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新しい椅子に座るには。

フジテレビ「まつもtoなかい」で、ゲスト出演していた野口聡一さんが興味深いことを話していた。

2022年にJAXAを退職し、宇宙飛行士から引退。58歳から第二の人生を歩んでいるタイミング。

新しい椅子に座るには、古い椅子から立ち上がらなくてはいけない

その言葉を聞いたとき、ああ、真理だなあと感じた。

もちろん全員に当てはまる考え方ではないだろう。例えば仕事とプライベートの両立、フルタイムの定職でお金を稼ぎ、週末はやりたいことに時間を費やす。週7日やりたいことに費やすと、お金が足りなくなるといった不安が出てくるため、週末限定でやりたいことに取り組むのがちょうどいいという人も確かにいるだろう。

僕も創業するときに、前職を続けながら「まずは副業で」という選択肢もあった。正直周りからも、まずは固定でもらえる給料を残すことを前提にした方が良いというアドバイスももらえていた。

浅慮だったかもしれないが、退路を絶って、創業1本で独立した。実際2年経ち、以前のように余裕のある生活ではない。ただ、仕事のありがたさはひしひしと感じるし、「生きているなあ」という充実感も抱く日々だ。

正解、不正解とか、そういう問題ではない。

人によっては正解に思えるし、人によっては不正解だと感じるだろう。僕自身は、10年経ったときに「あの選択は正しかった」と思えるよう努力するのみである。あまりそこに「正しさ」のようなものは介在していない。そんなことを考える暇があったら、ひたすらに仕事に打ち込まなければならないからだ。

2021年春頃、独立を決断したとき。「そのまま会社に残る」という選択をとっていたら、僕はどんな人生を歩んでいただろうか。全く想像がつかない。前職にいる人が読んだら気を悪くするだろうが、僕はあのとき、座っていた古い椅子を「捨てた」のだ。(というか、捨てないと立ち上がることができなかった)

これからも、事業やキャリアの分岐点で、「どの椅子に座るか」という決断を迫られることがあると思う。そのたびに、頭がねじれるほど考えていかなければならないが、野口さんの「新しい椅子に座るには、古い椅子から立ち上がらなくてはいけない」という考え方は、ひとつの指針として念頭に置くべきかなと思う。僕の選択もそうだし、家族の選択もそうだ。

例えば息子が、「僕は〜〜がしたいんだけど、どうしたら良いだろうか?」と相談しにきたとする。そのときに、「古い椅子から立ち上がるべきだ」とアドバイスできるだろうか。

そんなことを実家で母に話したら、「ふたつの椅子を近くに寄せれば良いんじゃない?」とサラッと言われた。

母らしい考え方だなあと、思わず笑ってしまった。いつかそんなふうに、軽やかに生きられるようになるだろうか。それもこれも、自分の人生だ。焦らず、そのときの直感を大切にしたい。


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