教えるべき内容です。しかしこの作品群は心理描写や展開を追いかけすぎると「道徳の授業」になってしまうおそれがあるので、あくまでも「使われている言葉の意味のレベル」でとらえていかないと失敗するだろうな、と思っています。

実際の授業の構想

私の想定の話をしていきます。
対象学年は高校2年。学力層は中から低。国語は苦手だな、という感覚を払拭する意味合いを込めて、このくらいの生徒を想定しました。実施時期は4月あたり。最初の単元にありがちな、短いエッセイをやったあとに入れる詩歌の授業です。ここで基本的な小説の読み方を振り返りつつ、詩歌を分析する手法を学びます。また、二次創作ともいえる作品の登場や、現代のポップカルチャーについての教養も深めることが目標です。
設定した時間数は3時間。短かったら2時間で終わるかもしれない。補足事項を入れたらおそらく3時間かなと思われます。45~50分授業でこのくらい。あまり深追いはしない前提です。
具体的には3つのステップを通ります。①詩歌を読んで分析する、②小説を読んで詩歌の分析と重ね合わせる、③ポップカルチャーについて知識を得る、これで3時間くらい。
①では詩歌の分析を、こちらの発問を通して行っていきます。私が以前行った米津玄師の「Lemon」やヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」などと同じ方法を取るつもりなので、大学ノートの見開きを使って歌詞を書き写し、赤字で発問を書いて、青字でヒントを書き込んでいきます。ここで何に注目させたいか、そして最終的なゴールとなる発問を決定します。これは各教員の個性が出ると思うのであえて明記しません。やるときはぜひご自身の手で分析してみてください。歌詞分析の方法は、教材研究の時とさほど変わりません。読んでいて引っ掛かりを感じる部分、文脈を追いかけたときに「複数の解釈が生まれそうな部分」をピックアップして、それについて生徒に解答してもらうのです。応用編として「好きな楽曲を自分で選んで、自分で疑問に思ったことを書き出し、それに自分で答えを出す」という実践もやりましたが、生徒によって出来具合がまちまちなのであまりおすすめはしません。疑問を持たずにスルーしてしまう生徒のほうが多いです。
②ではいよいよ「タナトスの誘惑」を読んでいきます。内容をざっとおさえながら、要所に出てくる歌詞とのリンクをもとに、(できるだけ淡々と時事実を確認するようにしながら)こちらの作品で注目させたいポイントについて議論していきます。私だったら小説内に出てくる「彼女」の思惑や正体などを考えさせたい。そしてクロスさせながら読むので、印象の違いや比較して読んでどちらがどの点で優れているか等ワークシートを使って評価するのも面白そうです。
最後に現代のポップカルチャー(ニコニコ動画やボーカロイド、近年のヒットチャートの変遷等)に触れておしまい、という感じ。必ず毎回リフレクションを行って、生徒の考えたことを観察して評価するようにしたいなと思っています。
評価観点は書くことと読むこと、それぞれ目標に対してどの程度達成できているかを確認します。

私は高校時代「木綿のハンカチーフ」で歌詞分析を知ったのですが、令和の楽曲も昭和・平成の名曲に負けず劣らず「ストーリー性のあるドラマティックな歌詞」にあふれているので、今度はゴールデンボンバーでも扱ってみたいと思います(完全に趣味です)。それでは、また。

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