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『メイ・ディセンバー ゆれる真実』試写会

「メイ・ディセンバー」は、年の差恋愛を示す、皮肉混じりの慣用句のようなもの、だそうです。
実際にあった、メイ・ディセンバー事件を参考にした架空の事件の当事者と、彼らを観察しにやってきた第三者とのやりとりを軸に展開するお話です。

繰り返し繰り返し流れてくる不穏なピアノ音が、カンヌではコメディに見えていたらしいけれど、私は純粋に不穏さだけを受け取って見てしまった。

13歳だった少年ジョーは36歳。双子の娘息子が高校を卒業するタイミング。17歳とすると、彼が19歳の時の子。このときが出所のタイミングだとしたら、6年の実刑だったことになる。事件で授かった子は、23歳。当時36歳だったグレイシーは、59歳。前夫との間に、ジョーと同級生の子を含め、4人くらい?子供がいる。

センセーショナルじゃないものが見つけられないほどの要素に満ちている。相手が未成年ってことも、不倫だってことも、妊娠しちゃってることも、実刑で収監されたことも、獄中出産も、出所後に結婚しちゃってることも。さらに言えば、事件を起こした街で、自分の元家族と常に出会える場所に居を構えていることも。

この事件そのものの深刻さとか、ジョーの深い深い憤りとか、グレイシーの形容しえない罪の深さとか、エリザベスの土足感とか。
見ているこちらをヒリヒリさせる場面が多く、ピアノのBGMと相まって、終始ざわざわし通しだった。

トークショーの中で、「これが男女逆だったら」と言及されていたけれど。36歳の既婚男性が、13歳の少女と恋に落ちていたら…想像するだけでゾッとするのに、男女が逆転するだけで、寒気が半減する自分の認識に驚く。

とはいえ、グレイシーによるグルーミングは、本当に卑劣極まりない。

映画として、語りたいテーマ?がいくつも込められていた感じで、どこにひっかかりを持つのかは、人によって違うのだろう。ゆえに、映画見たなって気分にさせてくれる作品ではある。


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深田晃司監督と立田敦子さんによるトークショーもとても面白かったです。こちらの記事もぜひ、あわせて読んでください。

この記事の中では語られないのだけど、深田監督が話してくれた、音楽の持つ強烈な力の話が、すごく感慨深いというか、面白かった。

「何でもないシーンでも音楽がつくことによって、そのシーンに色を、意味を与えてしまう。」

だから自分の作品では極力音楽を使わないように気をつけている…と続くのだけれど。

この作品で多用も多用される大袈裟なあのBGMがあることによって、これがあくまでも虚構の事件だという印象を与えようとしているのかもしれない、という考察に、脱帽でした。

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