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この侵略をやめさせろ【ノー・アザー・ランド 故郷は他にない】

イスラエル軍は村の井戸にコンクリートを流し込んで埋める。村の人が「なんで井戸を埋めるんだ」って聞くと、「この井戸は違法だ」って。どシリアスな場面だけどつい笑ってしまいそうになった。違法な井戸って。国際司法裁判所はイスラエルの占領政策こそが違法だと言っている。


現に生活している自宅がある日突然ブルドーザーで潰されるとか、完全武装の兵士に銃を向けられるとか、子供たちが授業を受けている最中の小学校が唐突に破壊されるとか、抗議デモで練り歩いていたら軍が手榴弾を投げつけてくるとか…我々にとっては単体で十分に致死的な出来事が日常的に次々と起きている村の生活、それってどういうことかを、手持ちカメラの臨場感でもってまざまざと見せてくれる。当然どんなPOVホラーよりも緊迫していて怖いです。

そんな終始緊迫した映像が続く中、一服の清涼剤となるのはバーセルのお父さん。バーセルが子供の頃から活動家だったというお父さん、これまでも何度かイスラエル軍に逮捕されたそうだけど、この作品中でもまた逮捕されてしばらく拘禁される。拷問されるらしいなんて言うから心配だったけど、その後特にやつれた様子もなく、「息子が迎えに来てくれたんだ」とかスマホで通話しながら笑顔で出所してきてびっくり。作中バーセルが「ぼくはお父さんほどタフじゃない」って言ってたけど、それにしてもタフ過ぎて笑ってしまう。遠く日本で映画を観ている我々にも安心感を与えるくらいなので、きっと村人たちにとってはあのお父さんの存在ってまさに心の拠り所なんだろうなって感じます。

銃の前も平気なお父さん

ちょっとどきっとしたのは、ウェストバンクの村に雪が積もってる景色を見た時。雪降るんだ…。日頃から報道とかを見てる方だと思っていたけどいやいや、まだまだ何もわかっていないんだなって思いました。

とか書いている本日、この作品がアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を見事受賞しました。これを期にますます上映されまくって、この不埒な占領政策の理不尽さがもっともっと全世界に知れ渡り、今も行われているイスラエルのパレスチナ占領と虐殺を止める圧力になることを切に願います。

またとても印象的だったのが、バーセルが子供の頃に村の人たちとバスに乗って旅行に行ったときの映像。道中みんなで歌を歌ったりしててね。そんな楽しかった村の生活や思い出を奪う権利なんて誰にある?早く返せ。


ところで余談ですがこのドキュメンタリー、イスラエル軍とか入植者各位に映像の使用許諾を取ってるんですかね。何、取ってないって?それはいかんなあ(棒)。

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