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CLASSICシリーズの進化

前回は「スペシャルティブレンド宣言」と題し、堀口珈琲がスペシャルティコーヒーの発展と歩を合わせながら取り組んできたブレンド作りについてお話ししました。

今回はスペシャルティブレンドの先駆けとなった堀口珈琲の9つのブレンドが、どのように進化していったのかをお話ししたいと思います。


2013年:スペシャルティブレンドの萌芽とブレンドの基本

 スペシャルティブレンドの先駆けは、堀口珈琲が2013年春にリリースした9つのブレンドです。
浅煎りから極深煎りまで網羅した9つのブレンドは、風味をイメージするだけでなく、銘柄一つひとつにテーマを設定した上で、そこに向かって素材選定・焙煎・配合を詰めていくという手順で作り上げられました。この作成過程は、現在の堀口珈琲のブレンド作成手法の土台にもなっています。

 さらに、この9つの銘柄はもう一つのブレンドらしさも兼ね備えています。それは作り続けるという“らしさ”です。作り続けることはブレンドの基本です。お客様がいつでも楽しむことができる、という素晴らしい価値をもたらします。

 もちろん期間限定の特別ブレンドはその時限りのワクワクするコーヒーです。しかし、作り続けるブレンドがあってこそ特別ブレンドは輝きを増します。


2021年:CLASSICシリーズへの進化

 9つのブレンドをリリースしてから7年が経過した2020年、風味をチェックしている中で重大なことに気づきます。9つのブレンドで表現しようとした“ブレンドならではの風味”に迫るシングルオリジンの出現です。

 素材(生豆)と焙煎の双方が進化したことでシングルオリジンの風味が劇的に進化していたのです。

 堀口珈琲は生豆を漫然と買うだけでなく、パートナーとも言える生産者達とのコミュニケーションも大切にします。たまたまの品質ではなく安定した品質、より高い品質を目指してのことです。コーヒーのさらなる多様性を求めて、新たな生産者や新しい生豆の発掘にも力を注いでいます。これらは単年で大きな成果をもたらすことはほぼありません。

 しかし、小さな変化が積み重なることで、目に見える進化に繋がることもあります。2020年はまさにその時を迎えていました。

厚い信頼を寄せる、ペルー「フェスパ農園」ウィルダー氏(左)と一緒に

 焙煎についても同様です。常に試行錯誤を積み重ね進化を模索しています。その中でも2017年から着手した新たな焙煎手法の構築は、より素直に素材の特徴を“取り出す”という大きな進化をもたらしました(詳しくはコーヒーコラムNo.2参照)。

 素材と焙煎の双方で、少しの進化が7年積み重なり、シングルオリジンを劇的に進化させていたのです。


 この進化を受け、2020年7月から2021年8月までの1年強を、改めて“ブレンドらしさ”を追求する時間に費やしました。
当初はその対象を一部の銘柄に限定していましたが、想像の過程で、創造を進める中で、“らしさ”追求の対象は拡大し、最終的には9種すべてのリニューアルへと発展していきました。

 そして、2021年8月21日、さらなる“ブレンドらしさ”を兼ね備えた9つのブレンドを、堀口珈琲は「CLASSICシリーズ」と名づけ、名実ともに堀口珈琲の「定番」としてリリースしました。それは、シングルオリジンの進化に後押しされ進化を遂げたスペシャルティブレンドです。

 次はこのブレンドたちが、シングルオリジンを次のステージに進化させる番かもしれません。

※2022年8月より一部のブレンド名称とアイコンデザインが変わっています。デザイン変更についてはまたの機会にお話ししたいと思います。




社長若林のコーヒーコラム、最後までお読みいただきありがとうございました。
全6回に渡ってお届けしたコーヒーコラムは、こちらのマガジンからまとめて読むことができます。


Profile
若林 恭史(わかばやし たかし)
1980 年埼玉県秩父市生まれ。2005 年堀口珈琲に入社し、焙煎・ブレンディング・生豆調達の担当者として経験を積む。生豆事業と焙煎豆製造・流通の各部門の統括者を経て、2020年7月より現職。
コーヒーを仕事にしてしまったので、趣味と呼べるものはないが着物が好き。

このコラムは2021年11月25日配信のニュースレター「HORIGUCHI COFFEE Letter No.6」を再編集・加筆したものです。