江戸東京落語まつり2023(その1)〜三遊亭円楽最後のプロデュース
昨年お亡くなりになった六代目三遊亭円楽、その功績の一つは、協会・団体の枠を超えた落語イベントを実現したことである。札幌、博多、そして東京。今回の「江戸東京落語まつり」は、その最後のプロデュース、6日間、36名の落語家が登場する大イベント。円楽の遺志を継いだ林家たい平がその仕上げを行なった。
私は、その最終日7月5日、日経ホールで開かれた“東京で一番長い日“に出かけた。その名の通り、12時開演、17時終演予定、17名の落語家が登場する。一体、どんなことになるのだろうか。私を含め、観客の集中力は持続するのだろうか。
トップバッターは、林家木りん(きりん)。名前の通り大きく、身長192cm。それもそのはず、父親は元大関清國で、伊勢ヶ濱部屋で育った。このトンデモない落語会をどう展開していくのか、演者も聞き手も手探りの中、「明礬丁稚」をこなした。
続いて、三遊亭とむ改め錦笑亭満堂。今まさに真打披露興行中、来年1月には日本武道館で披露目をやろうとしている、ユニークな落語家である。亭号は春風亭小朝が考案した新しいもの、演じたネタは自作の「ジャスティン・ビーバー」。序盤は軽く演じて後につないで行くのではないかと思ったが、熱演である。
入船亭扇橋、飄々とした先代の印象がまだ残っているが、当代も良い形である。古典の「高砂や」で少し落ち着くが、続く林家彦いち「熱血!怪談部」で客席は爆笑し、早くもヒートアップする。
この流れをどうするのか。登場したのは第一部のトリ、柳家喬太郎。ダメ押しするかのように「ウルトラのつる」。古典の「つる」という、“つる“の語源を聞かれた男が、“知ったかぶり“知識を披露する噺だが、これを喬太郎の得意分野“ウルトラシリーズ“に置き換えた新作。もう、笑いすぎてフラフラである。休憩に入るが、この後は一体どうなるのだろう。
第二部、登場したのが立川吉笑。昨年のNHK新人落語大賞優勝の二つ目。嫌な予感がする。入ったネタは予想通り、NHKで演じた「ぷるぷる」。マツヤニで唇がくっついてしまった男が登場する、本当に馬鹿馬鹿しい落語である。いきなり、これで始まった。
柳亭小燕枝は古典の「棒だら」で、落ち着くかと思ったら、負けじと崩して演じる(不思議な歌が満載)。寄席のように、流れを重視して後につなげるというより、全力を投入し「後は知らんよ」という会になってきた。
春風亭一之輔、マクラの入りでは本寸法の江戸落語に戻すかと思いきや、一之輔版と言ってよい、動きの激しい「反対俥」。
ほぼ披露困憊したところで登場した、第二部ラストの立川志の輔。馴染みのある「バールのようなもの」で、結果的にはこの日一番落ち着いた時間となった。
まだ半ばである。この後どうなることやら