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三菱一号館美術館が再開館〜ロートレックとソフィ・カル、そして“東京駅周辺美術館共通券“

東京丸の内にある三菱一号館美術館は2023年4月から設備メンテナンスのため長期休館していたが、昨年11月23日に再開館した。その記念の展覧会が「『不在』ートゥルーズ=ロートレックとソフィ・カル」である。

職場のすぐ側にある美術館、再開したら年間パスポートを買おうと楽しみにしていたのだが、現時点においては販売されていない。そこで“東京駅周辺美術館共通券“というものを試すことにした。

東京駅周辺にある、三菱一号館ほか、アーティゾン美術館三井記念美術館東京ステーションギャラリー静嘉堂@丸の内の5館で各1回ずつ入場できるもので、値段は4,500円。全て行けば1館900円である。三菱一号館の本展入場料は一般2300円、他の美術館の入場料は1000円強なので、三菱プラス2箇所で使えれば元は取れる。

ステーションギャラリーと静嘉堂も至近の場所、アーティゾンは徒歩15分程度で3館とも時折訪れている。三井記念美術館は日本橋室町で歩くと20分程度だが、これを機会に行ってみるのもよい。各館の今年の開催予定を見ると、興味深いものが並んでいるので、2冊購入した。なお、この共通券は売り切れ次第終了なのでご注意を。

さて展覧会である。ロートレック(1864−1901年)というと、パリ・モンマルトルの“ムーラン・ルージュ“を始めとするキャバレーや舞台人などを描いた作品がまず浮かぶ。本展もそうした作品からスタート、シンプルだけれど大胆な構図と色使いのうまさは、これぞロートレックという作品群である。

ロートレックはこうしたポスターに限らず、ルナールの「博物誌」の挿絵なども手がけており、それらも展示されている。モノクロのこうした作品を見ると、ロートレックの上手さがよく分かる。

当館は、ロートレックの版画を多く所蔵しており、本展の中心はそのコレクションだが、フランス国立図書館蔵、数点の「ロイ・フラー嬢」の展示も興味深かった。アメリカ出身のダンサー、白い衣装に様々な色の照明を当てるという演出で注目を集めた。舞台上の彼女を、ロートレックが黒い線に色を重ね、試行錯誤しながら表現していた様子が垣間見れる。

最後に登場するのが、石版画集「彼女たち」、貧しい娼館で春をひさぐ女性たちを描いている。歌手・ダンサー・娼婦、ロートレックの画風に浮世絵の影響が指摘されるが、こうして見ていくと絵画技術のみならず、浮世絵師たちが描いた世界と同様のものにロートレックが魅かれていたのではないかとも感じる。

展覧会の後半は、現代フランスの美術家ソフィ・カル。彼女のテーマの一つが「不在」、‘存在しないものをいかに表現するか‘ということだろうか。

印象に残ったのは、<あなたには何が見えますか>という連作。1990年、ボストンにあるイザベラ・スチュアート・ガードナー美術館からフェルメール「合奏」を含む13点が盗難にあい、いまだに見つかっていない。それらがあった場所には、額縁のみが飾られている。カルの作品は、空の額縁とそれを見つめる人の後ろ姿が描かれている。そこには何が見えているのか、それを鑑賞する私には。。。。

ハイライトは、オディロン・ルドン「グラン・ブーケ」と、それにインスパイアされたソフィ・カルの作品が並べられた部屋。ルドン(1840−1916)の作品は当館が所蔵する素晴らしい巨大パステル画だが、限定期間のみの公開で、通常は壁の裏側に保管されている。“不在“の本作に着想を得たカルは、美術館スタッフらから「グラン・ブーケ」に関するコメントを集め、それを基に作品を作り上げた。

なお、本展は1月26日までです


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