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ひきこもり段階説

段階1
容体が重く、何らかの行動を起こすための気力が皆無である状態。
ただ呼吸をして生きていたり、寝たり起きたりするだけで全ての体力を使い果たす。「生きているだけで辛い」という地獄のような状態なので、その苦痛から逃れるために急ぎで自死の方法を思索している人が多い。「あらゆる物がかすんで見える」「世界が白黒に見える」などの重篤な体験談が多く見られる段階でもある。運動機能の低下、免疫力の低下、内臓の損傷など、肉体的にも著しい不健康状態に陥っている場合が多く、即急の療養を要する。この段階では、どこか安全な場所でいかに「ひきこもり」続けられるかが課題となる。周囲の人間の手も借りながら、外部からのストレス、または習慣的に身体に取り入れている不健康な食事などを絶ち、これ以上の状態悪化(すなわち死)を防ぐことに尽力せねばならない。また、この段階の後半では「現実逃避」が見られることがあるが、それは好転の兆しである。

段階2
最低限の生体維持に必要なだけの気力、体力を辛うじて確保することに成功し、ひとまずは命をつなぎ留められた状態。徐々に体力に少量の余裕が生じ、ネットサーフィンや漫画、アニメの視聴など、比較的気力を要さない受動的な行為に限っては可能になってくる。後半に於いては、ある程度の能動性と気力を要するテレビゲーム等も可能に。事情を知らぬ他人から見ればただ怠けているようにも錯覚されるが、当の本人は中程度以上の希死念慮と苦痛を抱えながら"どうにか生きている"状態であり、周囲の配慮が必要とされる。段階1からこの段階に移行するにあたっては、休養による精神的気力の復興、また食事の改善などによる肉体的な回復が有効であると考えられる。

段階3
段階2からまた一歩回復が進み、僅かに自発的な行動力を取り戻す。希死念慮は中程度以下に収まっているものの、やはり生きるおいて人並み以上の苦痛が止まない。この時、行動力を得たが故に「中程度以下の希死念慮」を以てしても、大掛かりな自死を決行してしまう場合がある。インターネットなどの間接的な方法を通して、他者との会話を求める気持ちが湧いてくることは喜ばしい。そのような他者への接触を始めとして、実際に何かしらの行動を起こすことがあるが、しかし心身ともに状態が脆弱であるが故に失敗は尽きず、それが自己否定、自己嫌悪を繰り返してしまう悪循環へと陥ってしまいがち。運が悪ければ「段階2」に後退もしてしまう非常に不安定な段階であり、本人を含む周囲の人々の慎重さが要される。

段階4
更なる回復に成功し、希死念慮が小程度にまで収まっている状態。何らかの行動を起こしては失敗し、また失敗する。そしてたまには成功するという経験を辿るに連れて、「僅かずつでも、ものごとは前進する」という地上の原理を思い出し、何かに挑戦することを少しずつ喜べるようになってくる。やはり健全な人間以上の苦悩や希死念慮に悶えつつも、自ら習慣の改善を試みるなど、傍目にもわかる自発的な治癒行動を見せ始めるのもこの頃。以前の段階と比較すれば遥かに、生活改善や健康に関する前向きな情報を受け入れ易くなっている。また、自身が「ひきこもりである」という状況に対し、やや落ち着かなくなっている頃でもある。

段階5
心身の健康状態を大幅に回復させることに成功し、「自宅での生活」という範囲に於いてはほとんど支障をきたさなくなっている状態。本人としてもその回復度合いを自覚しており、それ故に、再び心身を壊してしまうことへの恐怖感が新たに生じてもいる。何らかの社会空間に踏み込むまでは「あと一歩」の状態でありながら、その一歩に大きな勇気を要している段階。この段階では特に、そのもどかしさから自暴自棄に陥らないように注意が必要。前進のための行動を、着実に積み重ねていくことが有効となる。「死の瀬戸際からここまで這いあがってくる」という道のりで、既に社会復帰以上に高い段差を経ているわけだが、本人としてはそれに気付いていない場合が多い。

段階6
社会に復帰し、何らかの職業を得て働けるようになった状態。社会に属する一員であるという自己肯定感の最低保証、そして金銭的な余裕が生まれることによって、行動の幅が大きく広がってくる。回復がやや未了である脳機能、身体機能などを周囲の健康体の社会人と比較し気後れすることは多い。しかしそれも経年によってやがて一般レベルに追いつくことが期待される。人間の極限状態、希死念慮などを自身で体験しているが故に、その点においてはむしろ健全な社会人以上に「精神的な知覚力」に秀でていることが多い。

段階7
健全な社会人との区別がもはや不可能。それどころか、見事な逆転劇を達成してみせた生き証人であり、「深淵からの帰還者」である。改めて、自分の存在を自分自身に誇ってあげるべきだ。更なる向上を願うのであれば、今後は「人間としての段階」を上げてゆくべく励んでほしい。
君は本当によく頑張った。


番外編(※ほぼ悪ふざけ)


段階「変異」
特異な段階。ひきこもりでありながら、どういうわけか一般的な社会人を凌駕する健康的な肉体、成熟した精神、豊富な知識、強固な自制心、豊かな人間性を備え持つに至った異常個体。素直にひきこもりを開示したところで、もはや誰からも納得してもらえない領域にまで来てしまっている。子細な原因は多岐に及ぶが、まさに「変異」と呼ぶをして他にない類い稀な現象である。

段階「生存者」
特異な段階。社会に属さないひきこもりでありながら、生きていくための収入源の自己開拓、またはあらゆる生活物資の自給自足の達成によって、自らの社会的身分や、社会の情勢を問わずに生存することが可能になった状態。状況に左右されずこの世界を生き抜くことに特化した「真の自立」の達成者でもある。

段階「無敵の人」
特異な段階。心に燻る憎悪に飲み込まれ、人生を「知らない誰かへの八つ当たり」へと捧げてしまう暴走個体。無差別的で凄惨な事件を引き起こす。ある意味では、現状の社会環境のどこかに重大な不具合があることを警告するエラーメッセージのような存在でもある。本人としては、死後或いは来世に想像を絶するおぞましい仕打ちに遭い続けることになる…と言われている。

段階「同化」
特異な段階。自身がひきこもりであることを全く肯定的に受け入れ、未来永劫ひきこもりとして生きていくことを望んで選択した状態。もはや「ひきこもり」という概念そのものと和解し、共生し、遂には一体化するにまで至った。ある種の「諦観」から来る深い静けさを纏っており、それが時には大木の如きしたたかさや、高僧の如き風格として周囲に映る。不動にして、威風堂々。ひきこもりの道を極めた者の到達点と言える。


このボタンから所謂"投げ銭"が行えるようです。物好きな方にオススメしておきます(笑)