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HORSE FROM GOURD

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SHORT STORYS
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#ショートショート

失踪ポイント

失踪ポイント

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 カンダはいつも飛行機を降りて地面から機体を見上げた時、こんなペラペラの模型みたいな物が飛ぶのはどうかしているという気がする。直前までこの鉄の塊に乗って雲の上を飛んでいたと思うと、ぞっとするというより本当に何か騙されているんじゃないかという気

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椅子

椅子

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 行方不明扱いになっていた父親が死んだ。膵臓がんだったらしい。突然「死んだ」と聞かされたところで、もとより行方不明扱いになっていたのであまり心は動かなかった。膵臓って一体どこだろう。

 内縁の妻だったという女が俺を部屋に呼んで、この部屋にあるも

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河

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 橋のたもとから眺めた時は、ただの黒いうねりにしか見えなかった。

「ご覧の有様でして」
「はあ」

 土手まで下りて目を凝らしてよく見てみると、泥水のように見えたその河の流れは、黒っぽい文字で出来た水流だった。ごうごうという、それも普通の河の流れ変

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雲

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 その一週間、街の上にはずっと雲が立ち込めていた。
 外に出れば当然雲は目に入ったし、建物の中にいてもどんより空気が重かった。
 はあ、とため息をつくと、紫色のそれが煙みたいに上って行って、換気扇に巻き込まれるのが見えた。

「ため息つきすぎるか

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窓

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 打ち明け話というのは、ほとんどの場合極端に個人的なものだったり、さしたる事柄じゃないことが多いので、すぐに忘れてしまうものだ。
 でも一つだけ、今も忘れられない打ち明け話がある。

「生き別れの姉がいるんだ」

 と、Yは言った。

「そんな話

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螺旋

螺旋

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 背中がむずむずするような暑い夏の日だった。洗濯機がすすぎと脱水の行程を残して動かなくなった日、私はコインランドリーで洗濯物を回していた。何もかもが面倒になり、家着のままぐるぐると回転する洗濯物を見つめていた。

 コインランドリーの中は当然

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