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ショート: 抑止にならないけど…

噂話だけで、桃太郎は鬼ヶ島へ乗り込み
証拠がないまま鬼から暴力で財産を奪った。
桃太郎は鬼畜だと思う。初めての鬼へ同情、教訓。

金貸しをやっていた祖父の昔話を聞くと、
幼少期に聞いた心情と異なり、
前は祖父を鬼だと感じていたが、今なら分かる。

法令を遵守し、私は比較的安い利息でお金を貸す。

ヤミ金業界では良心的だと
他よりうちを優先して返済してくれる。
返してくれさえすれば良い。

私は一般人なので、取り立てはしない。できない。

ときに堅気だから、債務者から舐められ
借金滞納者が、付け回しては挑発してくる。
「ねえちゃん、カラダで返そうか」
無視すると肩を叩かれた。

私はその足で、精神科の門をくぐる。
叩かれたら、整形外科へ行く。

きっちり証拠を取り、ストーカー規制法で
警察へ相談し、示談にするか、裁判を起こす。
返済できぬなら社会的制裁を受け、一家離散へ。

私から過剰に滞納し、暴力を振るう人なんて
鬼の心で成敗したところで、抑止にならないけど…

(注: ショート・フィクションです。407字)