Vol.4 『血の婚礼』初日を観て
とてもいい初日でした。稽古場で通し稽古は観てはいたものの、舞台セット、照明、音響、衣装が入ると、まるで違う作品です。お芝居も、かなり進化していました。木村さん、須賀さんの2幕の格闘シーンは、エネルギッシュでスリリングでしたねー。本当に殺しあっているように見えました。早見さんも、情熱的で素晴らしかったです。
演劇では、戯曲をそのまま書いてある通りに演出するという手法もありますし、それが一番いい方法であることも多いですが、今回の舞台は演出家の意図が明確に表現されていて、杉原さんにしかできない『血の婚礼』になっていたと思います。舞台をご覧になったお客さんはおそらく、セットや照明を観て驚くでしょう。私も多くの舞台を観てきましたが、昨日の夜観た表現の中には初めて見たものがたくさんありました。杉原さん、これからがとても楽しみな演出家です。初日のレポートはこちらから読めます。
安蘭さんと吉見さん、お二人の芝居を見ていたら、10年近く前にシアターコクーンで上演した舞台『幽霊』の時の思い出がよみがえってきました。
森新太郎さんの演出でイプセンの戯曲に挑戦したのですが、その舞台に安蘭さん、吉見さんの二人が出演されていたんです。安蘭さんと作品でご一緒したのは、その舞台が初めて。ミュージカル女優のイメージが強かったですが、芝居への取り組む姿勢がとにかくまじめで、とにかく自分を追い込んでいく姿に感動したのを覚えています。
吉見さんは普段は寡黙な方ですが、いざ芝居が始まると、熱量がすごい方。稽古中しか吉見さんがしゃべっている姿を見られなかったので(笑)、食い入るように稽古を観ていた記憶があります。その時の信頼関係が土台にあるのか、今回の『血の婚礼』の二人のシーンの完成度は素晴らしかったです。人間臭さが滲み出ていて、それでいて心の中では絶対違うことを考えているだろうという腹黒さも見事に表現されていて。
それにしても、人間が人間を愛す気持ちというのは、世界共通なんだな、と改めて感じました。昨夜舞台上にいたのはまちがいなく「自分の本能のままに生きている人間たち」でした。コロナで自分のやりたいことをやるなんてことをすっかり忘れていたので、ありのままに自由に生きている若者たちの姿を見て、とても気持ちよかったですし、羨ましくもありました。そして、「ああ、やっぱり舞台っていいなあ」と思った夜でした。