2020年に読んだnote10選
12月は、今年の振り返りにじっくりと時間を費やす。
昨年の自分を思い出しながら、できるようになったこと、新たに得られた視点を棚卸しする。伸び代や限界が感じる中で、翌年の指針がぼんやりと見えてくる。
同時に再発見するのが自らの未熟さだ。定量的な数値目標が未達……ということではなく「僕」という人間の不完全さと向き合ってみる。今のうちに正しく痛感しておく。こうした機会を得られるのは12月だけだ。
今年は、出口の見えないウィルスとの長い戦いを強いられている。文字通り翻弄される日々の中、たくさんの良識ある人たちの「言葉」に支えられてきた。
書くだけでなく、精読することで得られることが、たくさんある。
今年僕が読んだnoteのうち10記事を選び、#note感想文 という形で紹介する。クリエイターの皆さんに、感謝の気持ちを込めて。
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1. RYOKOさん
2020年始めのnoteだが、今読んでも違和感がない。広告も広報もマーケティングも、それぞれの役割がだらしなく越境された結果、発信者も受信者も「何が正しいのか」判断基準を見失っている。事業に関わる僕たちは、今がカオスであることを知っておかなければならない。
だがそのカオスは、健全な変化に向けての過渡期と言い換えられる。その過渡期に無自覚で「で、それで売れたの?」と問うならば、たちまち白い眼で見られることだろう。
2. 遠山怜_lay toyama/ 作家のエージェント(人)さん
批評はクリエイティブな行為である。だが残念なことに、今批評は正当な評価がされなくなっている。否定や批難と同一視されているからだ。じわじわと言葉の重みが価値を失っているような気がしてならない。
遠山さんの主張は「どんな時代も、過度に評価や毀損をすべきでない」というシンプルなものだ。そこには厳しい自制が含まれているし、逆に他者への寛容を感じることもできる。自助やら公助やら喧しい現在、物事の本質を正しく捉え、フェアに批評することの大切さを知ったnoteだった。
3. 木村祥一郎 / 木村石鹸さん
顧客ファースト(株主ファースト?)を追求した結果、労働は「24時間」目一杯使うことがデフォルトになった。人間の身体能力には限界があるためテクノロジーの恩恵を最大限に預かるようになる。そのようにして高まった生産性の果てにどんな未来があるのか。
「銭湯を利用するのが当たり前だった頃は、当然、銭湯が開店している時間までには仕事を終えないといけなかった」という木村さんの言葉が、単なる懐古主義だとは、僕には到底思えない。
4. 内沼晋太郎さん
コロナ禍でいったいどれくらいの人たちが「仕事」を奪われただろうか。それは失職や倒産により「収入源を失った」という意味に止まらない。それは「生きていることの存在証明」に関わる問題で。政府や自治体の様々な発令に、その存在証明を何度も揺るがせた苦しい1年だった。
「開けるために店を閉める」という決断の背景には、何とかお店を成立させて本をお客さんに届けたいという、本屋の原点が込められている。「お金儲け」という功利でなく、商売を純粋に捉えたいち企業の姿勢に胸が震えた。
5. JINO の Hiranoさん
「誰かに読んでもらいたいわけでもなく、自分に言い聞かせるために記します」で始まる平野さんのnote。面識ある平野さんの挑戦が、“崖っぷち”に立たされていることに胸が苦しくなる。
「絶対、あきらめない!そして、結果を出す!!そして、恩返しをする!!!」という平野さんの宣言に、僕は、逆に励まされている。全てが落ち着いて、笑って話せる日が来たら、荻窪の居酒屋で乾杯しましょう。
平野さんのnoteには、日本の補聴器装用者の現実が綴られています。ぜひ直接、平野さんのnoteを読んでみてください。
6. 大土手嵩さん
惜しくも箱根駅伝出場を逃した筑波大学、駅伝主将の大土手さんの振り返りnoteだ。血を流すほどキツイ練習にも関わらず箱根駅伝を逃してしまった、そのときの感情を言語化している。決して均されたテキストではない、粗いけれど、その悔しさ / 悲しさが痛いほど伝わってくる。
感情の言語化はとても難しい。ネガティブを伴うものならば、できれば避けて済ませたいものだ。怯まずに、しっかり想いを書き起こしてくれた大土手さんの勇気に感服する。引き続き、大土手さんの言葉に触れていたい。
7. せきやみずきさん
人間は「できなかった」ことより「できた」ことを誇りたい生き物だ。せきやさんのように、ありのまま「つまづいた」話を書くことは正直しんどい。
新しい環境下での葛藤について、せきやさんは「萎縮」という言葉を使った。人はどんな風に萎縮してしまうのか。萎縮したらどんな行動を取ってしまう(&取らなくなってしまう)のか。その記録と学びの一部始終を、挑戦する全ての人に読んでほしい。輝かしい成功体験を綴ったnoteより、僕は断然こちらをお薦めする。
8. 三浦優希 Yuki Miuraさん
アイスホッケープレイヤーの三浦さんが記した、リスクについての考え方。「リスクとはばらつきであり、ばらつきが大きいものに対して投資をするなら、大きなリターンを要求すべき」はまさに金言である。
僕は不意に根性論を選択してしまう傾向があるが「これをやると99.9%失敗する」というのはリスクでも何でもなく、愚かしい選択に過ぎない。リスクを考えることは、リターンを考える(リターンを要求する)と同意なのだ。さて、僕はこれから、どんなリターンを期待して未来を選択しようか。
9. 北海道「写真の町」東川町さん
北海道東川町が目指す「適疎」というコンセプトは、「町の魅力、町の幸せとは何か?」という問いを考え続けたことから生まれたものだ。人が豊かな生活をするために「ある程度の疎」が必要という想いに起因している。
地方創生やテレワークの流れにより、多くの自治体が人口増を目指している。地域の社会インフラを確保する上で人口増施策は欠かせない。適度に人口が増え続けている東川町が持つ絶妙なバランス感覚(の本質)を、多くの自治体は参考にしてほしい。
10. 最所あさみさん
「伝える」と「伝わる」は別物だ。どんなコミュニケーション指南書にも書かれている。しかし、SNSなどインスタントなコミュニケーションが主流の現在、その基本中の基本は軽視されている。
最所さんが提案する「手紙」というアイデアは、やや時代遅れに思えるかもしれない。だが送り手と受け手が、ひと呼吸置いた状態で、お互いの言葉や思考に向き合うために手紙は最適なメディアだ。書く内容はもとより、封筒や便箋、切手、筆致など工夫できる余地も大きい。言葉を紡ぐ感覚を、手紙で取り戻せるかもしれない。
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まとめ(紹介したnote)
・RYOKOさん「「で、それで売れたの?」という問いが消えるとき」
・遠山怜_lay toyama/ 作家のエージェント(人)さん「「私たちの時代はそれが普通だったよね」症候群」
・木村祥一郎 / 木村石鹸さん「社会的ルーチンの喪失と仕事時間の増大」
・内沼晋太郎さん「開けるために閉めている」
・JINO の Hiranoさん「いま、わたしは何をするべきか?」
・大土手嵩さん「振り返り」
・せきやみずきさん「広報から広報への転職で、私はめちゃくちゃつまずいた」
・三浦優希 Yuki Miuraさん「117. その挑戦は本当に「リスクを取っている」と言えるのか」
・北海道「写真の町」東川町さん「人口が増え続ける小さな町、東川町が選択する「適疎」と、その未来について。」
・最所あさみさん「「がんばって」を伝える、80円の贈りもの。」
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おまけ(2019年Ver)
昨年末も、同様のnoteを公開している。よろしければご笑覧ください。