見出し画像

少なくとも今は だけど、いつか

Amazonのコンビニ受け取りを使うようになった。
今にはじまったことじゃないけど、利用機会は右肩上がり中だ。
というのも、再配達を繰りかえすうちに、配達業者への申しわけなさが募って、いっそのことコンビニ受け取りにしようと思ったのだ。
まあ、そうした方が時間にもしばられないし。

…と、そんなこんなのいきさつを思い出しながら、コンビニへ向け、街灯にてらされた夜道を歩いていた。
荷物が届く日であっても、夜遅くまで大学で過ごしたっていい。
もはや配達で、誰かを困らせることはないのだから。
ただ、1つ難点がある。
受け取りには確認番号とやらが必要なのだ。
その番号はメールで来るのだけど、夜になるともうスマホの電池残量は少ない。
(音楽を聴きながらの勉強は、こういうとき仇となる。)
ちゃんと充電して帰ればよかった、とコンビニに着いてから反省することも多い。
今日も今日とて、あと1%。
コンビニまでの距離を考えると、ギリギリ持つか持たないかだ。
まあ、帰ってから出直した方がいいかな。
途中で切れちゃったらめんどくさいし。


そんなことを考えてると、踵を返し家路につこうとした足が、すっと止まった。
「家かコンビニか」という僕の選択が、街灯というスポットライトを浴びて、やけに大きなものに感じられた。
もちろん、僕の無難な決断にがっかりした"観客"はいない。
そこにいたのは、手元のスマホで細々と光る1%の幅を見つめ、ため息をつく僕だけだった。



何に対しても「なんとなく」とか「中途半端」が多い人生だ。

テスト勉強をしてて「ここは出ないだろう」と高をくくったとこが出題されてしまって、かなりひやひやしたこと。
「こんなとこまでは誰も気にしないだろう」と勝手な線引きをして、足元をすくわれたこと。

あげていったらキリがない。
つまり、「振り切ることができない」のだ。
完成度70%くらいで満足してしまって、100%が遠い。
世の中には120%も200%も、壁も音速も突きやぶって、ぶっとんでいく人もいる。
だけど、そんなのは夢のまた夢だ。
何かに「振り切る」には覚悟が必要。
そう分かっていても踏みだしたあとに待ちうける次の覚悟でまたつまづいてしまう。
次々と押しよせてくるものにパッと対応できる人に憧れるけど、そうなれるにはもう少し時間がかかりそうだ。

重い扉を押し開けたら 暗い道が続いてて
めげずに歩いたその先に 知らなかった世界
優しいあの子/スピッツ)

だけど、こんな風に迷いながらも進みつづけてることに意味がある。
あこがれてたものが当たり前になって、押しだされるように次のあこがれが生まれて、そして遠ざかっていく。
そんなことを繰り返していったとき、一体どこまでたどり着けるのだろう。
僕にはまだ分からない。



「コンビニとスマホ」という小さな覚悟の上で揺れている僕。
こんなちっぽけなステージでつまづいていては、らちが明かない。

「もしかしたら、充電がもつかもしれない。そして、その先に何か素敵な世界があるかもしれない」

やたら大げさに語ってるけど、小さなできごとにもちょっとだけでいいから意味を持たせたい。
このまま舞台袖で、純正のスポットライトを浴びた主演俳優に憧れている訳にもいかないから。
荷物よりも大切なものを目指して、安上がりな光のもとから逃げ出すようにコンビニへ走り出した。


「プツッ…」


手元から、何かがこと切れたような気配がした。
色んなことを察した。
人生、そんなに上手くいかない。
駆けだした足も、電池が切れたみたいに動かない。
そして、どんなに電源ボタンを長押ししても、もう何も浮かんでこない。
反射率の低い画面の黒さが、"あきらめて、出直しなさい"と語りかけているみたいだ。
なんだか嫌になってポケットにしまった。

こんなとき、「どうにかなるはず!」と意気込んでコンビニへ向かうほどの気概は、僕には無い。
まだまだ憧れるばかりだから。
少なくとも今は。
だけど、いつか。


#エッセイ #大学生#憧れ#スピッツ#優しいあの子#勇気#中途半端#人生#価値観



いいなと思ったら応援しよう!

はやぶさ
サポートしていただけると、たいへん喜んでます。 だけど、みなさんの感想をいただけたらそれと同じくらいに喜んでます。