葛西薫のアイラブユー

福島県須賀川市にあるCCGA現代グラフィックアートセンターで、2022年6月12日まで開催されていた「葛西薫POSTERS since 1973」。

仙台旅行の道中で立ち寄り、日本を代表するアートディレクター・葛西薫さんのクリエイティブを思う存分味わってきた。

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展示会では、UNITED ARROWSの「green label relaxing」、サントリーの「烏龍茶」、映画「誰もしらない」など、葛西さんが手掛けてきたポスターなどが掲示されていた。

何より驚いたのは、余計な装飾が一切排された展示会だったこと。

ポスターと、プロジェクトの名前、年月、クレジットが記載されたキャプションが添えられているだけ。葛西さんがどのような意図でクリエイティブを作ったのかは分からないが、その分、じっくりとクリエイティブに想いを馳せることができた。(まあ、単に予算の問題だったのかもしれないが)

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なんといっても葛西さんの代表作は、「アイラブユー」で知られる、サントリーのCMだ。

今回の展示会のアイキャッチにもなっているこのクリエイティブは、どこか詩的で、奥ゆかしさを感じる。(TVCMでは、山下達郎さんの楽曲が起用されている)

黒字、赤字と2種類のアイラブユーがあって、それはたぶん「男」と「女」を示唆していたのだと思う。いまの時代にはそぐわないかもしれないが、僕は「ああ、粋なことをするなあ」と思った。ウイスキーのお歳暮なので、別に黒字だけでも良かったのだ、本当は。

でも、あえて2種類用意するあたりが、葛西さんの遊び心だったんじゃないか。

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Omnium rerum principia parva sunt.

とあるクリエイティブに書かれていた言葉だ。「すべての物事の始まりは、小さい」というラテン語らしい。

展示されていた葛西さんのクリエイティブは、だいたい大手のクライアントのものが多い。万人に「愛されたい」と願う商品が、葛西さんのディレクションによって輝きを得る。

どのクリエイティブも、なんだか近い距離にあるような感じがするのだ。愛されたいと願う商品が、まるでお客さんに「アイラブユー」と告げるかのように。

ああ、なんだか、とらやの羊羹が食べたくなってきちゃったな。

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ほりそう / 堀 聡太
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