【ソフトバンク】78兆円賭け、「スターゲート計画」にマスクが浴びせた疑問とは？
前情概要
「スターゲート計画」は、米国がAI分野のリーダーシップを確保するために打ち出された壮大なプロジェクトです。この計画はOpenAI、ソフトバンクグループ、オラクルなどが主導し、5000億ドルを投資して全米にAIインフラを構築することを目指します。初期の1000億ドルはテキサス州を中心にデータセンター建設に投入されます。発表時には「マンハッタン計画とアポロ計画を超える規模」と形容され、AI技術を中心とした「米国再工業化」を促進する意図が明確に示されました。
この計画はOpenAIのCEOサム・アルトマンをはじめ、ソフトバンク会長孫正義、オラクル創業者ラリー・エリソンらの推進によって具体化されました。トランプ前大統領が支援的姿勢を示しており、政界からも注目されています。背景には、AI技術が経済安全保障や国際競争力を決定づけるとの認識が広がっていることが挙げられます。
関係者の反応：賛否両論の渦中で
マスク氏の疑念
テスラCEOイーロン・マスク氏は計画の資金調達に懐疑的な姿勢を示し、「彼らには5000億ドルの資金はない」とXで発言。特にOpenAIの財務状況を問題視し、2024年の50億ドル赤字が2026年には140億ドルに拡大すると予測。また、OpenAIの高額な大規模モデル訓練コストに触れ、長期的な資金の持続可能性に疑問を呈しました。
Altman CEOの反論
これに対し、OpenAIのAltman CEOは「批判は事実無根」とし、マスク氏を計画現場に招待すると同時に、計画の進行状況を示しました。Altman氏はさらに、「GPT-4bを活用したがん治療研究も含め、計画は医療や他分野への革命を起こす」とコメントし、社会的意義を強調しています。
ソフトバンクとMGX：計画の中核としての存在感
78兆円の巨額投資を主導
ソフトバンクグループは、この計画で主要出資者としての役割を果たしています。孫正義会長がプロジェクト議長を務め、全体の財務運営を管理。英NVIDIAやMicrosoftなどの企業と提携し、AI技術のリーダーシップを確立する意向です。
また、阿聯酋アブダビの投資会社MGXも資金提供を表明。MGXは中東最大級のAI投資ファンドを運営しており、スターゲート計画に新たな資金力を提供します。
NVIDIAとMicrosoftの協力
NVIDIAはHopper GPUを70万台提供予定で、その運用コストは1時間当たり2.8ドルに達すると推定。総計490億ドルの設備投資が見込まれ、NVIDIAは約375億ドルの収益を得る可能性があります。一方、MicrosoftはAzureクラウドを通じてAIモデルの運用を支援し、長期的なパートナーシップを拡大しています。
注目点：計画の規模と持続性
過去の事例が示す警鐘
トランプ政権下での富士康工場計画が最終的に縮小した例や、バイデン政権の「米国チップ法」における遅延問題など、過去の大型投資計画が期待に応えられなかった事例が引き合いに出されています。特に、スターゲート計画の最終的なコスト管理やスケジュール遵守が大きな課題として挙げられています。
持続可能性への不安
OpenAIの初期GB200クラスタの運用コストは1時間当たり2.38ドルとされ、GB300やVR200の登場でさらにコストが増大する見通しです。これらのコスト構造が長期的にプロジェクトを圧迫する可能性があります。
結論：期待と不安が交錯する壮大な挑戦
スターゲート計画は、米国がAI分野の覇権を狙う壮大な試みであると同時に、多くの財務的・技術的課題を抱えています。ソフトバンクの巨額投資、MGXの新たな資金提供、NVIDIAとMicrosoftの技術協力など、多くの要素が交錯するこの計画は、AIの未来を左右する重要な試金石となるでしょう。
5000億ドルというスケールは、AI競争における新たな基準を確立するか、壮大な挫折として歴史に残るか、その行方が注目されます。