19歳女を捨てた日、度胸で生きろ
学生時代
クリスマスケーキを売るバイトを頼まれた
頼まれた理由が「変わり者が欲しい」
大事なことなので「変わり者が欲しい」、だって
頭文字2文字までは嬉しい
「かわ…」までつけば「可愛い」じゃないの⁈
日当が良く、引き受けることにした
19歳女子が着たものは、想像通り
ミニスカートでサンタのコスチューム
ただ、身体が凍るんじゃないかと思うほど寒く
コスチュームの中は下着だけ、羽織り物はない
予約済みのケーキはプロパーが捌くので
学生のわたしには新規でケーキを売れという
たった1人でケーキを売れとは冗談がキツい
店頭に積まれたケーキは
誰でも耳にしたことがある呼びかけでは
人は足を止めてくれなかった
心細く、極寒で帰りたくなった
変わり者の認定と日当の良さに釣られ、情けない上
売れないクリスマスケーキ
引き受けた自分より、頼んできた友人を恨んだ
「どうしよう…」
売り方をプロパーに聞いても教えてくれない
とにかく売ってくれたらいいと言う
予約のケーキは次々と捌けていく、泣きそうだった
「どうして変わり者が欲しかったんだろう」
人並みを目で追う、ヒントが欲しかった
暫くすると額に冷えピタを貼った子どもが目に留る
それだけで目立っていた
「そういうことか」
昼休憩、ドラッグストアに行き、冷えピタを購入
前髪を上げ、額に冷えピタを貼る
最初は額を見せたり、声を出すのが恥ずかしかった
しかし、そんなことは言っていられない
可愛いサンタのコスチュームを着たわたしは
魚河岸のおじさんのような野太い大声で
ケーキ屋らしからぬ、パフォーマンスをした
「はい、らっしゃい、らっしゃい!」
「そこのお父さん、今日はクリスマスイブ!」
張り上げる声、勢いを落とさない両手を叩く音
素通りされていたわたしに
「お姉さん、熱があるの?」と声がかかる
嘘でも「はい!」と返事をする
恥も外聞も捨て、わたしはただケーキを売った
可愛い学生なんか、やってらんない
19歳のわたし、女の子だったわたし
売り方のコツさえ教えてもらえず
全てバイト任せのプロパー達
はらわたが煮えくり返って見せた意地は
プライドを捨てること
「女を捨てること」
生きるって、お金を稼ぐって
チヤホヤされて、綺麗なだけでは成立しない
ネームバリューが目的で、蝶よ花よを望み
上部だけ「一生懸命」「努力してる」という人に
嫌悪感や苦手意識を持つようになったのも
これがきっかけかもしれない
性別はともかく
ある程度、捨て身の度胸がないと社会は渡れない
19歳のクリスマス
サンタがくれたプレゼントは
「女だからと甘えるな」
肝が据わるとはどういうことか、かもしれない
☆クッキーはバタークッキーです☆