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変わらないものもある【トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦】
これは噂に違わぬ大傑作。シアター内の客層もまた噂通り、老若男女お一人様から家族連れまでとたいへん幅広かったです。何か書こうかと言えども本作、なにせ約2時間の中に面白い要素のみをガンガンぶち込んで来るという、首尾一貫徹頭徹尾奇妙奇天烈摩訶不思議の香港エンターテインメントなもので、好きなシーンとか褒めるポイントとか言ったらこれは永遠に語れそうでいや困ったものですね〜。
とは言え、まずひとつ書いておくと、アクション映画に必須の敵役、今作のラスボスは、生身人間においてはおそらく古今東西映画史上最強かと思われます。もう強すぎて爆笑してしまうレベル。序盤、激渋激熱な登場人物の中になんで一人だけ場違いなしょうもないやつが入ってるんだろうって、ああこの雑魚はどこかであっさりやられるんだろうなって思いつつ観てたけどいやいや、そのキャラ設定が終盤で見事に映えてくるのには脱帽。ああ観て良かったと心から思える熱いラストバトルに大満足。硬直!
それから、激渋な兄貴連とそれぞれ違った魅力を持った次世代たちの対比がとても良かったです。それはアクションにも表れており、兄貴たちが使うのは功夫を主体にした、何か観ていて心安らぐところもあるような正統派香港アクション。御大サモ・ハン・キンポーも古希を過ぎてさえまだまだそんなに使えるのか!と感動すら覚えます。一方の次世代たちは泥臭いストリートファイトから総合、プロレス、日本刀にバイクなどなどを駆使し、兄貴たちのあり得ない一発の重みには勝てないまでも、難局を創意工夫パッションで乗り越えるというこれもまた香港スタイル。失ったものもあるけれど、受け継いでいるものもあるのです。
この作品の舞台となった九龍城砦はもうなくなって久しく、そして雨傘運動がつぶされたことはまだ記憶に新しいところ。正直「大丈夫か、香港」って他人事のように思うこともありましたが、この作品を観て反省しましたね。エンドロールにも現れてくる、かつて九龍城砦に住んでいた人たちはもちろん九龍城砦と一緒に消えたわけではなく、今もどこかで助け合いながら生活していることでしょう。香港映画界も然り、多様な次世代スターを輩出しつつ、かつて世界を席巻したレジェンドたちと組んで再び圧倒的なエンターテインメントを放つだけの底力がまだまだある。劇中の台詞通り、香港という所は歴史の中でずっと変容し続けているけれど、「変わらないものもある」ってことをまざまざと見せつけられました。
とか何やら言いつつも、とにかくアクションのリアルとファンタジーが絶妙のバランスで絡み合う香港スタイル、感想は「とにかく面白いからみんな観ておいておくれ」の一本でした。
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