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横浜フットボール映画祭に行ってきた。
先週末は横浜フットボール映画祭にいってました。サッカーの映画ばかりを集めた映画祭で、10年以上続いている素敵なイベント。メインの開催は土日の二日間で、今回は2日の通し券を買ってこの映画祭を楽しんできました。
全部で7本の映画と、1つのイベントに参加してきました。映画ごとに感想を書いていってみます。
ペルーの叫び
副題は「~36年ぶりW杯出場の表と裏~」。
ペルーの36年ぶりのW杯出場を描いたドキュメンタリー映画。サッカーだけにとどまらず、ペルーという国が抱える問題、白人による富の占有や地域格差、政治家の腐敗なども映画の中で語られていく。
自分は中南米の音楽を大学時代からやっていて、ペルーという国に愛着があるので、とても楽しく見ることができた。ペルー代表の赤いたすきのユニフォームもかっこいいし、W杯出場を決めた時の街の熱狂が美しい。
ただ、映画を客観的に見てみると、サッカーの描写と、ペルーという国の抱える問題の描写、この二つがうまく融合していない、整理されていないという印象が強かったかな。サッカーをサッカー選手が、国の問題をサッカー選手以外が語り、それをつないでいだだけになっちゃっている感じで残念だったかな。もう少し作りようがなかったかなあと。
ONE FOUR KENGO THE MOVIE
言わずと知れた川崎フロンターレのバンディエラ、中村憲剛のドキュメンタリー。学生時代から引退まで、小さな体で伝説を作り上げるまで。本人や周りの関係者のインタビュー、試合映像などで語られる。
いや、俺FC東京サポなので、この映画祭の前にこの映画が公開されていたのは知ってたけど、敢えて見ようとは思わなかったのです。川崎はライバルクラブ。中村憲剛が選手としても一人の人間としても表現者としても素晴らしいのは良く存じ上げてるので、、、わざわざお金を払って中村憲剛の正しさを確認してため息をつく気にはなれなかったという。
なんか「正しすぎる」ってあるじゃないですか、非の打ち所がないというか。中村憲剛にはそれを感じるんですよね。いや、いいことなんですけどその選手がライバルクラブにいるってのが居心地が悪いのですね。うまく言えないけど。中村憲剛のことを嫌いなわけでは全くないんだけど。
んで、まあ今回は、映画祭で通し券も買っているし、見ますよね、ということで映画拝見しました。感想としては、とても丁寧に作られたいいドキュメンタリーだなと。川崎フロンターレというクラブの成長と、中村憲剛の選手人生が本当にきれいに重なっていているのがとてもよくわかる構成で、飽きることなく見終わりました。
ああ、この人はまさにクラブのアイデンティティの体現者であり、バンディエラなんだなあと改めて感じた次第。逆に川崎は中村憲剛を失ってこれからやっていけるのか?心配になったりします。まあ余計なお世話ですなw
映画の後は中村憲剛と村井元チェアマンのトークショーがたっぷりと。チェアマン優待した村井さんはとてもリラックスして楽しそうでした。俺ほんと村井さん大好きなので嬉しかった。
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はなれていても
ドイツに住む少年と、シリア難民としてドイツに流れ込んできた少年の友情を描いたドラマ映画。自分の生まれ育った街が消えてしまって引っ越し先の学校やチームでなんとかやっていこうとしている少年のところに、シリア難民として一人でこの街に来た少年が出会ってストーリーが進行していく。
いやとてもいい映画でした。主人公の少年の存在感がとにかく素晴らしい。若き日のアルシャビンのような美少年なのは止め絵でもわかると思うけど、いろんな状況で見せる表情がまた絶妙なのよね。完全に彼に魅了されてしまっているうちに映画が終わってしまった。
ドイツの今にある難民受け入れの話と見事に絡められてストーリーが成立していて、映像もきれいで美しく、ドイツ人の作る映画はきちんとまとまっているなあと思った次第です。これは佳作だと思うなあ。一般公開しても喜ぶ人がいると思うだけど。
Brothers in Football
副題は「100年越しの再試合」。ドキュメンタリー映画です。
100年以上前にフットボール界を席巻していたコリンシアンズというチームが、そのアマチュアイズムを継承して今もイギリスの8部リーグに存在しているのだけど、アマチュアイズムを貫き通すために選手は全て無給での参加、地元に愛されるわけでもなく8部残留を常に目指している状態。しかも経営悪化でスタジアムの賃料も払えない、、、そこにブラジルのビッグクラブであるコリンチャンスから親善試合のオファーが。なぜ???というお話の展開。
実はコリンチャンスは100年前にコリンシアンズを師として作られたチームだった、、、というお話です。お話っていうか、おとぎ話みたいですけど実話です。実際には熱狂的なコリンチャンスサポが、自らのクラブの歴史を調べてコリンシアンズを認知し、ロンドンのコリンシアンのスタジアムを訪ねたYoutube動画がバズって、多くのコリンチャンスサポがコリンシアンズを知ることとなった、、、という経緯のよう。
この映画、コリンシアンズの歴史的な英雄譚と、今の8部リーグのコリンシアンズ、両方を丁寧に描いてくれていてとても興味深かった。特にコリンシアンズの今を語っているほうにグッときました。8部リーグのうらびれたスタジアム、狭いロッカールーム、プレミアじゃなくてこっちを応援するぜという地元サポーター。いちいち愛おしい。こういうのいいねえと心から思う。
8部リーグのチームがブラジルに招待されて親善試合を行う、というシンデレラストーリーの方は、すごいのはコリンシアンズではなくてコリンチャンスサポ、コリンチアーノの熱量のほうだ。自分自身もCWCの時に横浜に訪れたコリンチアーノの異常なほどの熱量を見ているからすごくよくわかる。
地球の裏側のスタジアムをホームにしてしまうほどの彼らだから、ブラジルからロンドンまで来て小さなスタジアムを見て『我がクラブの生まれ故郷だ、聖地だ』と言って涙を流すのをみても不思議だとは思わない。そういうサポーターが掃いて捨てるほど、3000万人いるチーム。それがコリンチャンス。そりゃこういう展開にもなるよなあ、さもありなんと思いながら見ていました。
イングランドサッカーの歴史や心意気を学びつつ、コリンチャンスの凄さを実感できる、自分にとってはそんな映画でした。監督も来ててトークショーしてくれてた。チーム内部の人なのかな?そうじゃないとこの映画は撮れないよな。
(イベント)バモス!実況席から見た世界 実況アナの両巨頭がサッカー愛を語る
ここから二日目である。二日目は友人と二人で参加。朝から倉敷さんと西岡さんのトークショーに。
倉敷保雄さんと、西岡アナウンサー、サッカー実況界の巨頭の対談ということで別途チケットを取りました。映画祭が行われているかなっくホールの会議室で、お二人を間近にみながらサッカー実況の奥深いお話をたくさん聞けて大変満足。
内容は非公開が前提だろうからここでは多くを書きませんが、楽しかったなー。司会をされていた今井麻夏さんもとても良かった。司会は初めてということでとても緊張されていたけど、お二人へのリスペクトと愛が感じられてとても良かったです。
倉敷保雄さんと西岡明彦さん。お二人ともとってもお優しくて、スタイリッシュで格好良くて、クラクラするほど素敵でした。トークも楽しいものから深いものまでお話しくださり、痺れるほど素晴らしい時間でした。 pic.twitter.com/VrDPuvwbnq
— 今井麻夏 (@asaka_imai) June 5, 2022
バモス!ドミンゴ
副題は「夢の実況席」と。実況大好きおじさんが主人公のメキシコ映画です。前に書いたトークショーもこの映画と絡めて企画されたものですね。
仕事も長く続かない、奥さんにも愛想をつかされて逃げられるダメダメおじさんのドミンゴが、子供の頃からの夢のサッカー実況者を目指すことになって始まるドタバタコメディ映画。楽しかったなあこの映画。
ドミンゴの周りの人たちの暖かさ、メキシコの田舎町の雰囲気、散りばめられた小ネタ、全て自分好みで大好き。ドミンゴの実況自体、聴いていて引き込まれる名調子で、それだけでこの映画を見る価値があるかも。ストーリーもみんなが思い描く展開の裏を突く、でも素敵な終わり方で終わった後みんなハッピーになれる映画。この映画祭で一番好きな映画です。
ラテン好きな人はみんな見てー!!!といいたいけどもうやってないっていうね。どっかでこれ放映してくれないもんだろうかね。予告編だけでも楽しいから見て。
アディダス&プーマ
副題は「運命を分けた兄弟」。アディダスとプーマ。もともと兄弟が仲違いしてそれぞれにはじめた企業だ、ということは聞いたことがあったけど、それを史実に基づいて描いた映画です。
兄弟で創業して順調に船出したのは良いものの、ドイツはナチス政権になって第一次世界大戦が始まり、兄弟のひとりが徴兵されて、、、そこへきてそれぞれの奥さん同士でいざこざがあってという大変な時期を描いてます。
周囲の状況もハードだし、奥さんが絡んだ兄弟の仲違いの内容もエグいので、みててしんどい映画ではありました。いやでも引きこまれたんですけどね。映像もとてもキレイです。
この兄弟、靴作りの職人気質の弟アディ(職人気質)と、売ってなんぼの営業屋兄ルディ(女好きのお調子者)。対照的なキャラでとてもわかりやすい。
映画はどちらかというと職人気質のアディ中心に語られることが多くて、私も弟アディに肩入れして見ていたのだけど、一緒に行った友人はアディ憎しで兄ルディに肩入れしていて驚いた。見る人によってどっち派に分かれる映画だから見終わった後の感想戦も面白いかも。アディダスとプーマとどっちが好き?みたいな話にもなるかもね。いや私はニューバランス派ですw
ある試合 + 教えていえぽん in YFFF2022
スイスのヤングボーイズの試合の審判を描いたドキュメンタリー映画。
17分と短い映画だったけど、試合前、試合中、ハーフタイムの審判たちの様子だけでなく、選手、サポーター、スタジアムといった周囲の様子も綺麗な今ふうの映像とカット割で描かれていて凝縮された1本。
審判映画としては「レフェリー」のほうが好きだけど、映像の迫力はこっちのほうが上ですね。堪能しました。
映画の後はイエモッツこと家本元審判のトークショー。2年前の彼のトークショーにも参加してて、あれをきっかけに家本さんのファンになったんだったわ。この人もともと話すことが好きな人なんだと思うし、審判としてポジティブ・ネガティブ双方でいろんなな経験を積んできた人なので話の引き出しが多いよね。今回も楽しいトークショーでした。
ここだけの話、ってことだと思うのでここでは細かくは書かないけれど、観客からの質問を拾って展開するトークショーの形は面白かったです。最近話題だった野球界の審判問題についてコメントしてくれて嬉しかったな。
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いやいや、今回も楽しかったです。とてもいい映画祭でした。
今回のフットボール映画祭は2日券を買って7本の映画を見ました。一つも「これは退屈だなあ」という映画はなく、全ての映画楽しく満喫できましたね。
どれも映画としては貴重で他で見られないものだし、サッカーファンだけじゃなくてマイナー映画が好きな人とかにも受けそうな映画もあったけど、客入りとしては中村憲剛が登壇した映画以外は、6割ぐらいの入りって感じでした。マイナー映画ファンとかってこの映画祭知らないよね。知ってもらえたらもっとお客さん増えるんじゃないかなあ。
映画祭では、映画以外にもイベントがあったり、文化祭的な展示があったりと盛りだくさんでしたが、倉敷さん西岡さんのイベント以外は映画をフルで見てしまったのでその辺はあまり楽しめなかったな。残念。次回はその辺も含めて楽しめるといいな。
そんな感じでおすすめの映画祭です。また来年を楽しみにしております!
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