学生運動を描いたミュージカル「タイム・フライズ」のエネルギーに感嘆する
今日観に行ったミュージカルの話。
ビジネスにせよカルチャーにせよ、良いものには身銭を切るのを厭わない主義だけれど、観る前は「正直7,000円は結構高いよね。。」と思っていました。
ところがどうして!
観る価値が十分あるエネルギッシュな作品でした。大満足!
時代は昭和43年、学生運動にタイムスリップした若者二人の話
現代の大学生が、学生運動真っ盛りの1968年(昭和43年)にタイム・スリップして、若かりし頃の両親に出会い、共に全共闘として学生運動に巻き込まれて行くという昭和懐古的テーマのミュージカル。鉄骨3階建てのセットが盆に乗って回転する迫力のある舞台で、玉麻尚一作曲によるエネルギッシュな音楽と共に、一度しかない青春の叫びが突き刺さる。懐かしい60年代風アングラ演劇のテイストもあるノスタルジーに彩られた異色のオリジナル・ミュージカル。社会に熱く立ち向かった、昭和の団塊世代の若者たちと、閉塞感のただ中にいる平成の若者を対比させてジェネレーション・ギャップを描き、自分たちの時代は自分たちの手で創って行こうというメッセージを投げかける。
ミュージカル「タイム・フライズ」は遠山裕介さん、中村翼さんのダブル主演。どちらも現代の学生役で、彼らがひょんなことから両親が生きた昭和43年の学生運動の時期にタイムスリップするという設定だ。
「不便だけど情熱的だったあの頃(=昭和)」と「便利だけどどこか生温い現代(=平成)」という構図は在り来たりだけれど、学生運動を丁寧に描いており、その躍動を拝めるだけでも観る価値があります。
「学生運動」という言葉自体はもちろん聞いたことがある。
その当時の日米安保や閉鎖的で排他的な日本における諸問題に対する学生や労働者の不満が爆発して…というような一般教養のレベルでは教えられてきた(はず)。
でも、幸か不幸か、そこにリアリティがなくて。
中学・高校では現代史はそれほど重視されていなかった事情もあって、スルーしてしまったように思います。
更に学生運動という言葉にちょっとした拒否反応があって。「おじさんたちの青春」「あの頃は体制に対して異議を唱えていたぜ。どや!」みたいなイメージが濃ゆい。
でも、当たり前のことだけど、その当時に学生運動に関わってきた人たちは生身の人間なわけで。ミュージカル「タイム・フライズ」では、そんな生身の人間が「人間として」ちゃんと描かれていたように思います。
例えば、昭和の学生役の台詞。
「経済や流通を学びたかったのに、それ以前に体制に問題がありすぎることに気付いた。ばあちゃんが畑を売って学費を工面してくれているから後ろめたさもあるけれど、社会を変えるために立ち上がることにした」
「これまで自分の境遇を顧みて自分の意見を言うことを避けてきたけれど、行動しないと何も変わらないと思った。だから学生運動に参加することにした」
それだけで、のめり込んだ。
舞台装置の迫力も満点で、動的で、その当時の熱がグイグイと伝わってきた。もちろん、演者や関係者の皆さんの努力があることは言わずもがなですが。
「演劇の良さ」を語るには早いけれど…
縁があって、昨年からちょこちょことミュージカル観劇の機会に恵まれているけれど、「生」の舞台は、心に憑依する何かを感じることが多い。
撮影すれば記録として残すことは可能だと思うけど、「今しかない」瞬間を演者とお客さんが立ち会うその空間の緊張感があって、引き込まれるうちに演者に感情移入したり、演出家の意図をまさぐってしまったり。
「演者とお客さん」という関係はどんな芸術でも同じことなんだけど、シンプルで、剥き出しで、生々しい。終演した瞬間に「息をつく」のは、客側も演者と同じように舞台に「入っている」証拠なんじゃないかな。
演劇を語るにはあまりに早すぎると自覚していますが、この臨場感はもっと知られるべきだと思います。
今年はいろんな演劇を観に行きたい。肉感的なドキドキを味わうにはもってこいだと思うのです。