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天才の軌跡をたどる〜「和田誠展」とそれぞれの思い出(その2)

大学に入学・上京し、さらに和田誠の世界との距離が縮まった気がする。アーウィン・ショーカート・ヴォネガットさらにはマザーグースなどなど。私の読書欲をかき立てる多くの本は和田さんの絵で彩られていた。その後も、小林信彦、村上春樹など、私の読書と和田誠は密接だった。

そして、紀伊國屋ホールでのつかこうへいの芝居。あのポスターと、舞台が一体的に頭の中に刷り込まれている。

そして、和田誠は私の大好きだった小説「麻雀放浪記」を映画化、初監督作品を世に出す。戦後の東京がモノクロの画面に生々と描かれ、坊や哲を演じた真田広之始め、鹿賀丈史、加賀まりこ、大竹しのぶら、錚々たる俳優陣が皆光っている。脇役も、女衒役の加藤健一、雀士“出目徳”の高品格、内藤陳などが強烈な印象を残す。

和田誠に実際遭遇したこともあった。今は表参道に移転しているが、当時神宮前にあった「バー・ラジオ」。この店の出しているカクテル・ブックには和田さんも参画している。ある夜、この店でTシャツ姿の和田さんを見かけた。カウンターだけの小さな店。若かった私は、入店するだけでビビったものだったが、和田さんは近所の仕事場から気軽に寄った風情で、そのラフないでたちが見事に酒場に溶け込んでいた。

あまり意識していなかったが、この店のロゴも和田誠デザインである。

最近のお付き合いは週刊文春である。和田誠は1977年から表紙を描いている。没後は、アンコール企画として、過去作品が掲載されている。私は定期購読しているので、木曜日の朝、ポストに投函されている。毎週、どんな和田作品かを楽しみにしながら封を開けている。

ただ、私の思い出は、この天才の仕事のごく小さな一部分である。そのことが本展覧会でよく分かる。それでも、こうして触れることができるのは貴重な機会である。

最近は、スペース問題、年齢の問題もあり、極力紙の本は買わないようにしているのだが、図録、今は手元にない「倫敦巴里」の新版、そして新刊の「だいありぃ 和田誠の日記 1953-1956」まで買ってしまった。

図録は和田誠の仕事を俯瞰する上で、貴重かつ楽しめる内容である。ネットでも購入できるので、お勧めします


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