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【読書日記】編曲の美学

私(音楽の素養は幼少期に習ったピアノだけ)が、編曲という言葉の存在に初めて気がついたのは、大江千里くんのアルバムの歌詞カードでした。

しかし、作詞と作曲は分かるものの、編曲って???
頭にハテナがいっぱい浮かんだものです。

そのとき中学生だった私は、しばし考えて、
「編曲とは歌詞を何番までにするか、とか、サビのところを何回繰り返す、とか、曲の構成を決めることではないか」
と勝手に納得した記憶があります。(子どもなので……ゆるして)

その後、千里くんやTMネットワークの記事を読みたくて買い始めた音楽雑誌(GBやPATIPATI)で編曲家(アレンジャー)という存在を知ったものの、ただ漠然と「曲の雰囲気を決める人」だと思っていました。(大雑把なO型なので……ゆるして)

あれから◯十年。山川恵津子さんの「編曲の美学」を読むまで、その漠然としたイメージのまま生きてきたことをここに告白します。

ぎゃーーーすみませんでしたーーー。

……と土下座したいくらい、編曲家の仕事は、その量も責任も大きいものだと知りました。

そして、渡辺満里奈ちゃん、小川範子ちゃん、宮里久美ちゃん、谷山浩子さん……などなど80年代〜90年代に私の心をウキウキ、ワクワク、キラキラさせてくれた曲の多くが山川さんのお仕事だったことも知ったのでした。

今でもよく聴いていて、……というか、40代後半になったあたりから自らの青春時代に好きだったものが無性に懐かしくなって、再び聴くようになったのですが、「やっぱりいいよなぁ」と、ときめいています。

この本を読んだ影響で、山川さんの携わった楽曲を「これも山川さんか……!」と確認しながら聴いているのですが、聴けば一瞬であの頃の思い出はもちろん、空気感や気分までよみがえってきます。音楽ってすごい。

本書の中で、編曲家の仕事について、自らの経験と知識を惜しみなく披露してくれている山川さん。

編曲家に求められている仕事は幅広くて(なにしろ対象は全ての楽器やコーラス……)、万能の音楽の神か何かですか?というレベルに思えます。

しかも、今ならテクノロジーでカバーできる部分を、(それらが開発、導入される前なので)コツコツと人力でやっていた時代も……。超人?

そんなすごいお仕事を積み重ねてきた山川さんの文章からは、プロ意識とストイックさをビジバシと感じるのと同時に、周囲の人たちへの感謝と敬意、そして、人と人との縁を大切にする姿勢もめちゃくちゃ伝わってきます。

時代の変化や技術の進歩にもしっかり対応されて、長く活躍しているところもすごい。

お仕事にも生き方にも美学があってカッコいい山川さん。

「編曲の美学」は音楽(編曲)やアイドルソングの時代について面白く読めるだけでなく、仕事論やどう生きるか?についても参考になる1冊だと思いました。





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