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"レッズ"を支えるもの ~アンフィールドの奇跡、アジアへの思い~
浦和レッズサポーターのほりけんです。今回の記事は元々「リヴァプールに旅をしたい」という思いから書き始めましたが、書いているうちに、ACL北京戦に向けた「サポーターのためのモチベーションビデオ」になりました。動画編集の技術はないので、いつも巡回させてもらっている素晴らしい動画の数々を、言葉でつなぎました。誰のためでもなく、自分のために書いたものですが、ご厚意でOWL magazineに掲載させてもらいました。湘南戦の悔しさを胸に、北京国安、ぶっ倒しましょう。
サッカーでは時として、信じられないような奇跡が起きる。奇跡の意味を辞書で引くと「常識では考えられない神秘的な出来事」などと書いてある。サッカーの文脈に合わせて書き直せば「到底達成不可能と思われるような結果を得ること」とでもなるだろうか。
具体的な事例を思い浮かべてみると、日本サッカーなら、マイアミの奇跡(1996年アトランタ五輪でブラジル代表を1-0で下した)。また歴史を遡るとベルリンの奇跡(1936年ベルリン五輪で優勝候補のスウェーデンを3-2で破った)というのもあるらしい。
海外に目を向ければイスタンブールの奇跡(UEFAチャンピオンズリーグ2004-05決勝ACミランvsリヴァプール、0-3で負けていたリヴァプールが6分間で3点を返しPK戦の末に優勝)。初めてちゃんと観たCL決勝だったので、朝からめちゃくちゃ興奮した。
また奇跡の種類は異なるが、"ミラクル"レスター(イングランド・プレミアリーグの2015-16シーズン、レスターシティFCがクラブ創設132年目で初優勝)も外せない。今年のプレミアの結果を見るとあらためて凄さが際立つ。
そして先頃、我々はまた新たな奇跡を目撃した。いわゆるアンフィールドの奇跡である。
2019年5月 UEFAチャンピオンズリーグ準決勝
リヴァプール vs バルセロナ
5月7日に行われたアンフィールドでの一戦が、サッカー史に残るものであったことに疑いの余地はないだろう。
敵地での1stレグを0-3で落としたリヴァプールは、決勝進出のためには4点差以上の勝利が必要だった。しかも攻撃の軸であるサラーとフィルミーノを怪我で欠いた中で、である。あのバルサを相手に、到底不可能なミッションに思えたが、”レッズ"(リヴァプールの愛称)は奇跡の大逆転を成し遂げる。
2戦ともに解説を務められた戸田さんですら、「レビューを作ろうという気持ちはどこかに置いておきたくなる」のだから、いわんや自分をや、だ。
(注:実際には戸田さんは素晴らしいレビューをされている)
あんな試合を見てしまうとレビューを作ろうという気持ちはどこかに置いてきたくなる。
— 戸田 和幸 (@kazuyuki_toda) May 7, 2019
どれだけ時間をかけて準備しても解説者として墓穴を掘る事にしか繋がらない。
そんな気持ちになる、歴史に残るとんでもない試合でした。
フットボール万歳。
しかし、特定のフットボールクラブをサポートしている人間としては、あの奇跡を可能にしたアンフィールドという場所の力は強烈だった。戸田さんはそれすらも「言語化」してしまっているけれど、ここではサポーターの目線で、印象に残ったことを書き留めておきたい。
当然のことながら、現地で観たわけではなくDAZNでの観戦だった。しかし、あまりにアツい展開だったので早朝から興奮を抑えきれず、英語も含めて色んな記事や動画を漁った。"THE GREATEST ANFIELD COMEBACK"というタイトルがつけられたクラブ公式の動画など、最高だ。
ただ、個人的に一番印象的だったのがモウリーニョのコメント。チェルシーやマンUの監督としてリヴァプールと対峙してきた経験を持つモウリーニョなので、発言に重みを感じる。
"Anfield is one of the places to make impossible to be possible."
(アンフィールドは不可能を可能にできる場所)
"This is not about tactics. This is not about philosophy. This is about heart, and soul."(戦術ではない。哲学でもない。気持ち、そして魂だ)
決戦前、クロップは選手たちに「不可能だ。でも君たちならチャンスはある。」と語ったそうだ。「ゲームを変えるのは"感情"だ」という持論を持つクロップらしい。
そしてそれをさらに後押ししたのがサポーターだ。試合前、スタジアムに入ってくるチームバスを迎え入れるところからして、尋常ではない。
(ちなみに欧州や南米だとこの手の濃い煙の出る発煙筒の映像を見るけれど、本来の用途は何なのだろうか?)
入場前にはチャントからのYou'll never walk alone。YNWAは、JリーグではFC東京が歌う歌なので個人的に思い入れは全くないが、さすが本家は違う。
そしてアレクサンダー=アーノルドが演出した決勝点。一瞬の隙をついた素晴らしい判断だったが、どうやらクラブからボールボーイに対して、できるだけ早くボールを入れるよう指示が出ていたらしい。クラブ全体で戦うというのはこのことだ。
奇跡の締めくくりには、選手・スタッフ・サポーター皆で、あらためてYou'll never walk aloneを熱唱。
海外サッカーは普段映像でしか見られないので、なかなか特定のクラブを応援したいとは思えないのだが、アンフィールドは、一生に一度は行きたい場所として心に刻まれた。
・・と同時に、チームバス、歌、ボールボーイといったキーワードが出てきたので、今度は日本の"レッズ"の話をしたい。
2017年11月 AFCチャンピオンズリーグ決勝
浦和レッズ vs アル・ヒラル
遡ること1年半前、Jクラブ初となる2度目のアジア王者を目指した浦和レッズは、ACL決勝でサウジアラビアの強豪アル・ヒラルと対峙した。完全アウェイの1stレグを1-1で凌いできた後、最終決戦の2ndレグは11月25日、場所はホーム埼玉スタジアム2002。
この日はバス待ちから違った。僕自身は、スタジアムにはいたものの、生憎この現場にはいられなかったのだが、まぁ凄い。
キックオフ前には、特別な試合でしか歌わない「威風堂々」。リヴァプールのサポーターもCLのアンセムをかき消すようにYou'll never walk aloneを歌っていたが、このときも試合前のパフォーマンスにかぶせて歌った。
余談になるが、あのいわば"官製"のパフォーマンスが始まったとき、内心「これはやばい」と思った。スタジアムに充満していた緊張感が霧散し、普通のリーグ戦の雰囲気になりそうだったからだ。あえて威風堂々をかぶせることで空気を締め直したコールリーダーの判断は素晴らしかったと思う。
そしてこの試合でボールボーイと言えば、後半開始直前、「歌え浦和を愛するなら」に集結したシーンだろう。このとき、ボールボーイの1人がゴール裏に向けて、中に着込んだユニを見せ、胸のエンブレムを叩いて鼓舞するという一幕もあったのだが、動画が消されていたのが残念。
表彰式までの間には「好きにならずにいられない」からビジュアル(コレオグラフィ)が再度出現。厳かな歓喜がスタジアムに満ちた、最高の瞬間。
最後は勿論We are Diamonds。すんなり終わらないスペシャルバージョン。
浦和レッズとアジアへの思い
浦和レッズは、サポーターもクラブも、入れ込み過ぎと思われるくらい、アジアへの思いが強い(番記者の轡田さんはACLブーストと評している)。
現在の指揮官オズワルド・オリヴェイラもその思いを共有している。リーグ5位に終わった昨季、ACL出場権獲得には天皇杯を獲る道しか残されていなかった。J1最終節終了後、オリヴェイラは、天皇杯に向けて「選手たちにエネルギーを与えてもらいたい」とサポーターに呼び掛けた。
「ここにはすばらしいファン・サポーターがいます。そしてサッカーが息づく街でもあると思います。チームとファン・サポーターがともに歩んでいく環境にあると思います。それぞれを切り離すことはできません。レッズのファン・サポーターのみなさんの存在がチームに大きく、チームの精神状態に大きく影響していると思います。」
「メディアのみなさんにもファン・サポーターのみなさんにも来ていただいて、ファン・サポーターのみなさんにはバナーや応援旗を持ってきて我々に力を与えていただきたいと思っています。選手たちの走り、がんばりが無駄なものではなく、大きなファン・サポーターのグループのみなさんに、たくさんのファン・サポーターの方々に力を与える。そして逆に彼らから力をいただけるものだと思います。選手たちにもそれを感じてもらいたいと思います。」
記者会見のみならず、自ら、レッズサポが集う居酒屋「力」に足を運び、直接サポーターに声を届けた。
オリヴェイラ監督が力にきた!!
— おっくん@浦和→滋賀のスポーツキュレーター (@toshogear) December 1, 2018
天皇杯取るぞー!#urawareds pic.twitter.com/9KSiUpIUrz
これにサポーターも応えた。準決勝、決勝と前日練習に駆け付け、スタジアムと見まがうほどの旗や横断幕、チャントで選手たちに思いを届けた。
これが結実し、今季は2年ぶりにACLに参戦している。既に5試合戦ってきたが、いよいよ次はグループステージ最終節。ノックアウトステージへの進出をかけて、山場を迎えている。
浦和レッズのいるグループGは、全北現代(韓国)の首位突破とブリーラム・ユナイテッド(タイ)の敗退が決まった。2位レッズと3位北京国安(中国)は勝ち点7で並んでいる。そして5月21日の最終節は、ホームで北京との直接対決だ。
勝ち点が並んだ場合には直接対決の結果が優先されるレギュレーション。この一戦に限っては実質的にノックアウトステージと同じだ。敵地での1stレグをスコアレスドローで凌いできた後の2ndレグだと思えば良い。
アジアを勝ち抜くには、アウェイで負けないこと、そしてホームで勝つことだ。正直、北京でのゲームの出来は良くなかったし、その後もチーム状態は上がってきていない。しかし2017年だって必ずしも内容は良くなかった。それでも粘り強く戦って、頂点に上り詰めた。
勝負強いオリヴェイラの手腕は「オズの魔法」とも称される。魔法の源泉はコンディショニング、そしてモチベーションだ。金曜日に行われた湘南戦では、オリヴェイラには珍しく、ターンオーバーと言って良いほどの選手の入れ替えを敢行した。アジアへの覚悟を垣間見た。
北京戦の先発が予想される選手たちのコンディションは上がっただろう。しかし何よりも重要なことは、湘南戦、代わって出場した選手たちが、90分間、相手の土俵で真っ向勝負をして、走り、戦ったことだ。あれを見て、この試合ベンチ外だった選手たちは何を感じただろうか。
もちろん結果が全て。そんなことはわかっている。それでもなお、あの敗戦を少しでも価値のあるものに出来るとすればそれは、北京戦で、戦って、結果で示すしかない。
オリヴェイラが大一番に向けてどんな魔法を仕込んでいるのかはわからない。しかし、この試合は間違いなく、モチベーションが鍵になる。我々サポーターも、熱量を高めて、選手たちと共に戦おう。北京を、ぶっ倒そう。
5月15日に発売する #sk 6月号の特集テーマは「 #モチベーション 」
— SOCCER KING (@worldsoccerking) May 8, 2019
表紙を飾るのはユルゲン・クロップ❗️
世紀の大逆転劇に💖モチベーションマックス💖に達しているであろう #リヴァプール サポのために、発売前に中身を一部先行公開しました😤https://t.co/L7vKlZyVkO pic.twitter.com/W1S9Xjagll
《アディショナルタイム》
2007年10月 ACL準決勝 浦和レッズ vs 城南一和
浦和レッズの歴史の中には数多のビッグゲームがある。奇跡的な逆転劇といえば、2017年のACL準々決勝2ndレグの川崎戦が記憶に新しい。あの勝利がなければ2度目のACL優勝もあり得なかったわけで、アンフィールドの奇跡とも情景は重なる。
しかし、ベストバウトはこの試合ではないか。
2007年のACL準決勝2ndレグ、相手は韓国の城南一和。レッズ、城南ともに前年の国内リーグを制しており、日韓のチャンピオン同士が相まみえた、まさに「チャンピオンズリーグ」の名にふさわしい好カード。
互いに譲らず、1stレグ、2ndレグともに2-2。延長戦でも決着がつかずに、PK戦までもつれ込んだ死闘。しかし最後はGK都築が、ゴール裏のサポーターが、相手のキックを止め、初めての決勝進出をその手に掴んだ。
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