冬の噺(その2)〜「池田の猪買い」そしてボタン鍋を食す
昨年末、冬の噺として「二番煎じ」を紹介し、その中に登場する猪鍋・ボタン鍋について触れた。
落語には、この猪ズバリという噺がある。上方落語の「池田の猪(しし)買い」である。
体が冷えて仕方がないという男が、甚兵衛さんのところに相談に来る。甚兵衛さん曰く、それには猪の肉が良い、俗に“薬喰い“と言って、冷えの解消などに大層効き目がある。ただし、新鮮な肉でなければ効き目がないので、池田の猟師の元を訪ね、取れたての肉を買ってくるように勧める。それと共に、大阪から池田への道順を教える。
教えられた、“訳のわかったような、わからんような“男は、翌日池田へと赴き、山猟師の六太夫を訪ね、雪がちらつく中、共に猟に出かけるのだが。。。。
甚兵衛さん宅でのやり取り、池田への道中、六太夫との掛け合いと、大きく3つのシーンに分かれる、大きなネタで、それぞれに爆笑の場面がたっぷり盛り込まれる、とてもよく出来た落語である。私は、桂枝雀の口演を繰り返し聴き楽しんできたが、何度聴いても笑ってしまう。
さて、この“阿呆な“男、六太夫と猪の話をしているだけでたまらなくなり、大阪に戻るまで待てないので、その場で猪鍋を食べたがる。彼が食べようとするのは、醤油仕立てだが、ボタン鍋と言えばやはり味噌仕立てである。
「池田の猪買い」を聴き気分を盛り上げ、いよいよ、ふるさと納税で仕入れたいのししを食することにした。流石に、いまでは池田で猪は穫れないだろう。兵庫県西脇市からの返礼品である。地元の鍋用高瀬味噌も付いている。パッケージを開けると、まさに牡丹の花ような色の肉である。
昆布出汁を取り、味噌を溶かし、まさしくボタンのように赤々とした猪肉、野菜、こんにゃく、豆腐などを投入する。ボタン鍋に欠かせない野菜はゴボウである。ささがきにして入れる。
適度に煮えたところを食するのだが、七味唐辛子と山椒を少々効かせる。
豚肉とはまた違う肉の弾力感、深みのある味、確かに体に良さそうである。味噌の効果もあるのか、臭みは全く感じられず、非常に食べやすい。味噌仕立ての鍋は滅多に食べないのだが、高瀬味噌の優しい味が、胃にしみる。よく煮えたゴボウやネギ、豆腐も格別である。
落語を楽しんで、ボタン鍋を食す、ちょっとした幸福である
*これを書くにあたって、Amazon Audible(1月27日より、会員向けには多くのタイトルが聴き放題に変わった)にあった、昨年お亡くなりになった笑福亭仁鶴と当代桂文我の口演を聴いたが、やはり桂枝雀が絶品である
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